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SCM基礎能力 まとめ

過去5回にわたって、サプライチェーンマネジメントを行うにあたっての、基礎能力について書いてきました。
私が考える5つの能力は、
①実務能力
②企画力
③戦略的思考力
④コミュニケーション力
⑤プロジェクト管理力

の5つです。
今回は、これらがどういうつながりなのか、どういう視点でこの5つに絞ったのかについて書いていきます。



SCMとは何をすることなのか?

まずは、サプライチェーンマネジメントとは何をすることなのかを考える必要があります。
そうしないと、SCMに必要な能力を考えることはできません。

私が考えるSCMでは、下記3点を行うことです。
①社外のサプライヤーも含めた全体最適活動である
②マネジメントである。利益を出すことを継続することが大事である
③仕組みづくりである。特にシステム構築が鍵である
この方向性で、何か目標を達成したり、改善したりと、サプライチェーンをよくしていく必要があります。

そしてそう考えると、

(1)いろいろな立場の人と渡り合う必要がある


  ⇒サプライチェーン各業務についての知識・経験が必要
  ⇒それがないと、会話が成り立たない。相手にしてもらえない。何をしたらよいかわからない

(2)サプライチェーン全体の最適化をする必要がある


  ⇒コミュニケーション能力が必要
  ⇒ある部門の不利益なことでも、全体のために飲んでもらうしかないこともある。

(3)お金がかかる=予算を取ってくる必要がある


 ⇒経営層へのアプローチが必要
 ⇒戦略的思考力で、中長期的な目線が必要

(4)複数人数を、中期的に動かす必要がある


 ⇒プロジェクト管理能力が必要

というような考えで、5つにまとめております。

SCMとは何をすることではないのか?

上記のように書くと、まるで何でもできるようなスーパーマンをイメージされる方もいるかもしれません。
ただ、何かができるということは、何かができないということです。
時間考えたら何かに時間を使うということは、別の何かには時間を使わないことでもあります。

サプライチェーンは複雑で、いろいろな部署が関連して構成されています。逆にやらないことをはっきりさせないと、サプライチェーンを強くすることは永久にできません。

そういう意味で、SCMとは何をすることではないか、についてもはっきりさせておく必要があります。

(1)個別の業務を行わない

 実務を果たす能力はある程度必要ですが、実務をやりだすと企画はやれません。
 実務の方は一線を引いてやらないようにする必要があります。
 
 また、適性として、実務の方が向いている、という方は無理に企画をやる必要はないと思います。
 実務も企画もどちらが重要ということはなく、単なる役割分担です。
 戦略と戦術の違いですが、戦術的に負けが込むと戦略が成り立ちませんので、結局戦術も戦略もどちらも大切だよねという感じです。

(2)深く入り込まない

SCMの最適化においては、全体をほどよくバランスよく見ることが重要です。
ですので、どこかの部門・部分に深く入っていくことは全体としてはマイナスだと考えています。
コミュニケーションにおいても同じで、どこかを贔屓したり、どこかを悪者にしたり、ということはしてはいけません。
SCMをやる人間がどこかの肩を持ち、どこかをそれより下に見てしまうと、絶対にその部分が弱くなります。
そこがだんだんとサプライチェーン全体のボトルネックになってしまうのです。

ですので、コミュニケーションとしては公平・公正を心掛ける必要があります。
ただ、これは結構ビジネスパーソンとしてはストレスが溜まることでもあります。
好き勝手文句を言える方が楽ですので、全体を見る立場としては面白くない側面も出てくるかと思います。
そこは割り切っていくしかないと思います。

また、多くの部門や多くの関係者とやり取りする必要がありますので、そこもまたコミュニケーションが面倒なところです。
そこも割り切っていくしかないと思います。

(3)短期間勝負ではない

SCMという面でやることで、短時間で効果が大きく出る、というような課題はなかなかないと思います。あったとしても、1個か2個出てくれば良い方で、それに味をしめてもっともっと改善をと意気込むと、ドツボにはまります。
もっと悪いのは、そのドツボにはまって、数字が悪化してしまったことに対して、これだけ改善できますという案をだしてごまかしだすことです。
こういうことを一般的にマッチポンプ(自分でマッチで火をつけて、自分でポンプで消化する)と言いますが、SCMではよくあることかと思います。
別の言い方としては、自分で掘った穴を、自分でただ埋めてるだけ。

SCMは短期勝負ではなく、中長期の根本改善が主眼の活動かと思います。
なぜなら、サプライヤーを巻き込んで行うことがSCMだからです。
社内だけで済むのであれば、それはロジスティクスという領域です。
ロジスティクスであれば短期間で済む改善もあると思いますが、SCMというからにはある程度広範囲な活動にならないといけません。

そして、短期間で終わらない、ということは、またまたこれはやる側としてはストレスが溜まります。
区切りがない、どこを終わりとしてよいのかわからない、、、そういうことも多いと思います。
そういったことに適性がある人、ない人それぞれいると思いますので、適性がある人がやるべきかなと思います。

(4)費用対効果から逃げられない

サプライチェーンを最適化しようとすると、少なからずコストが発生します。
ですので、それに見合うリターンを確実に獲得していくことが必要になってきます。
SCMを行う人は、そこの利益責任、ROIに対する責任から逃れられません。

サプライチェーンのどこかの人の失敗であっても、サプライチェーン全体での失敗ととらえる必要が出てきます。
これも結構ストレスがある部分だと思います。


ということで、なんでもやるようで、実のところ何もやらないのがサプライチェーンマネジメントであるとも言えます。
誰かを動かすことが一番重要な役割という感じです。
そういう意味では中心にいる必要がありますが、プロジェクトではやはりリーダとしては経営層に担っていただいた方が命令系統がスムーズになるので、事務局側に回ることが重要です。
不必要に敵を作らないようにする必要もあるので、そういう意味でも前面に
出すぎるのもよくないと思います。

まとめ

ということで、サプライチェーンマネジメントに必要な能力として
①実務能力
②企画力
③戦略的思考力
④コミュニケーション力
⑤プロジェクト管理力
についてどういう目線で5つ挙げたのかについて書いてきました。

サプライチェーンは現在複雑なグローバルの役割分担の中で構成されており、物理的にも責任分担的にも広い範囲についてマネジメントをする必要があります。
それを行うためには、各現場の掌握力と、全体最適化を進めるセンスと、経営陣と中長期的課題を取り組むこと、全体まとめあげるコミュニケーション力と、実際に改善を進めていくための能力が必要だということです。

例えば会計やITのスキルも必要でしょうが、上記の方がより本質の能力なのではないかと思います。
それぞれ一朝一夕で身につくものでもないですし、研修や読書の知識だけで獲得できるものでもないと思います。
能力向上を意識して、理論と実践、反省と改善を繰り返していくことが、振り返って最短のやり方ではないでしょうか。


今回はSCMに必要な基礎能力のまとめをおこないました。
これからもSCMに関する記事を書いていきますので、よろしくお願いいたします。





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