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今通常国会で行われた憲法改正議論の内容は?~何が、どこまで進んだのか?~

本気で憲法改正を実現しようと思うなら、「憲法改正が必要だ」という主張のみではなく、まず現状の議論を正確に認識することが大切だと考えています。

今国会では、パンデミックや大規模災害等の緊急事態において国会機能を維持する方法として、憲法改正が必要となる国会議員の任期延長と、現行の日本国憲法に規定されている参議院の緊急集会のあり方についての議論がなされました。

このことを聞いて、特に国防強化を望む人にとっては、退屈に思うかもしれません。
しかし、見方を変えると、それだけ具体的な議論ができている、ともいえるのではないでしょうか。
緊急事態に関する条文づくりに繋がる論点の整理と各党の一致点が見出されていることは、国会発議に向けた条文策定に進んでいるということです。

日本国憲法では第45条、第46条に衆議院と参議院の国会議員の任期がそれぞれ4年、6年と定められています。この任期が満了したときは必ず選挙を行わなければなりません。

例えば、大規模な自然災害が生じ選挙自体を行うことが困難であったとしても、現行憲法上はその人気を延長することができないようになっています。そのような場合に対処するための方法としては、憲法を改正して国会議員の任期延長を行うことが考えられます。

一方で、参議院の緊急集会は日本国憲法の第54条に規定され、衆議院が解散されているときに内閣は参議院の緊急集会を求めることができるとされています。衆議院の解散から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集することが定められていることから、衆議院議員不在の70日間が、参議院議員の緊急集会を開く期間の限界と解釈されます。

しかし、それ以上の期間が延びることは日本国憲法では想定されていません。

この課題について、自民・公明・維新・国民・無所属有志の5会派は参議院の緊急集会は一時的、限定的、暫定的制度であり、国会は二院制が原則であるため、その例外となる参議院の緊急集会では緊急事態の対応はできないとし、国会議員の任期延長が必要と主張しています。

一方で、立憲民主党や共産党は、議員任期の延長は国会議員を固定化し、内閣の独裁を生む恐れがあることや、権力の濫用と恣意的な政権の延命につながると主張しています。

立憲民主党と共産党の主張に対して、衆議院憲法審査会の参考人質疑の中で、京都大学名誉教授の大石眞氏は、
「一つのことを取れば全部権限の濫用につながるとかいうのではなくて、総合的に、どう進めればうまく国政の円滑な運用をできるだけ図れるかという視点がやはり基本だと思います」
と述べ、議員任期を延長したからと言って権力の濫用に繋がるわけではないと指摘しました。

憲法改正について、岸田首相は自身の総裁任期中(令和6年9月)に憲法改正を成し遂げるという発言していますが、その議論に勢いをつけているのは、与党の自民・公明よりも、維新・国民・有志の会という野党の存在です。

維新・国民・有志の会は今年の3月30日に「緊急事態条項の創設に関する3党は合意」をなし、議員任期延長に関する条文案を提示しました。

さらに、そこから実務者協議を積み重ね6月19日、国会機能の維持を盛り込んだ緊急事態条項の条文案を発表しました。

つまり、2度、憲法改正条文案を発表しているのです。

憲法BlueWaveは、このような野党の動きには全面的に賛同しており、ぜひ後押ししていきたいと考えています。

憲法改正を実現するためには、秋の臨時国会で条文づくりに取り掛からなければなりません。各党の合意形成に向け、自民党にはぜひリーダーシップを発揮し、議論の成熟に向けて力を尽くしてほしいと切に思います。

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