伝えたいことは1回では伝わらない

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をしたり、スポーツ推進審議会委員をしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。昨日はちょっと栃木市までドライブして温泉に入ってきました!
 さて今日は、『伝えたいことは1回では伝わらない』というテーマでお話したいと思います。


 僕には現在小学3年生と保育園の年長さんの子どもがいて、さらに総合型地域スポーツクラブではコーチとして普段から多くの子ども達と接しています。そんな時に、「何度言ったら分かるのか・・・」と思うことがよくあり、気が付けば何度も何度も同じことを繰り返し言っていたりします。僕の伝え方が悪いのか、そもそも相手に僕の話を聞く意思がないのかとか、そういうことを考えることもあります。きっと同じように悩んでいる人はたくさんいるのではないでしょうか。
 これは何も、対象が子どもの場合だけではありません。相手が大人の場合も同じようなことが何度も起きます。夫婦間、部下と上司、同僚、友人。「何度言ったら分かるんだ」とモヤモヤすることは日常茶飯事、どこにでも起こっていることだと思います。

 それもそのはず。たぶん僕たちが伝えたいことというのは、そんな簡単には伝わらないようになっているのだと思います。それが原則なのだと思います。

 今日は、ちょっとした思考実験をやってみたくてこのテーマを採用しています。実は最近、同じ話を違う場面で2回聞いたんですね。それは、「軍隊で行われた実験で、とある指示が集団全員に理解されるまでに6回の発信が必要だった」というものです。リソースを探してもどこにも出てこなかったので何とも説得力に欠けるのですが、どうやらそんな実験があったようなんですね。(※たぶんYoutubeとかVoicyのチャンネルで紹介されていた)

 これを聞いた時に僕は、「軍隊でも1回で指示が通らないんかい!」と素直に思ったのと同時に、じゃあ一般人や子どもなら尚更だなと思いました。そしてその次の瞬間にふと思い至ったのは、『2:6:2の法則』との関連性です。集団に1回で指示が通らないのは、集団には常に”指示をよく聞き、理解する者”、”理解した雰囲気だけ出す者”、”聞かない、または全く理解しない者”が一定割合でいる為なのではないか。そういう仮説を思いついたのです。今日はそれを頭の中だけで実験してみたいと思います。結果次第では、「なるほど。じゃあ別に僕の伝え方が悪いわけではなく、集団に指示をするということはそもそもこれが大前提なんだな」と思えるはずです。やってみましょう。


 学校の1クラスくらいの集団をイメージしてみましょう。30人。ここに30人の集団があり、その30人に対して一律で指示を出すことにします。内容はどんなものを想像していただいてもいいです。○○を作れ、とかでいいです。
 この時、この集団には『2:6:2の法則』が適用されています。あ、『2:6:2の法則』とは、別名働きアリの法則とよばれるもので、要するに2割はよく働き、6割はぼちぼと働き、2割は完全にサボるという割合が常に維持される法則のことです。面白いのは、サボる2割を集団から排除しても、残った8割の中からサボる者が出て来て、また『2:6:2』の割合を取り戻してしまうということです。今回の30人の集団にもこの法則が適用されていることとします。

 すると、1回目の指示で理解し、正しい行動を取れるものは2割。周りを見ながら何となく指示通りまたは指示に近い行動がとれるものが6割。そして指示通りの行動を取れない者が2割という結果が出てくることになります。人数ベースで言うと、30人×0.2=6人が指示通りに動き、同じく6人は全く指示通りに動かず、残りの18人は指示に”近いような動き”をすることになります。真ん中の18人の行動をどう評価するかが難しいところですが、「完全に指示を理解しない人をゼロにする」、をゴールとするなら、ひとまず24人が指示を理解して行動し、6人が理解せず行動しなかった、と評価しておくのがいいでしょう。クリアまであと6人の理解が必要です。

 さて2回目の指示に入ります。もう既に完全に理解している人が6人いて、それを集団の全員が把握している状態だとします。つまり、「あの6人はもうミッションを完了して”抜けている”」と思っている状態です。すると集団の意識は変わります。ここでは、『2:6:2の法則』からこの”抜けた”6人は除外するものとします。
 すると、実質的に集団は24人となります。ここに『2:6:2の法則』を適用すると、24×0.2=4.8人で約5人がまだ説明を全く理解せず行動しないという結果が出ます。1人減りましたね。2回目で完全に理解・行動して”抜ける”のも5人となり、3回目の実質的な集団は19人となります。

 3回目。まだ理解せず行動しないのは、19×0.2=3.8となり約4人。またさらに1人減りました。こうも指示というのは通らないものなのかと呆れたくなるのも頷けますね(笑) 3回目の指示で”抜ける”のも同じく2割の4人。実質的な集団は15人となります。

 同じように4回目、5回目とやっていくと、
・4回目で行動しないのは、15×0.2=3人。抜けるのも3人で、次の実質的な集団は12人に。
・5回目で行動しないのは、12×0.2=2.4で約2人。抜けるのも2人で、次の実質的な集団は10人に。
・6回目で行動しないのは、10×0.2=2人となります。


 さて、今回の思考実験では、6回の指示でも完全に指示は通りませんでした。でも、こうして理解する人が増えていく、あるいは理解しない人が減っていくという構造は何となく想像できたのではないでしょうか?
 もちろんこれが真実かどうかは分かりません。今回はあくまでも、集団にかなりの高確率で適用されている『2:6:2の法則』を指示の理解についても適用されるという前提に基づいた仮説を確かめてみたに過ぎません。実際にはもっと複雑な要因があって結果がありますので、こんな単純ではないことも間違いないです。ただ、構造として理解するには、結構いい仮説・検証だったような気もします。集団をよく見ると、「よく聞いて理解する人」「何となく聞き、何となく理解し、周りに合わせる人」「全く聞かず、理解しない人」に分かれているのは経験的に間違いないと思いますし。そして2回目の説明の時に、「もうあの何人かは理解している!」と、真ん中の6割の一部の人が焦り、「よく聞いて理解する2割の人」に移行しようとするのも間違いないと思います。そして全く聞かず、理解しない人からも、「あれ?何か周りが動いているな」とだんだんと気付くようになるのも間違いないと思うんです。だから構造的には少なくとも大きくは間違っていないと思うんですね。

 もちろん、伝える側にも、聞く側にもそれなりの能力が必要だったり、環境設定が必要だったりします。でも、原則として、「集団に対して指示は1回では伝わらない。1回どころか、6回は必要だ」ということを理解しておくことが重要です。そうすると、余計なストレスが軽減され、それにより落ち着いた説明ができるようになり、みんながハッピーになれるのだと思います。焦らない焦らない。6回6回。


 ということで今日は、『伝えたいことは1回では伝わらない』というテーマでお話しました。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

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