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SCMと販売

インターネットを通じたオンラインショッピングが広がり、アマゾンや楽天市場などの通販サイトでの購入が一般的になりました。
この結果、販売と配送が密接に結びついたビジネスモデルが主流になっています。今では、多くのファッションブランドがオンライン販売に対応し、家具や家電のような大きな商品もインターネットで手軽に購入できます。
さらに、食品配送サービスも充実しており、UberEATSのように、普段は配達をしていないレストランの料理を専門の配送スタッフが届けるサービスも登場しています。
このような状況の中で、販売と配送を効果的に管理するためには、サプライチェーンマネジメントを通じた統合的な管理が必要とされています。

また、オンライン販売以外での販売、つまり伝統的なリテールや実店舗におけるサプライチェーンマネジメント(SCM)の重要性は非常に大きいと考えます。
今回の記事では、販売という面においてSCMがどうかかわってくるのかを見ていきます。


販売におけるSCMの重要性

SCMは、サプライチェーンにおける品質・コスト・納期の全体最適なバランスをとる活動であると言えます。
そこで、どこで製品の在庫を持つのかというデカップリング・ポイントについての経営判断が重要になってきます。
デカップリング・ポイントについてはこちらの記事で書いてますので、よろしければご参照ください。

製品在庫を持たずに受注生産にするのか、見込み生産にして製品在庫を持って顧客の発注にすぐ納品できるようにするのか、そのどこに在庫をもつのかがデカップリング・ポイントの設定となります。

販売においては、このデカップリング・ポイントがどこにあるかで、納期が全然変わってくることになります。
もし店舗に在庫があれば、お客様にすぐ渡すことができます。
でも、車を新車で買う場合に、納品に半年から1年かかってしまうケースもあるでしょう。
これは、顧客の細かい好みや要望に応じて最終製造する受注生産になっているので、納期がその分かかってしまうということになります。
一方で、そうすることで、細かい顧客の要望に応えられて顧客満足につながったり、価格を上げて高付加価値商品の販売につながったり、あるいは在庫コストの削減ができたりといったメリットがあります。

つまり、サプライチェーンの戦略と、販売の戦略が同期しているということです。

飲食店で考えると、例えばできるだけ店内調理を少なくして、セントラルキッチンで一括大量製造した商品を、店舗で電子レンジで温めるだけですませるということが考えられます。
これは工場製品を店舗に在庫で持って置き、店舗の調理工程を少なくするということですが、それにより店舗での作業負荷を軽減したり、店舗によっての品質のばらつきを抑えられるメリットがあります。
一方でデメリットとしては、店内調理でない分クオリティが低くなってし舞うことが考えられます。

こういったこともサプライチェーンマネジメントとして考えるべきことが、販売での戦略として重要な部分であるということを示しています。

SCMにおけるマーケティング

サプライチェーンマネジメント(SCM)とマーケティングは、異なる機能を持つように見えるかもしれませんが、実際には企業が顧客満足度を高め、市場での競争力を維持するためには密接に連携する必要があります。以下に、SCMとマーケティングの関係について解説します。

1. 顧客ニーズの理解と応答

マーケティングは市場調査や顧客分析を通じて顧客のニーズや嗜好を理解し、これらの情報をSCMにフィードバックします。SCMはこの情報をもとに、必要な商品を適切な時期に、適切な数量で供給できるように計画を立てます。このプロセスは、顧客満足度を高めるために非常に重要です。

2. 新製品の開発と導入

マーケティングが特定した市場機会に基づいて新製品が開発されると、その製品を市場に投入するためにはSCMのサポートが必要になります。SCMは新製品の生産、流通、在庫管理などを計画し、マーケティングが設定した期日に製品を市場に投入できるようにします。

3. サプライチェーンの柔軟性とマーケティング戦略

市場環境の変化に迅速に対応するためには、SCMの柔軟性が重要です。マーケティング戦略の変更、プロモーション活動、季節の需要変動などに対応するため、SCMはサプライチェーンの柔軟性を高め、効率的な調整を行う必要があります。

4. ブランド価値の構築

マーケティングは企業のブランド価値を構築し、顧客の信頼を獲得するための活動を行います。一方で、SCMの効率性や信頼性は、約束された品質と納期を守ることで、直接的にブランドの評価に影響します。つまり、SCMの成功はブランド価値の構築にも貢献するのです。

5. 情報共有の重要性

マーケティングとSCMの間での情報共有は、企業が顧客ニーズに合わせて迅速に対応し、市場での競争力を維持するために不可欠です。市場の変化や顧客のフィードバックをリアルタイムで共有することで、両者はより効果的な意思決定が可能となります。
SCMとマーケティングの連携は、顧客満足度の向上、市場での競争力の強化、企業の収益性の向上に直結します。したがって、これら二つの機能が密接に協力し、情報を共有することが、企業の成功には不可欠です。

