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総合型地域スポーツクラブが公共施設を使う理由

 パウ・パトロールの映画が面白過ぎました。

 どうも、ふじみスポーツクラブの上杉健太(@kenta_u2)です。埼玉県富士見市で、誰もがいつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる地域社会の実現を目指して、総合型地域スポーツクラブの運営をしています。

 今日は、『総合型地域スポーツクラブが公共施設を使う理由』というテーマでお話します。

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 総合型地域スポーツクラブの多くは、拠点としている市町村内の公共施設や学校施設を会場として活動していると思います。理由は地域によって様々だと思いますが、全国どの地域にも言えることは、

「他に施設がないから」

だと思います。

 実際、昨年まで私がマネジャーを務めていた長野県喬木村(人口6000)は、民間のスポーツ施設などほとんどありませんでした。打ちっぱなしのゴルフ練習場があるくらいだったと思います。隣町にはフィットネスクラブやバッティングセンターが一つありましたし、それくらいです。グラウンド、体育館、そういったものはほとんど公営でした。恐らく同じような環境の地域は多いでしょう。

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 では、民間の施設があるところでは、総合型地域スポーツクラブは民間施設を活用しているかというと、そういうクラブはあまりないと思うんですね。そこで挙がってくる『公共施設を使う理由』が、

「使用料が安いから」

ですね。総合型地域スポーツクラブのマネジメントを任されている人のほとんどの悩みが、会費をなるべく抑えることで、その為には会場使用料というのは低ければ低いほどいいです。
 民間施設と公共施設だと、その使用料は何倍も違います。例えばふじみスポーツクラブが現在サッカージュニアクラスの会場としているふじみ野市のフットサルコートで比較してみると、公共のフットサルコートは子どもの利用の場合1時間750円ですが、民間のフットサルコートを使おうとすると1時間8,000円くらいします。約10倍です。
 もちろん、その分民間施設の方がいい環境が揃っていたりもするわけですが、この差は大きいですよね。この選択肢を前に、多くの総合型地域スポーツクラブは公共施設を選びます。

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 では、全く同じ料金の民間施設があれば、総合型地域スポーツクラブは民間施設を選んで活動することもありなのでしょうか。もしそんな民間施設があれば、現実的にはきっと活動拠点として選ばれるでしょう。そんな民間施設があれば大人気になって取り合いになっているでしょうが・・・(;^_^A

 ただ、私はそれでも、総合型地域スポーツクラブはなるべく公共施設を使うべきだなと思っています。それは、総合型地域スポーツクラブが地域住民による、地域住民の為のクラブだからです。つまり、地域住民の集まりである総合型地域スポーツクラブにとって公共施設は、『自分たちのもの』なんです。自分たちの施設を使わないで他人の施設を使おうとするのって、少しおかしいですよね。
 なので本当は、「なんで公共施設で活動しているの?」と聞かれたら、

「自分たちの施設だから」

と答えられるといいのだと思います。地域住民にはこの意識が必要です。公共施設は、地域住民のものです。自分たちのものです。

 行政主導で立ち上がったクラブからすると、これは当たり前のことだと思います。むしろ、民間施設を使うという発想自体が生まれてこないのではないでしょうか。
 ところが本当に地域住民の意思によって立ち上がったクラブからすると、活動場所は公共施設だろうが民間施設だろうが、別にどっちでもよかったりします。環境や使用料で決める。そういうものです。でもそれで民間を選ぶ人が増えて誰も公共施設を使わなくなったら、せっかく我々の税金で建てて運営している施設が放置されることになります。公共施設の価値が減っていってしまうんです。私たちの資産価値が減ってしまうんです。そして、民間施設は我々のものではありません。そこを運営している会社の株主のものです。多くの場合、その人たちは地域住民ではありません。いずれ資金を引き揚げてしまうかもしれない人たちなんですね。つまり、民間施設の価値を上げても、その資産は基本的には地域に残らないんです。

(※税収は増えるけど)

 これが、公益性を大事にする総合型地域スポーツクラブが公共施設を活動場所とする最も大事な理由だと思います。これまでは公共施設しかない地域でクラブをやっていたので考える必要がありませんでしたが、民間の施設やクラブがたくさんある環境でやり始めて、この総合型地域スポーツクラブのもう一つの使命に気付きました。我々、総合型地域スポーツクラブは、自分たち(地域住民)の資産である公共施設を活用し、その価値を上げ、その施設を残していく使命があり、地域のスポーツ環境を良くしていく使命があるということですね。

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 ちなみに非営利法人は、法人を解散するときの財産を地方公共団体(都道府県や市町村)や公益的な団体に譲渡することを定款で定めています。総合型地域スポーツクラブの場合、拠点としている市町村を指定していることが多いのではないでしょうか。これはつまり、総合型地域スポーツクラブの資産はいずれ市町村のものになるということを意味しています。

(※解散しない法人はないと思うので)

 つまり、もし自前の施設を持つようになっても、その施設を最終的には公共施設とすることができるかもしれないということです。ここが民間との大きな違いですね。非営利の総合型地域スポーツクラブが儲けることは、地域住民の資産を増やすことに繋がっていると考えることができるんです。もちろんその為には、赤字倒産みたいな解散の仕方をしてはダメなので、経営者はそのあたりの責任を感じて非営利組織を運営しなければなりません。ちゃんと資産を地域に残すんです。

(※恐らく負債が大きい場合は、財産の譲渡をまるっと拒否される)

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 このあたりまで理解できておくと、「会費はなるべく抑えなければならない・・・」という”呪い”から解き放たれることができるかもしれません。私たちが公共施設を使うのは、安いからではなく、そこが”自分たちのもの”だからであり、そこを使うことで資産価値が上がる(キープできる)からです。

(※使われなった公共施設のあの無残なこと・・・)

 さらに、総合型地域スポーツクラブの資産もいずれは地域住民のものにできるので、しっかり資産を作っていくことは地域住民の為になる。だから会費は適正に設定して、クラブは適正に利益を出し続けた方がいいんです。

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 ということで今回は、『総合型地域スポーツクラブが公共施設を使う理由』というテーマでお話ししました。いずれにしても大事なのは、「総合型地域スポーツクラブは地域住民のものだ」という意識だと思います。誰もがクラブの正会員になれるようになっていれば、実際にそうだとも言えます。地域のものを活用し、自分たち(地域住民)の資産が増えるように活動していきましょう。誰かの何かの参考になれば幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5