豊胸などで生じる悪性リンパ腫

本記事は、英国におけるBIA-ALCLのガイドライン(British Journal of Haematology, 2021,192,444–458)をもとに作成しています。

豊胸手術で悪性リンパ腫になる?

乳房の中にインプラントを埋め込む手術は豊胸や乳癌術後の乳房再建などで以前から行われていましたが、10年くらい経過して未分化大細胞リンパ腫(ALCL)という悪性リンパ腫を発症する例が多数報告され、乳房インプラント関連ALCL(BIA-ALCL)という概念が確立されました。

たまたまなんじゃないか?というのはもっともな意見ですが、ALCL自体リンパ腫の中でも比較的レアですし、乳房原発ALCLとなると私見ですが学会発表レベルの珍しさになってきます。さらに疫学的な知見や、後述しますがインプラント抜去だけで改善することから、インプラントとALCLの関連は確立されているといってよいかと思います。

その後の研究により「表面がざらざらした」インプラントを使っている症例に限って起きることが分かったため、それは現在使われていません。しかし、インプラントを入れた方全員に生じるわけではなく、大体300~3万例に1例くらいの確率ということになっているので、症状のない方ではインプラント抜去は不要とされています。

逆にいうと、現在そのインプラントが入っている方は注意、ということです。

出うる症状や検査

症状としては、乳房の比較的急速な腫大に加え、その部位が赤くなったり、滲出液が出たりします。悪性リンパ腫に特徴的とされるB症状(発熱、寝汗、体重減少)が出ることもあります。

乳房が腫れてくる疾患はリンパ腫だけではなく、乳癌や良性腫瘍の可能性もあるため、生検により病理診断をします。

リンパ腫の診断がついたら、病変の広がりを知るため、ステージング(ステージ1~4のうち、どのステージかを診断する。ステージ1は乳房だけ、ステージ4は全身に広がっている、という感じです)をします。CT、MRI、PETなど色々な画像検査を行い、総合的に判断します。

我々が気を付けないといけないのはガイドライン上はAnn ArborやLuganoではなくいわゆるTNM分類によってステージングされていることです。

治療は?

基本的にはインプラントと病巣の摘出を行います。血液内科をやっていると盲点になるのが、その時にリンパ節も生検してきて、その病理をもとにTNMを確定させていきます。

stage 1ならそれで終わり

stage 2以上であれば化学療法や放射線を追加する

となっています。行われるのはALCLに対する化学療法なので、CHOP、A-CHPあたりが第一選択になってくるでしょう。

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