非営利でも報酬は受け取れます。

 どうも!上杉健太です。
 今日は、『非営利の誤解』というテーマでお話したいと思います。本当は今日は、総合型地域スポーツクラブの継続の話をする予定だったのですが、Xのとあるポストがちょっと盛り上がっていそうだったので、僕の見解を書いておきたくなりました(笑) ご容赦ください。


 そのポストというのがこちら↓です。

 ポストの内容は解説不要だと思います。これについて、コメントで賛否両論が起こっていました。

 僕の意見・感想としては、「誤解を生むポストだなぁ」です。この方の非営利に対する理解は分からないのですが、少なくともこのポストだけを見ると、『指導者が報酬をもらう=営利目的』と誤解をしてしまう人がいてもおかしくないと思うんですね。
 当マガジンでも何度か非営利については取り上げてきましたが、簡単に非営利を説明すると、『利益を分配しないで、事業に使う』『親族などの限られた人だけで経営しない』『解散した時の財産は公的な機関などに譲渡する』みたいなところです。
 もしかしたらこの説明を聞いて、「指導者へ報酬を渡すということは、利益を分配するということじゃないのか!」と思う人もいるかもしれませんが、決定的に間違っています。利益とは、収益から事業などにかかる費用を差し引いた差額ですが、指導者の報酬は費用の中に含まれるからです。公務員が堂々と報酬を受け取って仕事をしているように、非営利組織の事業に関わる人は、報酬を受け取ることができるし、非営利組織はそれを費用として計上することができます。NGなのは、費用を差し引いても残った利益を、「今年はこれだけ残ったから、貢献した人だけでもらっちゃおうぜ」と分配することです。「利益が出たので来年度の予算にまわしまーす」とすれば非営利的にOKです。ここを絶対に誤解しないでください。(※もう本当にお願い)


 さて、今回このポストを取り上げた理由は、上記の誤解を解くことだったので、もう目的は達したのですが、せっかくだから世間一般の意見も知って勉強していきましょう。このポストに付けられたコメントを見ていくと、肯定派・否定派でざっくり以下のような意見にまとめられるかなと思います。

〈肯定派〉
・営利だからといって5倍は高すぎる

〈否定派〉
・税金で管理運営されている施設で金儲けをするな
・営利目的の利用ハードルを下げたら、住民が使えなくなる

 コメントを読んで思ったのは、みんなそれぞれ頭の中に異なるイメージを持っていて、そのイメージにだけ基づいて発言しているから、なんだか噛み合わないことになるのかなということです。

 例えば「公共施設で金儲けをするな」は、完全に『金儲け=悪』というイメージに基づいていますよね。誰もが金儲けをして生活をしているのに、なぜかこのイメージを持っている人って多いですよね。特に地域スポーツ界隈には(^_^;)
 また、営利目的の団体が使うと地域住民が使えなくなるというのも、ただのイメージでしかないように思います。むしろ、営利団体を基本的には排除している現状の場合、公共施設を一部のスポーツ愛好家達や団体ばかりがたくさん使っていて、しかもその人達は地域住民に参加を呼びかけたりもしていなかったりする(=閉じている)ので、まさに占有している状態だったりします。営利目的の事業者が使って一般市民も参加できる企画をやった方が広く色々な人が使える施設になる可能性はあると思います。あくまでも可能性の話として。

 公共施設って、作れば勝手に誰かが使うわけではないんですよ。放っておいても使えるのは“スポーツができる人達”であって、それはほんの一部の人達だけなんです。だからコンテンツが必要で、そのコンテンツの運営が営利目的だろうが、非営利だろうが、僕はどっちでもいいと思っています。結果的に多くの人が使える施設になっているかどうか。広く地域住民に価値提供されているか。問題はそこだと思います。

 そう考えると、公共施設の管理者が営利目的の団体に対して5倍の利用料を求める理由は何なのでしょう?例えば大規模な大会などを開催して観客を入れるような場合、施設へのダメージや施設のスタッフの負担などが増えることが想像できます。そのコスト負担の意味で5倍にしている。これは納得できますね。でも、今回のポストのように「参加費が2,000円だから、利用料は5倍」ということだと、よく分かりませんよね。ポスト主がコメントで書いているように、「売り上げをよこせ」というメッセージと受け取られてもおかしくないかもしれません。ふと思ったのですが、この「営利は5倍」という料金設定は憲法違反などに当たる可能性もあるかもしれませんよね。要するに平等にしていないわけですから。目的によって料金を変える“不平等”を適用するのなら、それなりの理由が必要なはず。同じ内容で施設を使うのに、ある人は通常料金で、ある人はその5倍。これだけ見ると人を平等に扱っていないのだから、憲法違反な気がしてきます。

 とはいえ、公共施設での営利事業みたいなのをOKにしてしまうと、どんどんあらゆるジャンルの企業が入ってきてしまう可能性は否定できません。そうなると本当に地域住民が使えなくなるみたいな事も起きるので、そういった事態を避ける為に必要な“5倍”と考えると、正当性があるのかもしれませんよね。まぁ営利企業が占有できない(=利用が不安定な)公共施設を使って積極的に事業がしたいかと言えば、そんなことはないだろうと思いますけどね(笑)

 ちなみに、今回のポストでの扱いは不明だったのでメインでは取り上げませんでしたが、「参加費が2,000円だから営利目的」と判断する管理者や行政担当者は実際に存在します。これまで僕もたくさん出会ってきました。ここまで記事を読んでくださった皆さまならお分かりだと思いますが、「参加費をとったら営利」というのは完全に誤解です。営利かどうかを分けるのは、“利益”の取り扱い方ですから。酷い人だと、「参加費200円ならいいけど、参加費2,000円は“高いから”営利です」という理解をする人もいます。重要なのは金額ではなく扱い方ですから、参加費200円の営利目的もあれば、参加費2,000円の非営利もあります。これが正しい理解です。ろくに「非営利とは何か」を理解していない職員が「非営利じゃないので5倍です」とか判断しているのだとしたら、これはたまったもんじゃありませんよ。僕も結構苦労してきました(^_^;) (※今回のポスト主さんは多分、営利団体の方なのだと思いますが)


 というわけで今日は、『非営利の誤解』というテーマでお話しました。少しでも世の中の人が正しく非営利(NPO)について理解してくれるといいなと思い、取り上げさせていただきました。総合型地域スポーツクラブは非営利でやっているので。(※ちゃんと報酬はもらっているし、出しています!)

今回もお読みいただき、ありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5