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狂言『二人袴』島田洋海社中

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狂言大蔵流 茂山千五郎家 島田洋海社中でお稽古し、2022年5月に披露した 狂言『二人袴』を私見にてご案内してござる
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#聟入り

狂言『二人袴』の四 ようやく聟は舅と対面でござる

和ろうてござるか〜新婚の弟を連れてその弟の妻の父親、すなわち 舅さまの邸宅へ この兄と弟は色違いの段熨斗目と申す着物を着付け 正装に履く袴は弟の分のみ携えてまいりまする さて舅宅へ着き弟に袴を履くように言い付け 兄は案内を乞うて弟の元へ戻りまする 袴を着けるのも一苦労でござる 弟はこの間に袴を着けようとはするものの 普段は履かない長い袴に驚き、腕を通したり体に巻きつけたりと 履き方が分からぬ様子 戻って来た兄に「履かいておくりゃれ」と投げ出し 「ムサとしたことを…」と

狂言『二人袴』の弐 兄は弟の婿入り支度に手を焼いてござる

和ろうてござるか〜今の世とは異なる聟入りのお話はすでにしてござるが 要するに自分の妻の父親(舅)に挨拶に行く儀式のことでござる ただ一人で行く場合もござるが この二人袴では、付き添いが要るのでござる 演者の歳格好に合わせて 聟が息子、付き添いが父親であったり 聟が弟、付き添いが兄であったりしまする 思えばわたくしは親子の二人袴は観たことがないようでござる さて舅が名乗り、太郎冠者に用を言い付けて本舞台の後ろ方へ座したならば いったん場面転換でござる 聟と兄の家に舞台

狂言『二人袴』は聟入りのお話、さて室町時代の聟入りとは

和ろうてござるか〜わたくしは十八年前の二〇〇四年に結婚いたいてござる 結婚の前にはお妻様の御両親に挨拶に伺うてござるが 狂言の中では結婚した男は、結婚した後、日を改めて 妻の父親の元へ挨拶に向かうようでござる すなわち義理の親の顔もまたお家の様子も知らず 新婚生活を始めているようにござる 聟入りとは妻の家に養子になることにあらず つまとなる娘の親から見た夫を婿(むこ)と申すが現世の通例でござるが 狂言では‘聟’という字を遣うてムコでござる また聟に入るとは、妻の家に婿