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月が存在するわけ

K.S.R.C ResearchReport FileNo.010008
原本公開日 1999/2/7 報告  報告者:KS

我々が空を見上げたとき、そこには月が浮かんでいるのを見ることができる。

地球という惑星がこの月という衛星を伴っていたことにはどんな意味があるのだろうか。 実はこの月の存在は、この地球上に発生した生物が進化し宇宙に進出するにあたって、非常に幸運であったというほかないのである。

 まず、海の中に発生した生命体は、そこから直接宇宙に飛び立つことはほとんど不可能だったので、陸に上陸しなければならなかった。実はこのときに月が存在していなければ、生命の上陸はなかったかもしれないのだ。
 月が存在してこそ、潮の干満が激しく引き起こされ、なかば強制的に陸に取り残された生命が、懸命に水を求めて陸を這うことを覚えたのが、陸上生物の始まりなのだ。

 そのようにして陸上で進化した我々が、ふと空を見上げるとそこには月があるのだ。地球が宇宙空間に存在する一つの惑星にすぎないことを知った人類が、その頭上にぽかんと浮かんでいる月という天体に興味を持つのは当然のことだった。逆に言えば月という存在があればこそ、この重力の井戸の底から外に出ていこうと考えたのだと言えるだろう。
 月による干満に導かれて上陸した生物にとって、新天地を求める行為はルナティックなまでに根元的な衝動ではあるまいか。
 そして月着陸した人類はいま月を足がかりにして宇宙へ飛び立とうとしている。つまり月は常に人類を地球から宇宙へ誘い出す役目を担ってきたのだ。 

 こう考えてくると月という存在が、地球上の生物にとってあまりにも都合が良すぎると思えないだろうか。
 最新の物理学がその存在を辛うじて認識しはじめている「超宇宙」という概念がある。この「超宇宙」の概念で月が存在する意味を説明してみることにしよう。

 実はこの宇宙全体が、超宇宙に存在する外部干渉者(しいて表現するならば神のようなもの)によって作られた壮大な実験室なのだというのだ。それは「箱庭宇宙」とでも表現できようか。
まるで小学生が蟻の観察をするかのように、この宇宙の外から誰かが我々の動きを観察しているかもしれない。そのために月という存在をこの地球に与えたのである。

その観察者は「やっと人類も宇宙に進出し始めた」などと記録しているかもしれない。


<解説>

重力の井戸の底

 当然、地球のことを指す。この表現は「機動戦士Zガンダム」で登場した。
ちなみにZガンダムでは「重力に魂を惹かれた人達」という表現も登場する。これは宇宙時代においても地球から宇宙を支配しようとする人達のことをカミーユ・ビダンが表現したものだ。

ルナティック

1.「狂信的な」の意。
2.「月の」の意。

超宇宙

スーパーヴァースとも言う。
異次元、我々の宇宙の過去と未来、我々の宇宙とほぼ同等な平行宇宙、分岐宇宙などをすべて含むものを「超宇宙」と呼ぶ。
この「超宇宙」は現代物理学をはるかに超えた想像の世界と言える。
「超宇宙」はその認識自体が人間のキャパシティを超えているかもしれない。

箱庭宇宙

 SF作品の中にフェッセンデンという天才科学者が実験室で箱庭宇宙を創造したという物語がある。エドモンド・ハミルトンの「フェッセンデンの宇宙」という作品だ。
 この作品では、フェッセンデンの創造したミクロ宇宙で、やはり生物が生まれ進化していくのだが、ミクロ宇宙の外部から創造者、つまりフェッセンデンが干渉することが可能だった。このフェッセンデンのミクロ宇宙は事故により破壊され、その技術も失われるのだが、その一部始終を見ていた友人はその日から不安にさいなまれる。我々自身の宇宙の外に”フェッセンデン”がいるのではという不安に。



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