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建設DX研究所 第5回定例部会を開催しました!

みなさん、こんにちは。株式会社アンドパッドの平牧です。
本年1月24日に、建設テック事業者を中心とした6社により任意団体化した「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインで定例部会を実施しています。
先日5月25日に、第5回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。
第5回の定例部会のテーマは、「性能基準の標準化・国際化」です。株式会社Liberawareの林昂平さんに登壇いただきました。
同社は、天井裏や地下ピットなどの狭小空間を安定して飛行することのできる小型産業用ドローンや屋内空間を⾃動⾶⾏することのできるドローンの技術開発を⾏っています。また、そのドローンが撮影した“狭い・暗い・汚い”環境の3次元化やデータ解析の事業も行っていらっしゃいます。

全体の機体設計だけでなく、フライトコントローラー、モーター、プロペラ、バッテリーまで⾃社で開発を⾏っており、企業ごとの課題に応じたカスタマイズにも柔軟に対応できることが強みです。 
また、産業界の⽣産性向上や安全性向上に貢献したいという理念から、建設業や鉄道業、製造業の現場に入り込み、⼀つひとつの技術や構造などについて細部にわたり検証を⾏い、産業⽤途に耐え得るものづくりを実現しています。
 
今回は、ドローン法規制への活動や経済産業省主催のReAMoプロジェクトへの参画等、同社の目指す性能基準の標準化・国際化に向けた道のりをお話しいただきましたので、平牧がレポートしていきます。

性能基準の標準化・国際化

ドローン市場におけるLWの位置づけ

ドローン市場は屋外(GPS環境)か屋内(非GPS環境)か、ドローンのサイズが大きいか小さいかの2つの軸で分類ができ、その中でもLiberaware社は、ブルーオーシャンである屋内かつ小型分野に着目し事業拡大を計画されました。

ドローンに関して、“航空法”が重要な法規制の1つとなりますが、同社のような屋内ドローンにとっては、屋外/屋内の定義というものが重要です。
その場所が屋内と定義されれば、航空法の規制が適用外となり、航空法上必要とされる許可なくドローンを自由に飛行させることができます。
たとえば、四方をフェンスで囲まれている空間であれば屋内とみなされますが、屋根が空いている空間、屋根があっても側面が外部とつながっている空間などは、屋外とみなされることが多い等、一見屋内に思える環境でも屋外と定義される可能性がありました。曖昧な空間をしっかり屋内と定義づけることで、屋内ドローンが活躍できるフィールドをいかに広げることができるのかが焦点となっていました。

同社は従来ドローンが活用されていた現場で引き続きドローンが活用できるように、屋内の定義に関して、航空法に関する政策提言の活動に着手しました。
屋内ドローンの使用実績を示したり、有識者からアドバイスをもらったりしながら、屋内定義の明記を働きかけ、その結果、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課長が発布する「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」の「9.屋内での無人航空機の飛行」にて、従来ドローンが利用されていた屋内のユースケースでも引き続き使用を可能とする下記の記載を盛り込むことに成功されました。

ReAMoプロジェクトへの参画

同社では前段のようにまずは自社の展開フィールドの確立を模索しましたが、その次なるステップとして標準化にも取り組まれています。
新しい技術や製品において、その技術や製品を速やかに普及させるために重要でありかつ事業戦略を練るために不可欠なのが標準化だからです。

標準化とは製品・サービスの品質の担保や安全性の確保のために一定のメンバーの合意を得て規格(技術仕様書や試験・評価方法等)を制定し、当該規格を普及させる行為ともいえます。よってこの標準化の取り組みの中で標準として制定される規格をいち早く自社製品に落とし込むことができれば自社の飛躍的な成長につながります。

同社が取り組む国内での標準化の取り組みとして、ReAMoプロジェクトが紹介されました。
ReAMoとは、ドローン・空飛ぶクルマの性能評価手法の開発及びドローン・空飛ぶクルマ・既存航空機の低高度での空域共有における統合的な運航管理技術の開発など、次世代空モビリティの実現に必要な技術開発を行うことで省エネルギー化と安全で効率的な空の移動の実現を目的とするプロジェクトです。
 
経済産業省や、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の管轄の下、ReAMoプロジェクト研究開発項目① 「性能評価手法の開発」(1)ドローンの性能評価手法の開発 制約環境下におけるドローンの性能評価法の研究開発へ、同社は唯一の民間企業として参画されました。

インフラ点検・災害対応などの現場運用にあたっては、障害物が多い屋内環境など複雑な状況下での性能評価手法が必要です。
この研究では、屋内狭隘空間など制約がある環境で、誰がドローンを飛ばし、どのような場所で飛ばすのか、また、どのようなドローンであれば失敗しないのか等の要素定義、性能・機能・環境・対応・安全・認証の観点から客観性再現性のある基準の策定等、性能評価手法を確立することを目的としています。

同社は参画団体が基準の策定、性能評価手法の開発を行う際の機体を提供すると同時に、同社がこれまでに経験してきた事例を共有する立ち位置から参画を果たされました。

国際標準化に向けて

グローバル化の進展、第4次産業革命の深化に伴い、標準を戦略的に活用し、グローバル市場の拡大を図り、国際的な産業競争に勝ち抜いていくことの重要性が増大しているとのこと。

自国の標準が国際標準化(ISO(国際標準化機構)によって採用)されれば、自国製品のグローバルな活躍や世界でのシェア拡大に繋がります。
反対に言えば、標準化で遅れをとることによって、その規格への対応コスト増や国際競争において遅れをとり、グローバル市場における市場機会の逸失だけでなく国内市場においても逸失は免れません。

屋内ドローンに関する国際標準に着目すると、例えばドローンの操縦訓練の方法に関してはISOで基準があるものの、機体そのものの性能・性質に関しては基準がないのが現状とのこと。
同社では、機体に関して、ISOだけでなく、ASTM規格、IEC規格等、幅広く情報収集しながら、可能性を探っているそうです。

省庁や関係機関とも連携しながらの長い道のりになる印象を受けましたが、屋内ドローン業界を牽引するスタートアップとして、ますますの活躍に期待したいと思います。

建設DX研究所 事務局より

 今回、参加企業各社においても、今後グローバル展開していくにあたり勉強になった部分も多く、建設DX研究所としても様々なステークホルダーの方々とより一層の交流・連携をしていきたいと思っております。ゆくゆくは現在の定例部会を細分化させ、特定テーマに関する部会や、海外展開に関する部会などより具体の議論ができる場にしていければとも考えています。
定例部会の投稿について、なかなか全ての内容をnoteで公開することが難しいのですが、こうした部会への参加を含め、建設DX研究所の活動にご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを改めて御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。