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サプライチェーン崩壊を防ぐ!リスク回避の戦略【変化対応力編】

サプライチェーンにおけるリスク管理は、企業が直面する様々な挑戦に対処し、長期的な成功を確保するための基盤となります。
したがって、経営戦略の中核としてリスク管理を位置付け、継続的な改善と評価を行うことが重要です。
サプライチェーンが複雑化し、相互依存性が高まる中で、小さな障害が大きな影響を及ぼす可能性があります。
SCMの観点から行うべきリスク管理を「BCP(ビジネス継続計画)」と「変化対応力」の2つに大別し、今回は「変化対応力」について書いていきます。

まず、会社が経営でどういうリスク管理をすべきかですが、
1.事業継続性の確保
2.競争優位性の維持
3.コスト削減
4.ブランド価値の保護
5.法規制の遵守

が重要であると考えております。
「1.事業継続性の確保」は、前回の記事で取りあげました。
また、「5.法規制の順守」はそのままの意味でとらえていただいて問題ないかと思いますので、
今回の記事では「2.競争優位性の維持」、「3.コスト削減」、「4.ブランド価値の保護」について取り上げます。

競争優位性を維持するサプライチェーン構築

持続的な競争優位とは?

持続的な競争優位に必要な要素を考えるために、VRIO分析という有名なフレームワークがあります。
VRIOは、ジェイ・バーニー(Jay Barney)によって1990年代初頭に提唱されました。このフレームワークは、組織が持続可能な競争優位を達成するためには、その資源が価値がある(Valuable)、希少性(Rare)、模倣不可能(Inimitable)、組織(Organization)によって支えられている必要があると提唱しました。

VRIOフレームワークの目的は、企業が自社の内部資源と能力を評価し、それらがどのように競争上の利点を提供するかを理解することです。

1.Value (価値)
資源や能力が顧客に価値を提供し、企業の効率や有効性を向上させるか。
2.Rarity (希少性)
 資源や能力が市場において希少であるか。
3.Imitability (模倣のしにくさ)
競合他社が資源や能力を容易に模倣できないか。
4.Organization (組織化)
企業がこれらの資源や能力を完全に活用して経済的な利益を得るための組織構造、プロセス、システムを持っているか。

以上の4つの問いにすべてYESであれば、その競争優位は「持続的」であるということです。
そして、もし1つでもNOであれば、その競争優位性は、「持続的とはいえない」という結果になります。
つまり、競合との競争に負ける可能性がでてくるということです。

リスク管理と競争優位性

企業が存続するためには当然キャッシュフローが黒字である必要があり、そのために自社の商品・サービスによる売り上げ・利益が必要になってきます。
もし自社の商品・サービスが、ライバル企業よりも著しく魅力が低ければ、売れないということになりますので、競争優位性というのは企業の存続で非常に重要になってきます。
つまり、リスクコントロールの観点でも、「競争優位性」を維持できるかを考えておく必要があります。

SCMと競争優位性

以前書いたデカップリング・ポイントの記事で詳しく説明しましたが、サプライチェーン・マネジメントは企業の事業戦略と深く結びついています。

デカップリング・ポイントの設定は、簡単に言うとサプライチェーンのどの段階で在庫を持たせるかということです。
サプライヤーに在庫を持たせて自社はリスクを持たないようにするのか、自社で在庫を持つ代わりに安く仕入れることにするのか?
顧客への納期をできるだけ短くするために製品在庫を持つのか、顧客のカスタマイズに柔軟に対応できるように受注生産にするのか?
といったことを決めることになるのですが、それはその商品・サービスのコストとバリューを大きく決めることに他ならないのです。
そのコストとバリューに「競争優位性」がなければ、経営の継続性にリスクがある状態だといえます。

サプライチェーンのコストとリスクについて

サプライチェーンでのコストとは

サプライチェーンは原料調達、製造、保管、配送などの上流から下流までの全ての供給連鎖全体を取り扱います。
ここで物理的に発生するすべてのコストと、それを管理する人件費や、システム構築費用などすべてのコストがSCMで取り扱うべきコストになります。
そして、現在発生しているコストだけでなく、将来発生しうるコストについても、時間全体でコストを最適化する必要があります。

