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SCMにおける生産管理 

SCM(サプライチェーン・マネジメント)と生産管理は密接に関連しており、かつ互いに補完し合う関係にあります。
生産管理を徹底し、SCMの中でうまく活用することで、企業はより効率的な運用を実現し、市場での競争力を高めることができます。
今回の記事では、SCMにおける生産管理の位置づけ・役割について整理します。


SCMと生産管理の位置づけ

SCMは、原材料の供給から最終製品の消費者に至るまでの全プロセスを管理し、最適化する戦略的なアプローチです。
これに対して、生産管理は、製造プロセスを効率的に管理し、製品の生産を計画、調整、制御することに焦点を当てた活動です。

SCMは、サプライチェーン全体の最適化を目指し、顧客満足度の向上、リードタイムの短縮、在庫削減、キャッシュフローの増大を実現することを目標としています。
サプライチェーンは、調達、生産、流通、販売など、多様な活動が含まれますが、これを効率的に管理することで、全体のコストを削減し、サービスの質を向上させることができます。

生産管理とは?

生産管理は製造業の核心をなす活動で、効率的かつ効果的な生産プロセスを実現するために不可欠です。
生産管理の主なポイントは以下の通りです:

  1. 生産計画: 生産計画は、製品の需要予測に基づき、どの製品を、いつ、どのくらい生産するかを決定します。生産計画は、資源の適切な割り当てと生産スケジュールの策定を含みます。

  2. 調達管理: 必要な材料や部品が、必要な時に、適切な品質と量で利用可能であることを保証するプロセスです。調達管理は、生産遅延を防ぎ、コストを管理する上で重要です。

  3. 生産スケジューリング: 生産スケジュールは、製造プロセスを計画し、様々な製造活動を時間的に整理することによって、効率的な生産フローを確保します。目標は、リードタイムの短縮と生産性の向上です。

  4. 品質管理: 製品の品質基準を定め、これらの基準が製造プロセス全体で一貫して維持されるようにするプロセスです。品質管理は、顧客満足度を高め、不良品による損失を減らすことを目的としています。

  5. 在庫管理: 過剰在庫や在庫不足を防ぎ、生産に必要な材料、作業中の製品、完成品の適切なレベルを維持するプロセスです。効果的な在庫管理は、コスト削減とサービスレベルの向上につながります。

  6. コスト管理: 生産コストを抑え、利益率を最大化するための戦略的な取り組みです。これには、材料費、労働費、オーバーヘッドコストの管理が含まれます。

  7. 継続的改善: 製造プロセスの効率化、生産性の向上、コスト削減を目指した、組織全体の取り組みです。継続的改善は、製品の品質向上と顧客満足度の向上にも寄与します。

生産管理とは、生産の3Mといわれる人(Man)、モノ(Material)、機械(Machine)をうまく使って、品質・コスト・納期(QCD)を最大化する活動ということです。
大きくは、計画フェーズの生産計画と、実行フェーズである生産統制の2種類に分かれます。
生産計画としては、生産方式の決定、最適な工場レイアウト、大日程・中日程・小日程計画といった期間別の生産計画の立て方、手順計画や標準原価の作成などがあります。
生産統制としては、余力管理・進捗管理・現品管理や、QC7つ道具・IE、購買管理・外注管理、設備管理といったことがあります。
いろんな管理がありますが、目的といえばQCDの最適バランスを取り、利益がでつづける生産体制づくりを行うということです。

SCMの中の生産管理

生産管理は、SCMの一部として、製造プロセスに特化しています。
生産管理の一番コアな目標は、生産においてQCDを最適化(最良のバランスをとる)することにより、効率的に生産できるよう、計画し、実行し、管理することだといえます。

SCMは、サプライチェーン全体について、QCDを最適化する活動になります。
その意味において、生産管理はSCMの中の重要な一部分であり、最適化の対象になります。

ここで注意点があり、SCMは全体最適を目指すので、個々の個別最適活動とは相反することがよくあります。
つまり、製造としては最適なものにおいても、原材料の調達や、製品・半製品の保管・物流などそれ以外の活動との連携を考えると最適ではなくなってしまうことについては、SCMとしてはあえて生産効率を落としたりする必要がでてくるのです。
SCMは、そういった個々の効率を鑑みながら、全体としての効率を考えていく必要があります。

製造するということの意味

SCMにとって、製造するということは特別な意味を持ちます。
それは、デカップリング・ポイントがどこにあるかを意味することになるからです。

デカップリング・ポイントについては下記記事にまとめていますので、ぜひご一読いただければと思います。

デカップリング・ポイントとは、在庫がどこにあるかということですが、原料が製品や半製品になる境目になります。
製造するということは、原料に付加価値を加えるというプロセスですが、逆に言うと特定の製品にするために特別な処理をするということです。
大体においては一度半製品・製品にしてしまったものを、もとの原料に戻すことはできなくなってしまいます。
また、当然、何か加工を加えるということはコストを使うということです。
製造するということは、原料とコストをつかってしまうということを意味しますので、製造してしまうというのは非常にリスクを伴う活動ということです。

製品がもし売れ残ったり、品質不良があって販売できなくなったら、それまでのすべてのコストが無駄になってしまいます。
ですので、どこで原料から製品にするかというデカップリング・ポイントは非常に重要な決定事項でありますし、生産管理はその製造を管理するという面で大事であるということです。

