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恐竜の生理学入門

みなさんこんにちは。

今回は、恐竜の生理学というテーマで、恐竜の生理機能に触れながら、ひいては動物の生理学についてのお話が出来ればと思います。

1.恐竜とは何か?

さて、さっそく恐竜の生理学をテーマに話を始めても良いのですが、そもそも恐竜という動物がどんな存在なのか、はっきりとイメージができないという方もいらっしゃるかもしれません。

なので最初に、少しだけ「恐竜とは何か?」について説明します。

恐竜といえば、皆さんご存知の通りティラノサウルスやトリケラトプスなど様々な種がいますが、

「恐竜とは何ですか?」と聞かれれば、説明するのはかなり難しいのではないでしょうか。

図鑑や映画などで目にすることの多い恐竜でも、いざ「恐竜とは何か?」という本質的な問い、すなわち恐竜の定義について尋ねられると答えがなかなか出て来ませんよね。

なので、ここで恐竜の定義についてはっきりさせておきましょう。

実際、恐竜の定義には2パターンほどあるのですが、今回は比較的分かりやすい方の定義で話を進めます。

その定義というのが「体の真下から真っ直ぐ足が伸びた爬虫類」です。

イメージを持って頂くためにも、次の図を見てください。

図に載っているのは、どちらも爬虫類ですが、トカゲの場合は「体の側面から足が生えている」のに対して、恐竜の場合は「体の真下から真っ直ぐ足が伸びて」いますよね。

これこそが恐竜と他の爬虫類とを区別する特徴、恐竜の定義です。

トカゲの他にも、この地球上にはカメやヘビ、ヤモリなど様々な爬虫類がいますが、恐竜のような足のつき方をしている爬虫類は他にいません。

「体の真下から真っ直ぐ足が伸びた爬虫類」という定義によって、「恐竜とは何か?」という問いに答えることが出来るのです。

2.聖地ガラパゴスから始まる進化の樹

みなさんは、ガラパゴス諸島をご存知でしょうか?

「なんで突然ガラパゴス諸島の話なんだ。」と思われるかもしれませんが、ガラパゴス諸島は、恐竜学にも関係するような、科学にとって大きな革命を生んだ地なのです。

その革命というのが、チャールズ・ダーウィンが提唱した進化論です。

みなさんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。

1859年に彼が著した種の起源という本の中で、チャールズ・ダーウィンが唱えた理論のことで、

その彼が進化論のヒントを得た場所というのが、まさにガラパゴス諸島なのです。

ダーウィンは、ビーグル号での航海の途中、1835年にガラパゴス諸島の最東端にあるサンクリストバル島に上陸しました。

南米・ガラパゴス専門ツアーサイト Galapagos.jpより(http://www.galapagos.jp/?p=726)

そこは、リクイグアナやウミイグアナ、ゾウガメやガラパゴスペンギンなど、ガラパゴス諸島で独自の進化を遂げた固有種が多く生息している場所です。

ちなみに、ガラパゴス諸島は赤道の直下にあるのに、「ペンギンがいるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

ガラパゴスペンギンは、世界で最も低緯度に生息しているペンギンで、かつて南極から海流に乗ってガラパゴス諸島に流れ着いたと言われています。

鳥の図鑑より(https://torinozukan.net/sp/garapagosupengin.php)

そして、そんな固有種が生息する島々に上陸したダーウィンが注目したのがゾウガメでした。

ゾウガメは、甲羅の形に種類があり、その形にはドーム型とサドル型(くら型)があります。

川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人より(https://gamp.ameblo.jp/oldworld/entry-10019359757.html)

ドーム型の甲羅を持ったゾウガメの場合、甲羅が邪魔で高い場所のエサは食べられないので、地面近くのエサを食べています。

一方で、サドル型のゾウガメであれば、首の上の甲羅がアーチ状になっているので、高い場所にあるエサを食べることが可能です。

ダーウィンは、これらの甲羅の違いを見て「ゾウガメが様々な環境に適応していく中で、甲羅の形が多様化していったのではないか」と考えたわけです。

まさにこれが進化論の原点です。

ちなみに、ダーウィンフィンチという名前の鳥がいるので、何かとダーウィンと関係がありそうですが、ダーウィンフィンチとダーウィンはそれほど関係がないんですよね。

さて、このようにして1835年に進化論のヒントを得たダーウィンですが、その後24年の歳月を経て1859年、遂に進化論を世に送り出すことが出来たのでした。

では、そろそろ恐竜学に話を戻しましょう。

ここでお話した進化という考えですが、その考えは、恐竜学においても非常に重要なものとなります。

特に、その進化の過程を視覚的に捉えることを可能にした、系統樹という図が非常に重要です。

高校生物 進化学説より(http://spider.art.coocan.jp/biology2/systematics.htm)

高校で生物を選択された方でなくとも、このような図を見たことがあるかもしれません。

この図を見ることで、生物がどのような進化の道筋を辿って来たのかが良く分かります。

そして、位置の近い生物種どうしは近縁であるということも読み取れます。

ここからは、実際にこの系統樹を使いながら、恐竜の生理機能に迫って行くことにしましょう。

3.絶滅した生物をいかにして研究するか

このブログのテーマとなっている恐竜ですが、まなさんご存知の通り、恐竜というのは既に絶滅してしまった存在です。

そのため、実際に会って観察することが出来ません。

では、実際に見れないにも関わらず、古生物学者たちはどうやって恐竜のことを調べているのでしょうか?

