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第1回 建設DX展(12月6日~8日/東京ビッグサイト)についてレポートします!!

【はじめに】

今回は、2021年12月6日~8日に開催された「建設DX展」についてレポートします。

本展示会は、RX Japan株式会社(旧社名:リード エグジビション ジャパン株式会社)によって東京ビッグサイトで開催された「ジャパンビルド-建築の先端技術展-」という大規模展示会中の一企画であり、特に建設DXにフォーカスしたものです。

建設業に携わる様々なプレーヤーが最新の製品・技術の導入検討を目的として多数来場し、ビジネスの拡大や顧客開拓を目指す熱気に満ちたコミュニティになっており、過去最多となる430社が出展、3日間合計の来場者数は31,253名というスケールでした。

業界関係者にとって大注目のイベントとなりますので、是非ご一読いただければと思います。

ジャパンビルド-建築の先端技術展- とは
住宅、ビル、商業・公共施設など、あらゆる建築物を対象とした建築総合展です。建材、住宅設備、ビル管理・運用システム、リノベーション技術、AI(人工知能)・IoT関連技術、不動産テック、建設DXなどが世界中から出展し、建築業界の開発・設計・工事・管理・運用分野の専門家が商談を目的に来場します。
[公式サイトより引用:https://www.japan-build.jp/ja-jp/about/outline.html]

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【展示会の模様について】

会場内では、「スマートビルディングEXPO」、「不動産テックEXPO」、「施設リノベーションEXPO」、「建設DX展」の区画に分かれて様々なプロダクトやサービスが展示されていましたが、その中から特に興味深かった展示を以下でご紹介します。

● 株式会社アンドパッド/クラウド型建設プロジェクト管理アプリ

まずはアンドパッド社の出展ブースについてご紹介します。同社では、現場の効率化から経営改善までを一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理アプリANDPAD施工管理、電子署名やタイムスタンプといった機能を備え建設業法・電子帳簿保存法に対応した電子受発注システムANDPAD受発注などの製品を出展していました。

印象に残ったものとして「今後はクラウド管理というものが主流になっていくのか?」という質問があったそうですが、これはオンプレミス環境でのデータ管理を続けている企業ならではの疑問であり、メンテナンスコストや被災時のリスクについて具体的にイメージできていない企業がまだまだ多いという業界実態を示しているように思われます。とはいえ、一方でクラウドシステムを利用した情報の一元管理ということについての意識自体は徐々に高まってきているとも言えそうです。

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● 株式会社ニコン・トリンブル×Boston Dynamics/ Spot + Trimble X7

続いて、ニコン・トリンブル社の「Spot + Trimble X7」をご紹介します。

こちらは、米国のBoston Dynamics Inc.が開発した自律四足歩行ロボット「Spot」と、ニコン・トリンブル社が提供する3Dレーザースキャナー「Trimble X7」とのコラボレーション製品であり、犬に似た特徴的な外観からかSNS上でも多くの感想が上がっていた展示です。

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足場環境が悪い建設現場でも四足歩行で活動できるのが強みで、既に測量機器や360度カメラを搭載して現場管理を行う実証実験も始まっています。

直近のプレスリリースによると、デンバー国際空港における現況計測のために利用されているそうです。そこでは、人間が作業実施する場合にはスキャナ機器や三脚を各計測ポイントに運んだ上でスキャナ完了まで待機しなければならず数日から数週間を要する作業について、計測ポイントやルートを予め登録したSpot + Trimble X7にこれを代行させることで効率化する試みが行われています。

様々な分野で活用が期待できる技術だと思われるので、今後も要注目です。


● 倉敷紡績株式会社(クラボウ)×株式会社竹中工務店/SPIN FOLLY

クラボウ社は、セメント系材料を用いた小型~中型の立体造形物の受注生産を行っている会社で、生産性向上だけでなく意匠性ニーズにも対応したサービスを提供しています。

同社は竹中工務店社とともに建設用3Dプリンティング事業における共同研究を進めており、3Dプリンターを用いたデザイン表現の可能性を追求するという目的のもと、共同製作した大型オブジェを展示するに至ったそうです。

