見出し画像

SCMとロジスティクス【前編】

サプライチェーンマネジメントとロジスティクスは何が違うのでしょうか?諸説ありますが、一番個人的にしっくりきているのは、
ロジスティクスは自社内の物流の最適化で、サプライチェーンマネジメントは企業間をまたぐ物流の最適化という定義です。

今回は、SCMとロジスティクスというテーマで、物流の最適化についてみていきたいと思います。


物流センターの機能

物流センターは、サプライチェーン管理(SCM)の重要な部分を担い、商品の効率的な流通を支える役割を果たします。
物流センターの機能は、入荷・保管・ピッキング・流通加工・検品・梱包・出荷など幅広く、これらについて詳しく解説します。
物流センターでの荷物を扱う活動全般を指して荷役(にやく)と呼びます。

物流センターの主な機能

入庫:
物流センターに荷物が入ってきて、保管場所に収める作業です。
この時、入庫予定をもとにその情報通りかどうかや、受け入れ基準を満たしているかを確認します。
不適合があれば、荷主に問い合わせをして受け入れ可能かを確認します。
ここで数量を間違うと、棚卸の時に差異が発生しトラブルになります。
まず荷物の受け入れ時点でしっかりと確認することが重要です。

保管:
物流センターでは、商品の在庫を適切に管理します。
保管方法として、保管場所を決めないフリーロケーションと、保管場所が定まっている固定ロケーションの2種類があります。
フリーロケーションは、どこにでも置けるためスペース効率が良くなる半面、どこに置いたかわからなくなるなど作業負荷が高くなります。
一方で、固定ロケーションは、モノの位置が明確化で棚卸しやすい・探しやすいですが、スペース効率は下がってしまいます。
保管スペースが十分にある場合や、荷物の大きさをコントロールしやすい場合は固定ロケーション、そうでなければフリーロケーションとするなど状況に応じた使い分けが重要です。

仕分け・ピッキング
仕分け・ピッキングは、出荷先ごとに荷物を振り分ける作業になります。ピッキングは大きく2種類あり、摘み取り方式(シングルピッキング)と種まき方式(トータルピッキング)に分かれます。
摘み取り方式は人が動いてモノを取っていく仕分け方式で、種まき方式は人がモノをもって配送先ごとのコンテナや台車にモノを配っていく方式となります。
仕分け先が多いのか、モノの種類が多いのかでどちらが生産性が高いのか、間違いが起きにくいかで選択をします。

流通加工
流通加工とは、物流において商品に付加価値をつけること全般を指します。
例えば物流センターでラベルを貼ることなども流通加工です。
丁合い:種類・順番・量をそろえる
員数:数を確認する
名寄せ:同じ出荷先の商品をまとめる
貼り:値札シールやバーコード、ラベルを貼る
プライスタグをつける:付け
など多様な作業があり、物流センターとしては単価を上げるためにも必要で、納品先店舗の作業費減にもつながる活動になります。

輸送と配送
商品を効率的に配送するための計画を立て、実行します。これには、輸送手段の選定、ルートの最適化、配送スケジュールの管理などが含まれます。

品質管理
商品が顧客に届くまでの品質を保持するための管理も行います。これには、保管環境の管理、商品の検品、損傷や不良品の管理などがあります。

返品処理
顧客からの返品に対応し、商品の検品、再梱包、在庫への戻し作業などを行います。返品処理の効率化は、顧客満足度を維持する上で重要です。

物流センターの役割の重要性

物流センターは、サプライチェーン内で商品を効率的に流通させる中心的な役割を担います。適切な在庫管理、迅速な注文処理、正確な情報提供により、企業は顧客の要求に応え、顧客満足度を高めることができます。また、物流センターの効率化は、コスト削減にも繋がり、企業の競争力の向上に寄与します。

物流センターの種類

物流センターは、その機能や役割によってさまざまな種類があります。
主な物流センターの種類とその特徴について説明します。

1. 配送センター(DC: Distribution Center)

