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クラフトワークの年になったね

この2024年の夏フェス、フジロックのヘッドライナーに、クラフトワークがやってくる!
えっ! と驚いた人も多いでしょうね! 大丈夫なのか! もう老人なのに! いや、ロボットだから大丈夫なのだ。

それに合わせて私の盟友、川崎レジデンツさんが、クラフトワーク・オンリーのDJイベントを7月11日に高円寺でやることにして、私と、旧知のメカノ店長のトークコーナーをセッティングしてくれました!

ご来場希望の方は、川崎レジデンツさんまでメールで!

せっかくですので、今は無くなってしまったミュージックシェルフという音楽サイトで、2009年、クラフトワークのボックスセットがリリースされたタイミングに中野さんと対談をしていますので、その内容を今回、抜粋して採録再掲してみました。イベント前のご参考にどうぞ!


2009年の音楽界最大の事件といえば、あの歴史的なグループのヒストリーをまとめたリマスターボックスのリリースでしたね! ドイツから生まれたテクノ/エレクトロミュージックの元祖、基本中の基本、クラフトワークですよ!
そこで、このクラフトワークの日本盤ディスクのライナーノートをすべて手がけている、クラフトワーク博士、中野泰博さんを訪ねてきました。場所も中野! まんだらけでもおなじみの中野ブロードウエイの3Fにあります、中野さんが経営するテクノディスク専門店「メカノ」から!

賢崇:「しかしネット時代になっても、こうした対面販売のお店というのは重要ですね。何より中野さんから直接、解説を聞いて買えるんだもんね」

中野:「ネットのおかげで、youtubeで情報はどんどん手に入るから、若い子たちの間でも平沢進聞きたいとか、戸川純知りたい、という需要は増えてるんですよ。でもネットの中って情報が並列で選別されてないから、検索すると音の悪いブートとかパロディビデオとかコピーバンドの演奏までゴッチャに出てきたりして。どれが本物でまず何を聞けばいいか、砂浜で宝石探すようなものですね。なのでどのアーティストのCDがどんな感じかとか迷ったら声をかけて欲しいです」

賢崇:「そういうガイドの役割はますます求められてると思うので、やっぱりこういう店を続けていく意義はありますね! お店の営業しながら原稿書くのも大変だと思いますが、やっぱりクラフトワークだけはハズせませんよね!」

中野:「クラフトワークは7-80年代のレコードとか、あまり詳しくない人が書いたライナーが当時のままCDになっても二十年たってもそのまま掲載されてて、これじゃマズいだろうと、がんばって全部新しく書きましたよ。前回出たライブ盤「ミニマム・マキシマム」も書いたし、これで日本で出てるクラフトワークのライナーは全部私になっちゃいました」

賢崇:「今回リマスター盤は1枚ずつのバラとボックスセット「カタログ」が出てますが、仕様は違うんですかね?」

中野:「ボックスセットのほうは、箱もブックレットもLPレコード盤サイズでデッカイからトクした感じはしますよ。CDケースも紙ジャケだし持っていて嬉しいブツですね」

賢崇:「あのグラフィックは大きなサイズで見たいね~。しかしバラのほうは帯がついてるのが捨てがたい。こっちも中野さん作のキャッチコピーがついてるし。海外盤はなんか仕様が違うんですか?」

中野:「いや、基本的にライナーの有無だけですね。違いは。日本だけのボーナストラックとかも許してくれないらしいですよ。「クラフトワークは全世界共通」ってことで。海外盤はほんどグラフィックだけで、テキストによる解説みたいなのは一切入れない方針らしいです」

賢崇:「日本人だけが受けられる恩恵なんですね! 中野さんの解説が読めるっていうのは! 初心者にはよりわかりやすく、マニアにはより深く!」

中野:「時代背景や使用機材もわかれば、より楽しめる部分もありますしね。クラフトワークって誰がインタビューしても同じ答えしか返ってこなかったりするんで、もう彼らならこう答えるだろう、ていう公式見解に近いものを書いてるつもりですよ。やめていったメンバーについて書くのは、ちょっと神経使いましたけどね」

賢崇:「過去に在籍したメンバーの功績も振り返るにもいい、リマスターですよね。今回特に、SE的なシンセのエフェクトぽい音がクリアに聞こえるようになったですね~。ピピッピーとか。ブゥーンボインチャッとか。立体感とか残響感がクッキリしている。昔にアナログで気付かなかった「あ、ここにもまだこんな音が入ってた」みたいな発見もありました」

