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【映画オッペンハイマーを見て非常に怒りを覚えた話、ただし配給しなかった映画会社に】

現代最高の映画監督クリストファーノーラン最新作「オッペンハイマー」をようやく見ることができた。

結論から言うと、素晴らしい映画だ。3時間一度もダレることなくスクリーンに釘付けだった。明確な反戦・反核映画であり、原爆を否定的に描いている。このような映画がハリウッドから登場したことは喜ばしいし、アメリカ人やイギリス人の歴史意識の変化を表すものだ。世界中の人々に見られるべき映画であり、この映画を通して核廃絶への道が少しでも進むことを願う。もちろんここには日本人も含まれる。むしろ日本人こそが見るべき映画だ。
その意味で世界で唯一の被爆国である日本での公開がここまで遅れたことの異常性は指摘したい。

映画ファンの間では、「あのノーラン」の最新作の日本での公開予定が待てど暮らせど立たない異常事態にヤキモキする日々を1年間過ごしてきた。
この映画は世界ではユニバーサルが配給しているので、日本では東方系列の東宝東和が公開するのが筋である。ところが東宝東和はどうやら「オッペンハイマー」の配給権を取得しなかった。それどころか、他の大手2社である松竹も東映も手をつけようとしなかった。

結果的に中小規模作品を配給してきたビターズエンドが日本での配給権を獲得した。正直このニュースを聞いた時は驚いた。

「え? ビターズエンドがノーランの作品を配給!?」

例えが難しいが、「最新のiPhoneは格安SIMブランドでしか買えません」と言われたようなものだ。

大手配給会社が軒並み公開を見送った「オッペンハイマー」。

一体どんな「危なくて」「不道徳で」「歴史的に正しくなく」「日本人に不快な」描写があるのだろうと思っていたら、そんな描写は皆無だった。
もう一度言う。この映画に炎上する要素はない。

核開発とその使用には明確に批判的なスタンスが取られており、主人公のオッペンハイマーは常に葛藤し苦悶の表情を浮かべている。

そのスタンスは原爆の投下以後、より鮮明になり、水爆開発に反対の立場をとったことから、彼は英雄から国の裏切り者へと転落し、没落する。
そもそもこの映画が彼を批判的に描くことは映画冒頭で宣言される。冒頭でプロメテウスの神話が登場し、人類に炎をもたらしたプロメテウスが永遠に苦しんだことが示される。

この映画には原作があり、その原題は「アメリカン・プロメテウス」である。人類に核の炎をもたらしたオッペンハイマーはその罰として永遠の苦しみにあうのだ。

この映画は彼が味わった地獄を観客に見せる。
アインシュタインとの会話の中で彼は語るのだ。自分が地獄の門を開いたことを。そして、観客は自分たちがオッペンハイマー以後の呪われた時代を生きていることを知る。

この真摯なメッセージを無視して、「炎上するリスクがある」「批判されるかもしれない」などといった、根拠のない理由で映画公開を見送った日本の大手配給会社たちを批判したい。彼らは実態のない影に怯えているだけだ。実際、映画が公開されても日本では上映反対運動も炎上も起きていない。

「炎上するかもしれない」「可燃性がある」という言葉を仕事でもよく聞く。そういうチキンで日和った態度こそが世の中を悪くしているのであり、リスクの取れない無能な人間は仕事など辞めた方がいい。アホばかり気にしていたら、どんどん世の中はアホの水準に落ちていくのだから、本当に大切にするべきものは何なのか頭を使うべきだ。


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