これに関しては、発掘された恐竜の化石を使って研究するという方法が1つ考えられます。

ただ、化石というのは、恐竜についてのほんの一部の情報しか提供してくれません。

恐竜がどんな色をしていたのか、どんな鳴き声だったのか、そして、どんな方法で異性にアピールしていたのかなど、化石からでは読み取れないことが多くあります。

しかし、化石からでは読み取れないような情報を推測する方法があるんです。

それが、系統ブラケッティング法というやり方です。

このやり方は、系統樹上で位置の近い生物どうしを比較し、恐竜が生きていた当時の生態を推測するという方法です。

実際に系統樹を見てみましょう。

恐竜とは?より(https://mountainlake.web.fc2.com/)

系統樹を見てみると、恐竜と近い場所に配置されている生物として、ワニ類や鳥類がいますね。

これらの生物が、恐竜の近くに配置されているということは、これらの生物が、恐竜と近縁な関係であることを示しています。

よって、ワニ類や鳥類の行動や食性、生理機能などを調べることで、恐竜の生態を推測する手掛かりとすることが出来るのです。

4.恐竜の生理学

では、実際に系統ブラケッティング法を用いて恐竜の生理機能を推測した例をご紹介しましょう。

その例として、恐竜の消化機能の推測があります。

恐竜の消化機能に関わる食道や胃、腸などは、化石として残ることがほとんどありません。

実際、博物館などに行っても、恐竜の消化器官が化石として残っているのを、見る機会はほとんどないでしょう。

では、そんな化石として残らない部分をどうやって推測するのかと言うと、

その方法が、系統ブラケッティング法です。

恐竜の場合は、鳥類やワニ類と近縁ですから、これらの生物の消化器官と比較して推測するというのが良いでしょう。

ただ、この推測の方法には1つ問題があります。

それは、鳥類とワニ類で消化器官に多少の違いがあることです。

つまり、鳥類を参考にするか、ワニ類を参考にするかで、推測の結果が変わって来ることになります。

なので、恐竜の消化器官に関しての推測は、本当に正しいのかどうかという確証が持てないわけです。

これは非常に残念なことですね。

ですが、そうは言ってもやはり鳥類やワニ類から得られる情報は、恐竜の研究にかなり重要なので、少し鳥類とワニ類の消化器官の話をしましょう。

ワニ類の場合

ワニ類の場合、口から入った食物は食道を抜けて胃へと移動します。

恐竜の教科書より(ダレン・ナイシュ/ポール・バレット 著 創元社)

ワニ類の持つ胃というのは、前方の噴門部と後方の幽門部の2つの部位に分けることができ、そこで消化された食物が、腸を通って最終的に総排出腔から排泄物という形で排出されることになります。

鳥類の場合

一方で、鳥類の持っているワニ類とは多少異なっています。

鳥類は、口から取り込んだ食物を、食道を通して胃まで運びますが、その途中に、素嚢(そのう)と呼ばれる器官があります。

恐竜の教科書より(ダレン・ナイシュ/ポール・バレット 著 創元社)

この素嚢では、一時的に食物を蓄えることが出来るんです。

そして、それら食道と素嚢を通って胃まで運ばれて来た食物は、胃での消化を受けることになります。

ちなみに、鳥類の胃も、ワニ類の同じように2つの部位に分けることが出来るので、少しご紹介しておくと、前方が前胃、後方が砂嚢(さのう)です。

砂嚢は筋肉質な部分で、表面がザラザラしており、砂嚢内にある胃石を使って、硬い食物をすり潰すことが出来ます。

さて、このように、ワニ類と鳥類では、消化器官の構造にいくつかの違いがあるわけですが、恐竜はどちらに似た消化器官を持っていたのでしょうか?

一部はワニ類に似た消化器官を、一部は鳥類に似た消化器官を持っていたのかもしれません。

もしくは、その中間にあるような消化器官だったかもしれませんね。

それでは最後に、少しだけ恐竜の消化器官に関して分かっていることを述べて終わりにします。

先ほど、鳥類が砂嚢内に胃石を持っていると言いましたが、同じく恐竜にも胃石を持っているものがいました。

それが、オルニトミモサウルス類やオヴィラプトロサウルス類の恐竜たちです。

川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人より(https://ameblo.jp/oldworld/entry-11395887715.html)

自費出版のリブパブリのブログより(https://gamp.ameblo.jp/kawai-n1/entry-12432349477.html)

それぞれのグループの代表例であるオルニトミムスとオヴィラプトルを見てみると、見た目からして既に鳥類と似ていますよね。

実際、これらの恐竜は、他の恐竜たちと比べてもかなり鳥類に近縁な存在です。

そのため、彼らが鳥類に似た消化器官を備えていた可能性は、十分にありそうですね。

恐竜たちが、どんな消化器官を持っていたのか、ひいてはどんな生理機能を持っていたのか。

さらなる発見が待たれます。

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