中野:「中低音のドン!ドン!みたいな音もハッキリしてきましたよね」

賢崇:「そこはクラブミュージック時代をくぐり抜けたからこそみたいな?」

中野:「そうでしょうね。CD時代になったばかりの頃は、アナログをただ変換しただけみたいでムリがありましたよ」

賢崇:「音質も日々進化してますよね」

中野:「アナログをCD化した初期のものは音圧が低すぎて、それからリマスター盤っていうと音量をやたらと上げたものが多くなったんですが、今はもっとナチュラルに聞こえるように変わってきましたね。アナログを聞いてた人にも違和感がないように」

賢崇「なるほど。そこがクラフトワークだからこそわかりやすいのかな?」

中野:「クラフトワークのキーワードは「シンプルとベーシック」ですよね。「アウトバーン」の頃も、アナログだから単音、ベロシティつけられないからフラット、というのを逆手にとってロボットのポップスというものを作り上げた。そういったシンプルな姿勢は今に至るまで一貫してますよね」

賢崇:「そこがいつまでも聞いてて飽きないし、お腹にもたれない。つうとこですね」

中野:「リアルタイムでクラフトワークを追っていくと、アルバムの出る間隔が長くなっていったのってハードの移行期間なんですね。モノラルシンセをユニット化して「コンピューターワールド」になって、デジタル化して「テクノポップ」まで5年、シンクラビアになって「MIX」出るまで5年。完全にパソコンに移行して「ツールドフランス」出るまで10何年」

賢崇:「新しいハードもよっぽど進化するまで信用できないんでしょうね」

中野:「次の新譜も準備してる、と言ってるらしいですが、こっちも出るまでは信用できないですね~。まあ今回のリマスターはドイツ人ならではの、職人が何十年もかけて磨いてきた、余分なものを排除してブラッシュアップされた製品って感じですよね」

賢崇:「クラフトワークの名にふさわしい、工芸品のようなサウンドですよね。グラフィックのほうも見た事がない絵もいろいろあった気がするけど、まったく新しいってワケでもないんですかね?」

中野:「80年代からライブでスクリーンに投影されてたものやオフィシャルのグッズに使われたもの、そのへんを集めた集大成的な感じですね」

賢崇:「その中で「人間解体」のジャケ写が、オリジナルの肌色を取って、モノクロにしたところにこだわりを感じましたね。お化粧はしてるけど、素顔に近いカラー写真だったのに。「ヨーロッパ特急」の写真は最初から着色してあったし」

中野:「どこまでも人間くささを排除したかったんでしょうね! 後はもうロボット写真かCGとかイラストですもんね。」

賢崇:「しかし、あのロボットてのも。。。どっちかていうとドール。人形じゃん! おっさんの。ていうバカバカしい可愛らしさ、みたいなモノがクラフトワークの本質だと思いましたねえ、ぼくは。放射能やTEEのアイコンも、可愛いんだもん。音楽だって、いつだってキュートですよね。ビョ~ンとかプヮ~ンとかティキトゥンとか。ビジュアルとサウンドがシンクロしている! 同世代のドイツのバンドには絶対ない感覚」

中野:「昔のインタビューでも「クラフトワークは音のコミックだ」と言ってましたもんね。シンボルやアイコンってのは概念としても新しいですね」

賢崇:「電卓にしたって、たぶん目の前に電卓があって、電卓を愛おしいと思う自分がいて、その自分を愛おしいという気持ちが、あのビジュアルになり、あの音ができていく、というキャラ感覚が、日本人にもわかりやすいし、女の子にもウケがよい、ていう部分じゃないですかね~。もう今の若い子も絶対好きになりますよ。まあ、クラフトワークについてもっと知りたければメカノにこい!って感じですね」

中野:「まあ、せっかくお店やってますんで。ぜひお声をおかけください」


ぼくも正直、このボックスから後のクラフトワークに関して、そんなに詳しく追ってません!
たまにYoutubeで「まだやってんな」という生存確認はしてますが、この15年の間にどう変貌してるのか、してないのか! 中野さんに教えていただこうと思います!


中野泰博さんと私

中野さんがディスクユニオン渋谷店長時代からいろいろと教えられ、ぼくがリリースした作品のコーナーを作っていただいたり、お世話になってます。イベントでもDJをお願いしたり、一緒に平沢進さんの取材で筑波まで行ったり。メカノができてからも、大量のCD、レコードを持ち込んだり。年に1回は必ず顔を出して音楽談義をしていますよ。行ったことない人はぜひメカノに行こう〜


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