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HOMMA・本間毅氏インタビュー(後編)~新しいスマートホームのあり方とは~

【はじめに】

前回に引き続き、HOMMA Group, Inc. Founder & CEO 本間 毅氏のインタビュー記事をお届けします。今回はスマートホームで蓄積されたデータの利活用やアメリカと日本の住宅業界の違い、今後の日本におけるビジネス展望など、幅広くお伺いしています。

■プロフィール

本間 毅
HOMMA, Inc. Founder & CEO
1974年生まれ。中央大学在学中に起業。1997年にWebインテグレーションを行うイエルネット設立。ピーアイエム株式会社(後にヤフージャパンに売却)の設立にも関わる。2003年ソニー株式会社入社。ネット系事業戦略部門、リテール系新規事業開発等を経て、2008年5月よりアメリカ西海岸に赴任。電子書籍事業の事業戦略に従事。2012年2月楽天株式会社執行役員就任。退任後、シリコンバレーにHOMMA, Inc.創業。

大江 太人
Fortec Architect株式会社代表
東京大学工学部建築学科において建築家・隈研吾氏に師事した後、株式会社竹中工務店、株式会社プランテック総合計画事務所(設計事務所)・プランテックファシリティーズ(施工会社)取締役、株式会社プランテックアソシエイツ取締役副社長を経て、Fortec Architect株式会社を創業。ハーバードビジネススクールMBA修了。一級建築士。

【自社プロジェクトでスマートホームの価値を証明】

―― スマートホームからさまざまなデータも収集可能かと思いますが、今後活用していくアイデアはありますか?

本間:セキュリティの観点とクラウドのデータ容量の関係上、今は積極的にデータログの保管は行っていないませんが、データが収集できることは分かっています。安全で快適なライフスタイルの実現に、データが活用できる可能性も感じています。

まず用途で考えられることと言えば、ホームセキュリティです。HOMMAのスマートホームは人の動きをセンサーで感知しているので、留守宅への侵入もすぐに検知が可能です。

また、住宅にいる時間帯や部屋の使用率などから生活パターンを分析し、その人のライフスタイルを割り出すこともできるでしょう。例えば、ロボット掃除機とAPIで連携し、その人が外出したら、掃除をスタートするといったことも可能かもしれません。

スマートロックもオンラインで管理し、アプリの暗証番号のみで解錠できる仕様になっているので、上手く活用すれば外部との接点を安全にコントロールできます。セキュリティとの兼ね合いはありますが、外出中にハウスキーピングをお願いするようなことも実現できると思います。

―― ニューノーマルになり、スマートホームのニーズも一層高まっていそうです。

本間:新型コロナウィルスの影響で外出が制限されたことによって、アメリカでも多くの人が住宅に目を向けるようになりました。ホームセンターやIKEAが連日賑わうようになり、家の中に、“学校”や“オフィス”、“レストラン”が一気に誕生していきました。家の中を快適にしてQOLを高める流れは今も続いていますが、そこにウッドショックや住宅の供給不足が重なっている状況です。今後もマーケットは変動していくと思いますが、私たちは、スマートハウスを含めた住宅性能の向上やエネルギーの省力化で価値を創造し、住宅業界に貢献していきたいと考えています。

二つ目のプロジェクトで建てた新築住宅「HOMMA ONE」は、6日で買い手がつき、周辺エリアにおいて、過去14年間で最も高い価格で販売することができました。三つ目のプロジェクトである集合住宅の「HOMMA HAUS Mount Tabor」は、周辺相場より11%高い賃料で賃貸に出しても、借り手がついています。

価格を高く設定していると言っても、スマートハウス化のためのコストは、ワイヤレスに対応したプロダクトや設備の導入にかかる差額分だけなので、技術ライセンス料を除くと2%程度しか上がりません。費用対効果やバリューを自社プロジェクトで証明し、今後は、私たちのノウハウとテクノロジーを外部デベロッパーに展開していくライセンスビジネスに挑戦していく予定です。

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【テクノロジーの導入に消極的な姿勢は、日米の住宅業界に共通した課題】

――アメリカと日本の住宅業界にはどんな差がありますか。DXは進んでいるのでしょうか?