下掲リンク先におけるクラボウ社のコメントを引用すると、「最新のデジタル技術により形状を自動生成することで、糸を紡ぐ(SPIN)しなやかで繊細な表情を表現するとともに、様々な創造を掻き立てる装飾用の造形物(FOLLY)として最新の技術と人の知恵が絡まり合いそこから紡ぎ出される造形美を追求したもの」とのことですが、こうした複雑な形状をした立体表現が3Dプリンタという機械によって出力されているという事実には大きな驚きと感動を覚えます。

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● 株式会社安藤・間(安藤ハザマ)× 株式会社ライフビジネスウェザー/気象×データサイエンス

安藤ハザマ社とライフビジネスウェザー社が共同開発した、「天気予報で施工管理をかえる」、気象予測を建設現場の管理に援用するデータサービスをご紹介します。

こちらは、独自の高解像度局地気象予測技術「KIYOMASA」を用いて、1km四方範囲の天気予報を最短5分間隔で更新し、ゲリラ豪雨や雷などの突発的な天気の変化を予測することが可能なサービスです。1mm単位の降水量予測や高度別の風速予測など20項目の気象情報を提供し、また現場の作業中止基準に応じたアラートメールを配信することで、天候の急変による工事の遅延や重大事故を回避することができます。

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上記の他にも重機作業などから生じる粉塵の飛散方向を予測し、散水計画や作業変更を行えるようにする「TOBASAN」というサービスも提供しており、今後は気象情報をもとに施工計画や資材調達の方法を調整することなども可能となるかもしれません。

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[公式資料より引用:https://www.ad-hzm.co.jp/assets/pdf/event/20211206-08_02.pdf]


● 株式会社ポケット・クエリーズ/iVoRi360

最後に、株式会社ポケット・クエリーズが展開している、VRを活用した施工管理サービス「iVoRi360(アイヴォリィ サンロクマル)」をご紹介します。同社は、もともとVR/AR(※1)や三次元CGを使用したソフトウェアやゲームの開発に強みを持つ会社です。

iVoRi360は、現場に設置した360度カメラによる現場の全天球画像を、VRゴーグルやタブレット端末を通して遠隔共有できるツールです。詳細なイメージについては下掲画像や公式説明サイトの動画をご覧いただくのがわかりやすいと思いますが、VRゴーグルに投影されるヘッドマウントディスプレイとコントローラを使って現場臨場を行い、遠隔地にいる操作者が3次元的に情報を得られる点が画期的です。ゲーム開発の強みを持つ会社ならではの優れた操作性やユーザーインターフェースに加え、VRゴーグルによって遠隔地の操作者が360度の視野角を確保することができるという特徴が相まって、ストレスレスな遠隔臨場を実現することができます。

同社では他にも、現場作業時にMR(※2)を活用してヘッドマウントディスプレイ上に手順書や図面・動画などを表示する現場作業支援サービスも展開しており、こちらも現場の職人がゲーム感覚の操作性で簡単に使用できる技術として期待が高まっています。

(※1)VR/AR:VR(Virtual Reality 仮想現実)は、ユーザーの視界を仮想的な世界に置き換える技術。対してAR(Augmented Reality 拡張現実)は、現実の環境にデジタル情報を表示・拡張する技術。

(※2)MR:Mixed Reality(複合現実)は、現実環境の形状(物体の形や位置)などをヘットマウントディスプレイ端末が把握し、それにデジタル情報を重ね合わせる技術。

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[公式資料より引用:http://quantize-world.com/projects/ivori360enkaku/]

【終わりに】

以上、第1回「建設DX展」のレポートいかがだったでしょうか。

今回は、コロナ禍の影響で展示会から足が遠のいていた地方からの来場者も多く、改めて建設会社・工務店といった現場で働く方々から聞く生の声の大切さを実感したところですが、そうした声の中で気づいたことがあります。

それは、「建設DX」や「i-Construction」という言葉の認知度は着実に高まってきた一方、DX化の実現度について見ると会社ごとにバラつきが出てきているのではないかということです。特にDX化のニーズが高いであろう地方の建設会社・工務店は、コロナ禍の2年間、DX技術に触れる機会があまり得られなかったという事情も背景にありそうです。現在では、少しずつこうした機会に参加することも可能になってきていますので、これからは様々な分野でのDX化を実現されることでしょう。

さて、2023年も建設DXの動きは今年以上に加速していくと予想されます。そうした流れの中、様々なニーズに対応し、業界全体の機運を盛り上げていくためにも、次回の建設DX展で今回以上に革新的な技術・サービスに出会えることを期待したいと思います。