映画「Winny」を観てきた。
2023年4月3日 宍戸健
3月10日から公開されている、Winnyを昨晩観てきた。概要はこんな感じで実話に基づいたドキュメンタリー映画だ。
映画の予約時に気づいたんだけど、結構観る人が多くいた。(私が映画終了時に撮影。場所:六本木ヒルズ)
監督によると取材と撮影に4年かかっているとのことでかなり細かく再現されていると思った。また、始まりはCamfireのクラウドクラウドファンディングで、のちにKDDIがスポンサーとなり映画が実現したとのことだ。
以下はBitCoinerとしての私のランダムな感想です。(記録用)
1.開発者の金子勇氏はクレイグ博士とおんなじ感じでアスペルガーだと思った。例:質問されると、できるだけ正確に答えるために言葉が一般人に通じるかどうかは関係なく、専門用語で答える。(その方が正確なので)
2.変人度合いはクレイグ博士のほうが数段上。(ノルウェーでの裁判の様子)
3.WinnyはP2Pファイル交換だが、コンテンツを流出させたのはウィルスソフトAntinnyがWindowsに侵入して、Winnnyがインストールされると起動するというものだった。(映画の中ではあまり詳しく説明されていない。)
4.金子さんが逮捕されたのは、著作権侵害行為を「ほう助」したとして、共犯容疑が問われたが、「ほう助」する意図は認められなかったとして最終的には無罪となった。一方でAntinny開発には「ほう助」する意図があったと言えると思う。Antinny開発者の捜査はしたのか?このあたりは情報がない。
5.当時の情報流出の規模がすごい。「官民問わず多数の組織の情報が流出して社会問題化した。特に自衛隊における被害が多く、武器庫の情報など軍事機密情報がAntinnyにより流出している。」、「2007年5月には、警視庁による大規模な情報漏洩が発生し、暴力団や少年犯罪や痴漢や強姦事件の被害届の詳細や、暴力団と関係がある人物一覧(なかには芸能人や元プロ野球選手などの実名を挙げた上で、暴力団と関係していたなどという情報も含まれていた)などと言った個人情報が1万人規模で流出し、ネット上で騒然となった。」
官公庁、警察、自衛隊などが大規模に狙われていることを考えるとテロ組織による日本国家に対する組織的犯罪に思える。
報道日時と内容(2005年-2006年)
5月2日 TBS
鉄道改札システム
5月1日 ボーダフォン
634名分の個人情報
5月1日 ノキア
基地局情報
4月29日 岐阜県可茂消防事務組合
?名分の個人情報
4月27日 毎日新聞社
65,690名分の個人情報(Share)
4月25日 朝日新聞社
170名分の個人情報
4月25日 四国電力
発電所の資料
4月22日 阪神高速道路会社
79名分の個人情報
4月22日 高速道路管理
皇太子ご夫妻の視察経路
4月20日 兵庫県警
供述調書
4月19日 福井県立病院
32名分の患者情報
4月18日 福島県いわき市
313名分の個人情報
4月18日 近畿大学
24名分の個人情報
4月18日 長崎厚生福祉団
40名分の個人情報
4月17日 栄光ゼミナール
1,222名分の個人情報
4月17日 西日本プラント工業
568名分の個人情報・原発の資料
4月15日 日本理水設計
国会議員への口利き文書
4月14日 大阪府警
前科照会書ほか
4月14日 福島県いわき市
10名分の個人情報
4月13日 米軍三沢基地
109名分の個人情報
4月12日 東京都町田市
163名分の個人情報
4月10日 アイ・アンド・キュー
8,100名分の個人情報
4月10日 千葉県君津市立中学校
504名分の生徒情報
4月10日 東京都目黒区内小学校
80名分の児童情報
4月7日 マキタ
392名分の社員情報・取引情報
4月7日 日立ソフト
156名分の社員情報
4月6日 不明
12万7053名分の個人情報
4月5日 東芝
8,800名分の個人情報
4月4日 北海道武蔵女子短大大丸藤井
1,051名分の受験者情報
4月3日 NTTドコモ九州
996名分の顧客情報41名分の社員情報
4月1日 ストレージ・テクノロジー
29名分の顧客情報19社分の顧客情報
4月1日 箱根登山鉄道
40名分の社員情報6件分の取引先情報
3月30日 日立キャピタル
44件分の顧客情報
3月30日 au by KDDI
186名分の社員情報
3月29日 博品館
9,527件分の個人情報
3月29日 石川県立高松病院
843名分の個人情報
3月29日 三重県津市
215通分の業務メール
3月28日 北海道斜里町
住基ネット情報・642名分の個人情報
3月28日 フルキャストテクノロジー
