部活動の地域移行が進む?

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をやったり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。最近肩の痛みが戻ってきてヤバいです。
 さて今日は、『部活動の地域移行が進む?』というテーマで時事について考えていきたいと思います。

 取り上げたいニュースはこちら。

 ニュースを簡単に要約すると、

  • 公立中学校の部活動の地域移行の為の2025年度予算が、69億円で計上されそう。これは昨年度+12億円の規模。

  • 地域移行は改革推進期間の最終年度を迎える。モデル事業を展開したり、指導者の確保などの課題の検証を進める。

という感じです。

 増額するという点だけで見れば、推進期間の最終年度に向けて一応は動きの活発化を図っていこうとするスポーツ庁の姿勢が感じ取れます。一方で、「モデル事業の展開」や「課題の検証」からは、本気で何かをする気はなさそうだという印象も受けてしまいます。


 総合型地域スポーツクラブは、地域移行の受け皿として期待されている団体の一つですし、これがなくても、地域でスポーツをやる流れはそもそも総合型地域スポーツクラブが作りに行っている未来なわけで、部活動の地域移行を推進するポジションです。ところが、富士見市で唯一の総合型地域スポーツクラブであるふじみスポーツクラブは、リッチなスポーツ環境が用意されている中学生よりも、他の年代へのコンテンツ作りを重視せざるを得ない為、部活動の地域移行には一切動いていません。
 そんな立場からすると、他の地域で上手くいったモデル事業を展開してくれるのはいいことのように思います。主体的に考えて動くことができない行政と、きっと真似だけすればいい状態の方が有り難いでしょう。ふじみスポーツクラブとしても、手を挙げるだけでいいのなら楽でいいし、きっとリスクも小さく済むので歓迎できる気がします。

 でも、地域側に「こういう事業があるからやる人〜?」と投げかけても、たぶん手はなかなか挙がらないのでしょうね。これはあくまでも、行政が主体となって、地域側にオファーしていく形でないと。これはどんどん予算をつけてたくさんの実験的な事業が生まれるといいなと思います。


 一方、「課題の検証」については最終年度に何を言ってんだ、という印象を受けてしまいますよね。でも、これが現実なのでしょう。最終年度と言っても、何も動かないままここまで来ている地域はたくさんあり、たぶん富士見市もそうです。スポーツ推進審議会委員を務めている僕の耳に、何ら正式な情報が入ってきていませんし、噂レベルでもほとんど何も聞きません。だから、調査や啓蒙活動もできるように、「課題の検証」は残さざるを得ないのかなと思います。

 さて、実際には増額された予算が新たに何に使われるのかはまだ分かりません。総合型地域スポーツクラブの界隈で見られたネット上の発言では、予算をつけられたら困ってしまう自治体もあるのでは?ということでした。なるほど、これまでは特に予算がつかなかったから、何もしなくても何だか許されていたのが、予算がつくとやらなければいけなくなる。でも何をしたらいいか分からない。困った、困った。こういうことでしょうか?こういう所が多いのだとすると、公的なお金を“溶かしてしまう”事例が溢れていくのかもしれませんね。そのようなことにならないように、もしも自治体に地域移行の為の予算がついたのなら、総合型地域スポーツクラブとしてできるだけ使いに行きたいなと思います。


 さて、毎度このテーマの時にはお話しているかもしれませんが、僕が考える“部活動の地域移行の本質的な課題”についてお話ししてして終わります。
 大きく、「スポーツの舞台を学校から地域へ」という生涯スポーツ領域の課題と、「先生の働き方を改善して教育の質を上げよう」という教育領域の課題があると思っています。

 生涯スポーツ領域の課題で言えば、僕はとにかく、学校を開くことこそがまずやるべきことだと思っています。授業で使っていない時間の学校施設の開放や、地域人材をもっと学校教育の現場に入れること、などです。今でも放課後の体育館や校庭が地域に開放されたりしていますが、かなり限定的です。富士見市の場合、平日の開放はま18:30からです。授業が終わってから2時間以上経過しています。もっともっと大胆に開いていけば、学校というのはめちゃくちゃリッチなリソースですから、絶対に地域住民がもっともっと活用していくはずです。その流れが強まれば、部活動も学校内で閉じることなく、地域の活動として行えるようになっていくのではないかなと思います。

 先生の働き方サイドから言えば、とにかく部活動指導に正当な報酬を用意してきちんと業務として行うか、業務外のことを半ば強制されるようなことが違法であると認められることでしょう。
 さらに踏み込んで、教育の質の担保ということでいえば、部活動指導を先生の業務とするべきではないという議論もきちんもするべきでしょう。プログラミング学習をはじめ、これからのテクノロジーを活用できる人材育成を考えた場合に、部活動を教育の領域に置いておくのは限界があるのかもしれません。あくまでも優先順位の話として。
 そう考えると無難なのは、部活動は学校では取り扱わないことをトップダウンで決めて、部活動指導をしたい先生が業務時間後に地域活動(部活動)ができるように労働時間を短縮してあげればいいのだと思います。そこで報酬を得るかどうかはどっちでもいい。

 これが基本路線というか、目指すべき姿としてあって、そこに向けて進めていけばいいと思うわけですが、ただちにこれが実現できなそうだと分かると、「子どもたちのことを置き去りにしている!」という声があがり、変化を止めようとします。その気持ちはもの凄くよく分かりますが、正直、痛みの伴わない変化なんて無理だと僕は思っています。それこそ、本当に学校が部活動をやめたら、スポーツをする中学生は減るでしょうし、スポーツを続ける子の家計負担は増えるでしょう。これを痛みだとするなら、一定程度は受け入れなければいけない痛みなのだと思います。その痛みこそが、これまで半ば強制的に部活動顧問をやらされていた先生やそのご家族の痛みが置き換わったものだと考えれば、いきなりゼロになるものではないと思うんですね。もちろん、できるだけ誰も痛まないようにしていくべきだとは思いますが、いきなり痛みゼロはあり得ない。何かを変えるとか、新しい何かを始めるというのは、そういうことですよね。絶対に。
 痛みを受け入れるという話で言うと、この時代の中学生だけがこんな思いをして不平等だという主張もあるのでしょうが、僕の話をすると、僕は中学生時代に所属していた野球部が廃部となった経験があります。そもそも、みんなが平等にスポーツ環境が用意されるわけではないんです。また、そういう経験が色々な考えや行動変容を生み、今の自分に繋がっていると思っていて、部活動を失った経験がプラスに活きることだって全然あると思います。何とか自分で野球部を復活させようとした活動も、あきらめて違うスポーツを始めたことも、僕には貴重な経験だったと思っています。


 さて、まだ予算も確定したわけではありませんから、どうなるかは分かりませんし、僕としては引き続き、学校が部活動を続けるにしても続けないにしても、中学生も含めた生涯スポーツの環境づくりを進めていくだけですが、文科省の動向には注目していきたいと思います。そして、もしも本当に困る中学生が出て来たなら、全力でその子たちをサポートしたいなと思います。その時、できれば、こちらが用意してあげるというよりは、子ども達が自ら起こした行動をサポートするような形がいいのかなと思いますね。
 いずれにせよ、まずはしっかり頼ってもらえるクラブになれるように、ふじみスポーツクラブを引き続き成長させていきたいと思います。


 というわけで今日は、『部活動の地域移行が進む?』というテーマでお話しました。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!


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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5