MP&Cについて

SCMには難解な専門用語として「MP&C」というものがあります。
MP&C(Material Planning & Control、材料計画・管理)は、生産管理の中心的な要素であり、製造業における資材の調達、在庫管理、供給計画の最適化を目的としたプロセスです。
MP&Cの主な目的は、必要な材料を正確な時期に、適切な量で、最適なコストで供給することにより、生産プロセスの効率性と効果性を高めることにあります。以下に、MP&Cの主要な機能とその重要ポイントを紹介します:

  1. 需給計画(Demand Planning): 市場の需要予測を基にして、どれくらいの製品が必要とされるかを見積もります。この予測は、材料調達や生産計画の基礎となります。

  2. 材料要求計画(Material Requirements Planning、MRP): 製品の生産スケジュールに基づいて、必要な材料や部品の種類、量、調達時期を計算します。MRPは、生産に必要な資材を適切な時期に供給することを保証することで、在庫コストの削減と生産効率の向上を目指します。

  3. 購買および調達: MRPに基づいて、必要な材料や部品の購買オーダーを発行します。適切なサプライヤー選定、価格交渉、納期の管理など、コスト効率良く品質の高い材料を調達することが求められます。

  4. 在庫管理(Inventory Control): 完成品、作業中の製品(WIP)、原材料の在庫を管理し、過剰在庫や品切れを防ぎます。効果的な在庫管理は資本コストを削減し、生産の柔軟性を高めることに寄与します。

  5. サプライチェーン管理(Supply Chain Management): 材料の調達から製品の顧客への配送までの全プロセスを通じて、サプライチェーン全体の最適化を図ります。サプライチェーンの透明性を高め、各ステップでの効率性と協調を促進します。

  6. 生産計画(Production Planning): 需要予測とMRPの結果を基にして、生産活動を計画します。設備の稼働計画、生産ラインのバランス調整、労働力のスケジューリングなどが含まれます。

  7. 品質管理(Quality Control): 調達した材料の品質を保証し、製造過程での品質基準を維持します。品質管理は、最終製品の品質と顧客満足度を保証するために不可欠です。

MP&Cは、効率的な生産活動とコスト削減を実現するために、計画、実行、監視の各段階で綿密な管理を要求されます。

TOCについて

TOC(Theory of Constraints、制約理論)は、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットによって1980年代に提唱された経営理論です。
生産管理としても製造のスループットを最大化する理論であると同時に、
TOCは生産管理だけでなく、サプライチェーンマネジメント(SCM)においても有効なフレームワークとして使えます。
TOC理論のプロセスは下記のとおりです。

①制約の特定:TOCでは最初に、生産プロセス内のボトルネックまたは制約を特定します。
制約はプロセスの流れを妨げ、全体の出力を限定する要因となります。
②制約の活用:制約が特定されたら、次にその制約をできるだけ効率良く活用します。
つまり、制約を持つリソースの無駄遣いをなくし、そのリソースを最大限に活用するようプロセスを調整します。
③従属化(サブオーディネート):システムの他の部分は、特定された制約に「従属」する必要があります。
これは、制約以外の部分を最適化することが、必ずしも全体のパフォーマンス向上につながらないためです。
制約に従属することで、生産プロセス全体が均一に流れ、在庫の過剰蓄積や待機時間の増加を防ぎます。
④制約の解消:可能であれば、制約を解消する措置を講じます。
これには追加の機械の購入、新たな供給源の確保、プロセスの再設計などが含まれる場合があります。
ただし、制約が解消されると、システムの新たな制約が明らかになることが多く、また①の制約の特定に戻り、この手順を繰り返しながら効率を上げていくことになります。

TOCは生産のスループットと呼ばれるアウトプットを最大限にする考え方です。
ただ、これは生産だけでなく、サプライチェーン全体に当てはめることができます。
サプライチェーンの中では、全体の物流量を決める制約となる「ボトルネック」が存在します。
サプライチェーンは、そのボトルネック以上の量を取り扱うことができません。
なので、そのボトルネックは、まず最大限に流れるようにしなければなりません。これがボトルネックの最大活用です。
ボトルネックの前には在庫を置いて、手すきが発生しないようにします。
逆に、ボトルネック以外の工程に在庫を置いても、その在庫は最終的なサプライチェーンの最適化とは無関係です。
ボトルネックの前の在庫だけが意味があるのです。
そうやって、ボトルネックがどこかを特定し、ボトルネックを最大活用することがTOC理論の一番重要なところです。
次にボトルネックの効率を上げるのですが、そうすると、サプライチェーン全体のボトルネックが別に移ることになります。
そうすると、またボトルネックがどこに移ったのかを見つける必要があります。
ただ、ボトルネックを1つ改善すると、その次のボトルネックの分までスループットの量が増えることになります。
こうやって改善していくことを繰り返していきます。

このように、TOCは生産管理の考え方で非常に重要であるのと同時に、サプライチェーンマネジメントにも通じる考えです。

まとめ

以上、今回はSCMにおける生産管理についてまとめてみました。
生産管理は、サプライチェーンの中の製造について最適化する活動です。
QCDの一番良いバランスを取るために、生産計画と製造統制(現品管理・進捗管理・余力管理)を行うことの生産の管理全般を指す管理活動です。
そして、サプライチェーンマネジメントは、調達・製造・物流・販売といったサプライチェーン全体の最適化を図る活動です。
生産部門だけの最適化で、他の機能には悪影響があるものについては、SCMとしては全体調整を図る必要があり、個々の最適化と全体の最適化のバランスで落としどころを見つけることが重要です。

またSCMについていろいろとまとめていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

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