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【新しい生活様式】

この記事は、私が2020年の5月にFacebookに投稿した文章です。

 生活様式というのは, 決して他人から人工的に与えられるものではなく, 我々が実生活を通じて引き受けるべきものである.

 ヴィトゲンシュタインは「ライオンが話したとしても, 我々はライオンを理解できないであろう」と記している. それはまさに, ライオンと我々とでは生活様式が全く異なるからである.

言語というものは, その生活様式を反映しながら発達してきた. だからこそ, 「ある言語を想像することは, ある生活の形式を想像することである」.

例えば, エスペラント語.
ご存知の通り, エスペラント語は, 母語の異なる人々のコミュニケーションを容易にするために世界共通言語として"人工的"に作られた.
そのエスペラント語を, ヴィトゲンシュタインは, 「吐き気をもよおす」とまで言い放ち, 忌み嫌った.
何の連想も呼び起こさないくせに, 「言語」のような顔をしている, と.
歴史や生活, 文化などの地に足がついてない人工言語では, 人々の生活というのは, 全く想像できないのである.

私は, 決してエスペラント語を批判したいわけではない.
言語が持つ, 生活様式を想像させる力を無視し, 新たな生活様式を強制しようと試みることが愚かだと言いたいのだ.

私は, 「日本語を母語とする人間」であるが, それは日本語が母語であるという意味と同時に, 日本語に裏打ちされた, 日本の生活文化を共有する人間であるという意味も持っている.

それを, 第三者によって, どのような根拠を示されたところで, 今まで引き受けてきた生活様式以外を押しつけられても納得はいくまい.

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