本間:日本の住宅設備は、工業化・モジュール化されていて、ユニットバスやキッチンを設置するだけで完了します。アメリカは、カスタムメイドのキッチンをその場で組み上げていったり、お風呂のタイルをコツコツ貼り付けたりと、一から現場で作り上げていくようなものが一般的で、課題は多いと感じています。

マンハッタンの60階建て高層ビルなど、大規模なプロジェクトではBIMも活用されていますが、一般的な住宅ではまだデジタル化も進んでいません。設計と施工を一気通貫で管理するツールもなく、デベロッパーとゼネコンそれぞれでプロジェクトマネジメントを行っている状況です。すべてのデータを一元管理するのが理想ですが、まだそういったツールは登場していません。

これは、日米の住宅業界に共通するかもしれませんが、デジタルやスマートホームへの理解がまだ進んでいなかったり、今まで扱ったことのない新しいものを敬遠する傾向が強いと感じています。積極的にテクノロジーを取り入れていくような業界であれば、私たちがデベロッパーとしてのポジションを確立する必要もなかったと思います。

私たちは、BIMも活用しているので、「デジタル活用やスマートホーム技術を理解できるか」という視点も、ゼネコンを選ぶポイントの一つになっています。スマートホーム化には、通常の建築と比べて手間がかかりますし、正しく指示が伝わるか、現場が管理されているかが重要になります。私たちのノウハウを言語化したマニュアルや一定の教育、エンドツーエンドでのサポートも必要です。そのため、当社の設計メンバーとテクノロジーのチームは現場に何回も足を運んだり、オンラインミーティングを開催したりしています。

ただ、私たちは自分たちで家を建てているので、建築や設計のプロセスを理解した上でのサポートができます。これは、他のIoTスタートアップにはできない私たちの強みですし、今後のライセンスビジネスにも大いに役立つと考えています。

【アメリカで作り込んだテクノロジーを日本でも展開したい】

―― 今後日本ではどのようにビジネスを展開していくお考えですか?

本間:日本には、質の高い住宅を建てられるハウスビルダーや工務店がたくさんあります。日本向けに一定程度ローカライズすれば、当社のノウハウは日本でも十分活用できるので、アメリカでUIやUXを作り込み、スマートホームのテクノロジーを日本でも提供していきたいと考えています。

ただ、スマートホームに価値を感じていただき、その分の費用を負担できるプロジェクトでないと、提供は難しいかもしれません。生活感を大きく変える機能なので、賃貸物件でも、販売物件でも、ハイエンド層に向けたこだわりのある住宅づくりからスタートするべきだと考えています。照明のコントロールやスマートロックは、リゾートホテルでも応用できると感じています。

既存の住宅をリモデルするとなると、配線やライトの埋め込みをすべてやり直す必要があるので、新築やスケルトンリフォームといった案件で、私たちの技術を提供していくのが理想的です。どの程度ニーズがあるのかは未知数ですが、数十戸規模の宅地開発や集合住宅であれば、ぜひ設計段階からご相談いただきたいです。デジタルへの関心が強く、先進的なデザインにもチャレンジしているような、意思を持ったハウスビルダーとのプロジェクトにもポテンシャルを感じています。スマートホームのビルトインを標準で提案してくれるようになったら嬉しいですね。

―― 最後にメッセージをお願いします。

本間:住宅業界は、イノベーティブなテクノロジーの導入に取り組んでいくスピードが遅いと感じています。テクノロジーがさらに成熟すれば、家での体験価値も一層向上していくと予想されるので、住宅業界のデジタル化やスマート化は、積極的に取り組むべき課題だと思います。ただ、テクノロジーを活用できるかどうかは、業界で働く人たちの意識や行動次第です。私たちも積極的に働きかけを行っていきますし、サポートもしていきますので、ぜひ一緒に住宅業界を盛り上げていってほしいです。

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【おわりに】

後編では、スマートホームで蓄積されたデータの利活用やアメリカと日本の住宅業界の違い、今後の日本におけるビジネス展望というテーマでお話をうかがいました。

スマートホームで蓄積されたデータを活用することで、より豊かなライフスタイルを送れるイメージが湧き、大変興味深かったです。
今後は日本でもビジネスを展開する予定があるとのことなので、HOMMAの手掛ける最新のスマートホームに触れられる機会を楽しみに待ちたいと思います!!

本研究所では、今後も建設DXに関わる様々なテーマを取り上げてご紹介しますので、引き続きよろしくお願いします!