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テクノロジーが想像をこえた創薬を可能にする

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Improving cancer immunotherapy through nanotechnology
https://www.nature.com/articles/s41568-019-0186-9

免疫チェックポイント阻害薬の問題

免疫チェックポイント阻害薬はこれまでのガン治療の在り方を大きく変えた。私たちが本来持っている免疫システムを最大限に利用することで、治療困難だったガン細胞と戦うことが許された。しかしながら、このガン免疫療法をもってしても、奏効率は15%にも到達していないのが現状である。そもそも効果がない患者さん、あるいは治療薬に抵抗性を生じる患者さんなどが数多く存在している。こうしたガン細胞の免疫逃避能・適応能はやっかいである。これを防ぐためには、免疫チェックポイント阻害薬の効果を高めることも重要であるが、薬物をガン細胞に最大限に届けることも重要な要素の一つである。投与する薬物濃度を上げれば良いのでは?という単純な話ではない。

therapeutic index(効果/毒性濃度比)の障壁

薬物と毒物の境は、『メリット:薬効性』と『デメリット:毒性』のバランスにより決められる。当然ながら、薬物は主作用のメリットを高め、副作用のデメリットを低くする必要がある。免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、自己細胞への免疫作用を抑制するための免疫寛容システム傷害で、これは自己免疫疾患などにつながる可能性があるため重要である。この副作用に至らないためには、投与薬物濃度を適切にコントロールしなければならず、つまり薬物濃度を下げる必要がある。濃度を下げるということは、主作用である抗腫瘍免疫効果をも下げることに他ならない。これにより、ガン細胞周辺に免疫チェックポイント阻害薬を十分量を届けられないという問題につながる。

ドラッグデリバリーがなぜ重要か

もし免疫チェックポイント阻害薬のような薬物を、ガン細胞周囲へ局所デリバリ-できればどうだろう。薬物の主作用を効率的に高め、副作用を低下させられるに違いない。このデリバリー技術を可能にするのがナノテクノロジーやバイオテクノロジーに他ならない。この技術をもってすれば、全身的な毒性・安全性の障壁を越え、薬物効果を最大化し、therapeutic index(効果/毒性濃度比)を極限まで高めることが可能になる。狙った場所の狙った細胞に薬を届けことは毒性を考える上でとても重要な考えである。

ドラッグデリバリーのおけるバイオテクノロジーの可能性

 薬物開発は、バイオテクノロジーと抱き合わせることが大きなトレンドがある。抗体薬物複合体やバイスペシフィック抗体などのバイオテクノロジーが多くの疾患に対して効果を発揮してきている。どのようにして、薬物に特異性を付加し、局在性に影響を与え、機能的な改善を可能にしているのかをこのレビューでサマリーしている。エンジニアリングは、①therapeutic index(効果/毒性濃度比)を広げ、②獲得免疫細胞治療効果を増幅し、③内在する自然免疫反応を高め、④ワクチン効果を改善し、⑤核酸取り込みを増加させ、⑥術前後の免疫治療の可能性を拡大する。

イントロの感想

テクノロジーやそれに関連したアプローチがどのようにして内在するリンパ免疫と獲得免疫を増幅させるために用いられているのかはとても勉強になりそう。今ある薬も主作用と副作用があり、どうすれば効果的な使い方ができるのか、どうアプローチすべかをサイエンスに基づいて考えるのは大事だなと感じた。

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