128名分の個人情報
3月27日 トレンドマイクロ
報告書、資料
3月27日 三重県名張市立小学校
580名分の個人情報
3月25日 北海道セパタクロー協会
大会参加者の個人情報 ※調査中
3月24日 カーブ・ド・ヴァン萬屋
8,223件分の顧客情報
3月23日 横浜市の事業受託団体
239名分の個人情報
3月22日 日本ジャグリング協会
225名分の会員情報
3月22日 愛媛県立松山工業高校
1,625名分の個人情報
3月22日 新潟県立養護学校
11名分の個人情報
3月20日 福井市営葬祭場「聖苑」
10,285名分の個人情報
3月20日 Yahoo! JAPAN
3,169社分の出店企業情報。228名分の社員情報
3月20日 自民党の村上誠一郎議員
100名分の大物支援者名簿・200名分の個人情報
3月20日 三菱重工
社外秘の内部資料
3月19日 愛媛県警
4,400名分の個人情報
参考サイト 毎日新聞、ZAKZAK 、Yahoo Geocitiesより引用
6.安倍元官房長官の記者会見。(2006年3月15日)
7.私自身は当時この事件にあまり関心を持っていなかったのはどうしてかなと考えたところ、私はずっとMacを使っていたからAntinnyはWindowsに寄生するウィルスであったため、自分には関係ないと思っていたのだろう。
8.クレイグ博士は過去のP2Pソフトウェアが失敗してきた歴史を研究していた。技術面のみならず、法律面でも考え抜かれていた。Satoshi Nakamotoとしても違法な利用についてはいつも反対意見を残していた。(犯罪をほう助の意思がないことを証明する証拠ともなり得る。)
以下はSatoshi NakamotoとWikileaksのJulian Assangeとのやり取り。Wikileaksに使わないでくれと頼んでいる。
“No, don’t ‘bring it on.’ The project needs to grow gradually so the software can be strengthened along the way. I make this appeal to WikiLeaks not to try to use bitcoin. Bitcoin is a small beta community in its infancy." (2011年)
9.Satoshi NakamotoがHal Finnyに宛てたメッセージの中の以下の発言がクリプト業界で取り上げることがよくり、この解釈は「法律なんか関係なくて、P2P技術で政治を変える。」的な誤解がある。これがのちのクリプト界隈の"Code is law"的思想に繋がったと考えられる。
"It's very attractive to the libertarian viewpoint if we can explain it properly. I'm better with code than with words though." (2008年11月14日)
これについてクレイグ博士はこの時点では法学部の修士を履修中であったが、弁護士の資格は持っておらず、2012年に法学博士、弁護士資格、裁判官資格(実習は未了)を取得されたと言われている。この意味で2008年当時時点ではWords(法学)よりもテックの方が得意だとHal Finnyに言ったと説明されている。
10.金子勇氏を演じた東出昌大さんの役作りと演技が素晴らしい。金子さんが憑依したような演技とも言われている。
というわけで、金子さんのことよりクレイグ博士のことのほうに寄ってしまったが、上記Winny映画を見た後の思い浮かんだ感想です。
低予算の映画ではあるけど、非常によくできたドキュメンタリー映画なので良いこのビットコイナーの皆さんぜひ見てください。
参考資料:
- Winny開発者・金子勇氏 最高裁判決後の緊急記者会見【2011年12月20日】
- 壇俊光弁護士と語る「Winny事件」(ゲスト:壇俊光弁護士、@heatwave_p2pさん)(2023年3月2日)
- 金子勇氏が設立に関わった。P2P技術会社、Skeed。
- 【Winny】天才プログラマーはなぜ潰された?著作権違反の幇助に?ひろゆき&茂木健一郎と考える|アベプラ
- 東出昌大に役が憑依!?『Winny』松本優作監督に生インタビュー
- Winny開発者の金子勇氏に聞くSkeedが解決するクラウド時代の隠れた課題
(2012年10月10日)
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