在庫を持たないリーン生産方式という、余分なコストをすべてそぎ落としてコスト最適化を図ることは、何もイレギュラーが発生しない前提では最善のコスト管理となります。
ただ、もし災害などで材料や部品がすぐに届かない、生産が途中で止まってしまったといった場合には、その無駄のなさは弱点になってしまいます。
もしそこで原料調達を急ぐために航空便やチャーター便を使用して物流コストがかさんだ場合、トータルではよりコストが多くかかってしまうことになるかもしれません。
または、トラブル時の納期遅れにより、販売チャンスを逃してしまうかもしれません。

よって、SCMで取り扱うべきコストというのは、サプライチェーン全体でのコストであると同時に、イレギュラー発生時のことも考慮したうえでの最適コストであるべきです。

リスク管理としてのコスト削減とは

2023年、世界の人口は80億4500万人で、初めて80億人をとっぱしました。
2000年は60億5500万人で、過去23年で一気に20億人もの人口が増えたことになります。
そして今後、2080年に104億人まで増えてピークを迎え、2100年までその水準を維持すると予測されています。
つまり、これから60年、限りある地球の資源はさらに増える人口で奪い合うことになると予想されます。

基本的に世界経済は成長を続け、インフレを続けることが想定されます。
つまり資源の値段はずっと上がっていくということが予想されます。
サプライチェーンのためのコストもより多くかかっていくということで、コストを削減することは非常に重要です。

何もしなければどんどんコストは上がっていく状態であるということは、何もしなければ競争に負けてしまうということです。
そういう意味でコスト削減というのは、常に追い求めなければならないテーマであり、リスク管理上でも重要であると言えます。

ちなみに、日本の人口は2023年に1億2434万人ですが、2050年に1億468万人、2080年で8,200万人にまで減少すると予測されてます。
マーケットがどう動くかも重要ですし、コスト削減についても将来を見据えた対策というのを積み上げていくことが、リスク管理として非常に重要になってきます。

ブランド価値とリスクコントロールとは?

ブランド価値とは?

ブランド価値とは、消費者がそのブランドを通じて受けるメリットや価値の認識のことです。
これには、そのブランドが提供する製品やサービスの品質、信頼性、イメージなどが含まれ、消費者から選ばれる基準となります。
一般に、認知度・独自性・関連性・一貫性・体験といった要素を向上させることでブランド価値を向上させられます。

ブランド価値におけるリスクコントロール

SCMにおいて、ブランド価値と密着に関係すること、
それは品質と納期です。
この品質と納期が、価格と期待値と釣り合っていること、これが非常に重要になってきます。
品質が期待と違う:高島屋のクリスマスケーキが崩れて届いた例
納期に問題:スシローがフェア商品がほとんど販売されてないのに大々的に広告されていた例(「おとり広告」)

など、サプライチェーンマネジメントに問題があり、ブランド価値を落としてしまうことは、企業にとって致命的です。
スシローは連結純利益は前期比77%減とになりましたし、高島屋も大々的に報道されイメージも大きく損なわれてしまいました

サプライチェーンマネジメントを行うにおいて、ブランド価値を下げるようなことはしないよう、十二分に注意を払う必要があります。

まとめ 重要なのは「変化対応力」


今回は、SCMにおける「競争優位性」「コスト管理」「ブランド価値」の重要性とリスク管理について、まとめていきました。
上記のリスクコントロール力について、「変化対応力」と言い換えることができると考えてます。

サプライチェーンの構築というのは、まず初めの計画というのもありますが、日々実行の中で形が決まっていくものだと思います。
それが、時代の変化に合わせて、それぞれの要素の中でちょっとした変化が起こった時、サプライチェーンの全体がうまくいかなくなるというのは、ままあることです。
ブランド管理の中で、スシローのおとり広告の例や、高島屋のケーキの事例を引き合いに出しました。
これらも、少し前までは全体的にうまくいっていたものが、原料確保や製造時間の確保ということが難しくなったときに、その状況に合わせて適切に変化対応ができなかった事例だと思います。

今世に出ている事業は、どれも激しい競争環境の中で、苦労の中で競争優位性・コスト・ブランド価値を築き上げて、その事業が成立しているのだと思います。
しかし、めまぐるしく変化する環境の中で、それら築き上げたものが通用することが永遠に保証されていることは1つもありません。
サプライチェーンマネジメントにおいて、競争優位性・コスト・ブランド価値について、常に環境が変化するという前提をもとに、変化対応力を磨き続ける必要があると思います。

リスク管理については、前回の記事であるBCPと、今回の記事の変化対応力が非常に重要だと考えております。
そして、それはSCMが取り扱うべきテーマであるということで、長々と記事を書かせていただきました。

またSCMについて記事を投稿していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。



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