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ビットコインのデータベース権。

2022年2月14日 宍戸健

先日の「ソフトウェア開発のユーザーに対するFiduciaryDuty」の裁判に続き、非常に重要なもう一つの裁判に進展があった。

この裁判は2022年7月に提訴された、1. ビットコイントランザクションデータのデータベース権侵害、2. ビットコインホワイトペーパー著作権侵害、3. トランザクションデータに関するファイルフォーマットに関する裁判だ。以下がその概要だ。(こちらが判決文)

原告:クレイグ博士、Wright International Investments Limited, Wright International Investments UK Limited。
被告:BTC、BCH開発、運営に関わる合計26名(個人、会社)
訴訟物:
1. トランザクションデータのデータベース権
a. BTCは2017年8月1日以前のデータベースを不法に使用している。
b. BCHは2018年11月15日以前のデータベースを不法に使用している。

2. ホワイトペーパーの著作権侵害
無断でホワイトペーパーを各種サイトに記載、ビットコインの名を使用している。
3. トランザクションデータに関するファイルフォーマット
ビットコイン独自のファイルフォーマットには著作権が発生する。

今回の審理の内容:
「本判決の原因となった審理は、管轄区域外でこの請求を送達する許可を求めるクレイグ・ライト博士の申請に関するものであった。被告の一部は裁判管轄内にあり、通常の方法ですでに送達されている。被告の大半は裁判管轄外である。訴訟当事者が請求を管轄外の人物に送達する許可を得るには、裁判所は請求の本案に関して「審理されるべき重大な問題が存在すること(serious issues to be tried)」を裁判所が納得する必要があるということである。」(判決文より抜粋)

判決
「私は、データベース権およびホワイトペーパーの著作権侵害の請求は、審理されるべき重大な問題を提起しており、したがって、これらの請求の管轄外への送達が許可されるべきであると確信している。本判決の争点は、Bitcoin File Formatに関する申し立てについて審理されるべき重大な問題が存在するかどうかである。」(判決文より抜粋)

「従って、ビットコインファイルフォーマットの著作権侵害に関する請求を削除することを 条件に、原告(クレイグ博士)が再修正請求用紙と修正請求の詳細を管轄外の関連被告に送達すること を許可することとする。」(判決文より抜粋)

というわけで、上記1-3の訴訟物のうち、3のビットコインファイルフォーマットの著作権については著作権が成立しないが、1と2については請求をしてよろしいということになった。(尚、クレイグ博士弁護団は3については上告するとのことです。)

クレイグ博士の説明:

  1. データベース権は著作権より大きく、著作権はアメリカではデータベース権の一部として扱われています。データベース権では、BTCとBCHは2017年以降にトランザクションデータを違法コピーしているため、データベースの使用について私と交渉する必要があります。データベースの権利は、現在MGMvsGroksterの判例 (2005年)のときより広範囲に適用されています。判決後にこれらの権利を侵害する組織は、刑事制裁を受ける可能性があります。この件に関する英国の判決は、米国内で執行することができます。事実上、私はBTCの運営を世界的に差し止めることができるということです。                                           

  2. ブロックチェーンにビットコインのホワイトペーパーが含まれるということは、開発者がこれを削除し、台帳を変更できることを示す必要があります。これを行うことは重大な意味を持ちます。私は米国で著作権者として登録されています。つまり、それは想定内ということです。ご存じのとおり他に自身がSatoshi Nakamotoであると主張している人はいません。         

  3. 3については控訴します。我々は控訴裁判所に直行し、これを提出する予定です。裁判官は、ファイルフォーマットがプログラミング言語のようなものだと考えたことが間違いでした。これは控訴審で扱われることになります。しかし、これは問題の中で最も小さいもので、LTCのような他のビットコインのコピーと同様に、BTCにはそれほど適用されません。今回の判決には、私の著作権を損なうようなものは何もありません。

これで理解できましたか?」ココまで。

日本国内でのデータベース権判例

日本国内でもデータベース権が認められています。(法令リード)

また判例も積み上がってきています。(旅行代理店データベース判例)

判例詳細はこちら。

その他判例(タウンページデータベース事件、2020年)

さて、最後に今後のクレイグ博士弁護団の動きについてなのですが、ChatGPTに聞いてみました。

「仮処分」ってのが申請できるらしいです。たしかに聞いたことありますよね。裁判所は受理するということを納得したということは、仮処分が英国裁判所から「バーン」って出たらどうなるんでしょうか。

それでは今日はこの辺で。


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