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健診についての考察

健診の中でも、企業などに勤めている方の一般健康診断や、扶養者の方の特定健康診査など、大部分の健診に含まれる項目を中心に考えてみました。


1.健診の判定について

健診における判定はアルファベットの部分を特に良くご覧になると思います。Aが良いのはわかるけれど、それ以外はどうかというと曖昧な部分が大きいのではないでしょうか。おおまかに次のように区分されます。

A:基準範囲内
B:御自身で気をつけるべき軽度の異常
C:医療機関の受診を推奨
D:すみやかな医療機関受診を推奨
E:すでにい医療機関で治療もしくは経過観察中

C判定は病気になってくるかもしれない状態もしくは一時的な病的な状態かもしれないという範囲です。D判定はほぼ何かしらの病気が疑われ、治療やより詳しい検査をすぐにする必要がある状態になります。
健診の役割は、あくまで病気の可能性や、適切に対処することでより健康になれる可能性を見出すことです。とはいえ、企業などから業務に関連して促される以外は、健診結果は強制力のあるものではありません。主体的に健診の判定を使い現状を正確に把握し、希望される方向に医療を利用することが健診のうまい使い方ではないかと思います。

2.健診で異常がみられる頻度について

健診でC判定以上:受診が勧められる水準、D判定:異常がはっきりしており、治療もしくは精密検査が必要、と判定される方は健診を受けた方の中で以下の割合と報告されています。C以上にはE判定:現在治療中、の方も含みます。全体の判定は健診項目の中で最も高い判定(Dが最大)となったものが採用されます。
日本健診財団 2020年度 集計・統計

  • 血圧 C以上 19.2%、D 4.8%

  • 脂質 C以上 43.4%、D 5.4%

  • 血糖値 C以上 8.3%、D 1.6%

  • 尿酸値 C以上 19.2%、D 1.1%

  • 貧血 C以上 11.0%、D 0.8%

  • 肝機能 C以上 20.4%、D 2.5%

  • 腎機能 C以上 16.2%、D 0.8%

健診を受ける方という前提であるため、国民全体を表すものではもちろんありませんが、健診後に医療機関受診を勧められる方の割合が非常に多いことがわかります。

3.そもそも健診の受診が寿命延長につながるのか

早期に治療できるような異常を発見する目的の健診ですが、大きな規模の研究をまとめた報告では残念ながら、健診を受けることにより、全体の死亡率の低下や、癌による死亡率、心臓血管疾患による死亡率に対してほとんど影響が無いという結論でした(Cochrane Library. https://doi.org/10.1002/14651858.CD009009.pub3)。では健診を受けることが、健康寿命には良い影響がないかと思うのですが、現状はまだ十分な証拠はなく、健康寿命を延ばすための根拠を作っていく一環として、現在進行系で検討されているところです(https://www.japanhealth.jp/information/press/6.html)。

4.では健診を受ける意味はないのか

上記の大規模な検討には、いろいろなツッコミどころがあるのも事実だと思います。例えば、そもそも国間で健診・医療のシステムが相当に違うことや、健診で生活習慣の改善を促されたり、医療機関受診を勧められた方の大部分がそれに従わないことなどです。なので、結果は結果として見つつも、絶対のものとは捉えない方が良いと思います。
少なくとも健診結果は、普段は得られない、その方の健康状態の客観的な評価です。また、健診には、移動時間や検査時間を含めるとかなりの時間を消費します。また、健診前の食事不可の時間のストレスや、バリウム検査後の便秘といった健診に伴う身体的・精神的な負担もあります。それだけの負担と引き換えに得られた御自身の解析表を有効な道具として使わない手は無いのではないでしょうか。感情的に結果を見るよりは、次に何をするかの目安に使うのです。
多くの方が、御自身の健康のためになることには興味があるはずです。お食事の内容に気をつけたり、健康食品やサプリメントで工夫されるように、より快適な身体の状態を手に入れるための努力の方向性を決めるために、健診の結果を使っていくのが良いのではないかと思います。

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