  • 特徴: 商品を保管し、注文に応じて商品をピッキングし、小売店や最終消費者へ配送する役割を担います。効率的な在庫管理と迅速な配送が求められます。

  • 利点: 広範な地域に対する配送を効率化し、配送コストの削減に貢献します。

2. 共同配送センター

  • 特徴: 複数のメーカーや小売業者が共同で利用する配送センターです。商品を一箇所に集約し、複数の注文をまとめて配送します。

  • 利点: 配送効率の向上とコスト削減が可能です。特に、小規模事業者にとって効果的です。

3. フルフィルメントセンター

  • 特徴: オンラインショッピングの注文処理に特化したセンターです。在庫管理、注文処理、梱包、配送を一手に担います。

  • 利点: 高速な注文処理と迅速な配送が可能で、顧客満足度を高めます。

4. クロスドッキングセンター

  • 特徴: 在庫をほとんど保持せず、入荷した商品を直ちに出荷用に仕分ける方法です。配送効率化が主な目的です。

  • 利点: 在庫コストの削減と配送スピードの向上が可能です。

5. 保税物流センター

  • 特徴: 輸入された商品を関税の支払いを保留した状態で保管するセンターです。関税地域外として扱われます。

  • 利点: 関税支払いの遅延によるキャッシュフローの改善や、輸出入の手続きの簡素化が可能です。

6. 冷蔵・冷凍物流センター

  • 特徴: 食品や医薬品など、温度管理が必要な商品の保管、配送を行います。

  • 利点: 品質保持が重要な商品の安全な配送を実現します。

7. 自動化物流センター

  • 特徴: 在庫管理やピッキング作業に自動化技術を導入したセンターです。ロボティクスやAIなどの技術を利用します。

  • 利点: 作業の効率化と精度向上が可能で、人手不足の解消にも貢献します。

物流センターの種類は、扱う商品やビジネスモデルによって最適なものが異なります。それぞれの特徴を理解し、ビジネスのニーズに合わせて選択することが重要です。

物流センターの役割の重要性

物流センターは、サプライチェーン内で商品を効率的に流通させる中心的な役割を担います。適切な在庫管理、迅速な注文処理、正確な情報提供により、企業は顧客の要求に応え、顧客満足度を高めることができます。また、物流センターの効率化は、コスト削減にも繋がり、企業の競争力の向上に寄与します。

トレーサビリティ

サプライチェーンマネジメント(SCM)におけるトレーサビリティの実現は、製品や原材料の生産から消費者への配送に至るまでの全過程を透明化し、追跡可能にすることです。
これはできそうでできてない、非常に難しい課題になります。

なぜ難しいかというと、物流センターで入荷し・保管して、出荷する際に、例えば段ボールからバラにして出荷するとなると、そこでどの行先にどの段ボールからのものが行ったのかを記録・管理する必要がでるのですが、迅速に出荷作業を行わなければならない中で、それを高速に正確に行うことが困難であるからです。

よってトレーサビリティというのは言うは易し・行うは難しという概念ですが、トレーサビリティが実現すると品質管理、リコール時の迅速な対応、偽造品の防止などが可能になります。
トレーサビリティの実現には、情報技術の革新と低コスト化が必須になります。
テクノロジーとしては、RFID(無線周波数識別)技術やIoT(インターネット・オブ・シングス)の活用は、トレーサビリティを効率的に実現する上で重要な役割を果たします。

RFIDの活用

RFIDタグは、商品やパレットなどに貼り付けられ、無線信号を使って情報を読み取ることができる小型のチップです。RFIDタグからは、商品の製造日、ロット番号、出荷先などの情報が読み取れます。これにより、物理的な接触がなくても、商品の情報をリアルタイムで追跡・管理することが可能になります。

近年は通常のRFIDタグ(UHF帯)の場合1枚10円~30円以上、金属用タグなど特殊仕様であれば1枚100円以上が相場ということで、徐々に実用可能なところまで価格が減ってきています。
今後の人手不足・人件費高騰の中では、RFIDを導入することによる全体コスト削減の機会も増えてくるでしょう。

IoTの活用

IoTは、インターネットを介して製品や機器が相互に通信する技術です。
IoTデバイス(センサーやスマートデバイスなど)を活用することで、製品の位置情報、温度、湿度などの状態をリアルタイムに監視し、データをクラウドに送信することができます。
これにより、サプライチェーン全体の可視化と、条件を要する製品の品質維持が可能になります。

RFIDやIoTの活用によるトレーサビリティの実現は、サプライチェーンの効率化だけでなく、消費者の信頼獲得にも大きく貢献します。
企業はこれらの技術を適切に組み合わせ、サプライチェーン全体の透明性と効率を高めることが求められます。

最適拠点

サプライチェーンマネジメントの課題の1つとして、工場や物流センターがどの場所にあれば最適になるのか、というものがあります。
これは、物流センターの家賃・各経費と、入荷元からの配送費・出荷先への配送費などのコストを比べて、どこに拠点があるのがコスト最適になるのかを考えることになります。
その際にまずどういう種類の物流センターなのか(ディストリビューションセンターなのか、クロスドッキングセンターなのか)から、荷物の保管にかかる家賃・光熱費などのコストと、転送・配送コストを全部計算したうえで、出荷先に近い方ところが良いのか、原料に近いところが良いのか、もしくは土地代が低いところが良いのかを考える必要があります。
これは、サプライヤーとの関係もあり、サプライチェーン全体で重要な決定事項といえますので、SCMの重要課題となります。


以上、今回はSCMとロジスティクスということで、前編の物流センター編について書いていきました。後編では配送について書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?