販売実績からサプライチェーンの改善へ

サプライチェーンマネジメント(SCM)において販売実績から見えてくる課題を特定し、修正することは、効率的なサプライチェーンの運営と持続可能な成長を確保する上で非常に重要です。販売実績を分析することで、以下のような課題項目が明らかになり、それぞれに対して適切な対策を講じる必要があります。

1. 需要予測の精度

  • 課題:需要予測の精度が低いと、過剰在庫や品切れが発生し、コスト増加や顧客満足度の低下につながります。

  • 修正策:過去の販売データ、市場トレンド、季節性などを考慮した高度な予測モデルの導入やAI技術を活用した需要予測の精度向上。

2. 在庫管理

  • 課題:不適切な在庫管理により、過剰在庫や不足が生じる場合があります。

  • 修正策:リアルタイムの在庫追跡システムの導入、安全在庫レベルの最適化、在庫回転率の改善。

3. リードタイム

  • 課題:生産や配送のリードタイムが長いと、市場の変化に対応できなくなります。

  • 修正策:サプライヤーとのより緊密な連携、生産プロセスの効率化、代替サプライヤーの確保。

4. 品質管理

  • 課題:製品の品質不良が販売実績に反映されることがあります。

  • 修正策:品質管理システムの強化、定期的なサプライヤー評価と監査、品質不良時の迅速な対応プロセスの確立。

5. 顧客満足度

  • 課題:顧客の期待に応えられない場合、リピート購入が減少し、ブランドイメージが損なわれる可能性があります。

  • 修正策:顧客フィードバックの積極的な収集と分析、カスタマーサービスの向上、アフターサービスの強化。

6. コスト管理

  • 課題:運搬コストの上昇や生産コストの増加が利益率に影響を与えます。

  • 修正策:物流ルートの最適化、生産プロセスの見直し、無駄なコスト削減。

7. サプライヤーとの関係

  • 課題:サプライヤーとの関係が不安定だと、供給の遅延や品質問題が発生することがあります。

  • 修正策:サプライヤーとの長期的なパートナーシップの構築、共同でのリスク管理計画の策定。

販売実績の分析を通じてこれらの課題を特定し、適切な修正策を実施することで、サプライチェーンの効率化を図り、企業の競争力を高めることができます。

セイコーマートの販売におけるSCM戦略の事例

セブン-イレブンは日本全国に21,488店舗(2023年12月末時点)を持つ日本最大のコンビニチェーンです。
しかし、北海道では地元のコンビニ「セイコーマート」には勝てていません。
2023年末の時点で、北海道内のセブン-イレブンは1001店舗ですが、セイコーマートは1091店舗あります(茨城県や埼玉県の店舗も含めると1187店舗)。
セブン-イレブンが1978年に北海道で初めて店舗を開いて以来、ずっとセイコーマートの店舗数に追いつけていません。
セイコーマートは異なる独自のビジネスモデルを持っており、その中心の一つが店舗での調理です。この店舗調理システムはサプライチェーンマネジメント(SCM)の観点からも多くの注目を集めています。
以下にその特徴とSCMへの影響を説明します。

セイコーマートの店舗調理の特徴

  1. 地産地消の推進: セイコーマートは地元北海道の食材を積極的に使用しています。地元で生産された新鮮な食材を仕入れることで、食品の鮮度を保ちつつ地域経済も支援しています。これにより、輸送距離が短縮され、輸送に関わるコストやCO2排出量の削済みにも繋がっています。

  2. 店舗でのフレッシュフードの調理: 各セイコーマートの店舗では、パンや惣菜などをその場で調理しています。これにより、食品の鮮度が保たれ、消費者に新鮮な食品を提供できるだけでなく、無駄な食品廃棄を減らすことが可能です。

SCMの観点から見た利点

  1. 在庫管理の最適化: 店舗での調理は在庫管理を複雑化させる可能性がありますが、セイコーマートは地元供給者との緊密な連携により、必要な食材を適時に仕入れることができます。これにより、過剰在庫や品切れを防ぐことができ、在庫管理の効率化が図られます。

  2. 需要予測の精度向上: 店舗で調理される商品のデータをリアルタイムで分析することで、どの商品がよく売れるのか、どの時間帯に需要が高まるのかといった情報を把握することができます。この情報を基に生産計画を調整することで、供給過多や不足を避け、顧客満足度を高めることができます。

  3. サプライチェーンの柔軟性: 店舗調理システムは、サプライチェーンにおける柔軟性をもたらします。市場の変動や消費者の嗜好の変化に応じて、調理メニューを迅速に調整することができます。これにより、新しいトレンドや季節のイベントに即座に対応することが可能となります。

セイコーマートの店舗調理は、サプライチェーンの効率化だけでなく、顧客満足度の向上という面でも大きな利点をもたらしています。地域社会への貢献と環境への配慮を組み合わせながら、コンビニエンスストア業界において独自の地位を確立しています。

今回は、販売におけるサプライチェーンマネジメントの重要性についてまとめてみました。
今後もSCMに関する記事を書いていきますので、よろしくお願いいたします。


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