chatGPTにERに運ばれてきがちな患者対応をやらせてみる

chatGPTに医師国家試験を解かせたところ55%の正解率だったという記事を読みました。55%というのは正直かなり低いですが、AIがそれだけ解けたというのはすごいです。

あれは選択肢があるので簡単なのですが、実際の臨床では鑑別をあげてやるべき検査や治療を考えていくというのが大事で、そういうのにchatGPTはどれだけ対応できるのか?

というのをやって遊んでみました。

「老人施設入所中の寝たきりの89歳女性。1週間前から食事摂取が低下し受け答えが出来なくなってきたため受診。熱はなく感冒症状はない。腹痛や下痢、嘔吐などはない。どのような検査を行うべきか。」

「この症状の背景を確認するため、以下のような検査を行うことを検討することができます。

  1. 生体リズム検査:体温、脈拍、呼吸数、血圧などの生体リズムを測定し、循環器や呼吸器の異常を検出する。

  2. 血液検査:貧血、感染症、腎機能障害、電解質異常などを調べる。

  3. 尿検査:腎臓の機能や尿路感染症などを調べる。

  4. 胸部X線検査:肺炎、心不全などを調べる。

  5. 腹部X線検査:消化管の異常を調べる。

  6. 腹部超音波検査:腎臓、肝臓、胆嚢、膵臓などの内部を調べる。

  7. 脳波検査:脳の異常を調べる。

以上の検査を行うことで、食欲不振や受け答えの低下の原因を明確にすることができます。また、検査結果に基づいて、適切な治療法を選択することができます。」

とのこと。このシチュエーションは割となんでもありですが、多いのは脱水、熱や咳はなくても実臨床では肺炎や尿路感染の頻度も高い。心不全、電解質異常(特にナトリウム)、もそれなりにあり、甲状腺機能低下とかも鑑別。脳梗塞を起こしていたということもあるし、慢性硬膜下血腫なども一応は鑑別。

よって、検査だと採血、尿検査、CT、胸部レントゲン、くらいでOK。chatGPTはやりすぎで、検査の優先度がついてないです。これは「最低限どの検査をやるべきか」とか聞いてみるべきでしたかね。

「血液検査でナトリウムの値が110mEq/Lと異常低値でした。どのような治療を行いますか。」

「ナトリウムの値が110mEq/Lという低値は、重度の低ナトリウム血症と呼ばれ、急を要する治療が必要です。低ナトリウム血症が放置されると、意識障害、痙攣、脱水、血圧低下、脳浮腫などの合併症を引き起こす可能性があります。

治療法としては、以下のような方法があります。

  1. 電解質補正:ナトリウムの補正を行います。通常、急激な補正は避け、1日あたりのナトリウム値の上昇量を10〜12mEq/L以下に抑えます。

  2. 病因の治療:低ナトリウム血症の原因を特定し、原因を解消する治療を行います。例えば、利尿剤の中止や腎不全の治療、ADH(抗利尿ホルモン)の分泌過剰を抑える治療などが考えられます。

  3. 症状の管理:痙攣や脳浮腫などの症状がある場合には、対症療法を行います。

低ナトリウム血症の治療は、症状や病因によって異なるため、患者さんの状態に合わせた適切な治療を行うことが重要です。治療は専門家の指導の下で行う必要があります。」

これに関してはまあ、低ナトリウム血症、治療、とかでググれば出てきそう。とりあえず3%食塩水で治療するとして、

「3%食塩水はどのように作成しますか。」

3%食塩水は、1Lの水に30gの食塩を加えることで作成することができます。以下が作成方法の手順です。

  1. 清潔な作業スペースで、1Lの注射用水を用意します。

  2. 別の器具で、30gの食塩を計ります。

  3. 食塩を注射用水に加え、よくかき混ぜます。

  4. 食塩が完全に溶解するまで、しばらくかき混ぜた後、輸液器に移し替えます。

以上の手順で、3%食塩水を作成することができます。作成した輸液は、厳密な医療用途でのみ使用されるため、医療機関での適切な管理が必要です。また、3%食塩水は高濃度のため、緊急時以外には使用されることはありません」

・・・これは間違っていて、正しくは「生理食塩水500mlから100ml抜き取って、10%NaClを6A入れる」です。点滴に溶かして使える塩は病院にはありませんからね。

続いて2問目。

65歳男性。糖尿病と高血圧で通院中。1時間前から左の顎から歯のあたりが痛み出し、改善がないため夜間救急外来受診。座っていると息苦しさはないが歩くと苦しいような気がしないでもない。冷や汗はない。口腔内の診察では明らかな齲歯は認めない。本患者に対してまずすべき検査は何か。

「この患者さんは急性冠症候群を疑うべきです。左顎の痛みや歩行時の息苦しさは、心臓の血管に問題がある可能性があるためです。

まず、この患者さんには心電図(ECG)を行う必要があります。ECGは、心臓の電気活動を測定する検査で、急性冠症候群を診断するのに役立ちます。また、血液検査も必要です。心筋梗塞の場合、血液中の特定の酵素(トロポニンなど)が増加することがあります。

このような状況で、急いで医療機関を受診することが非常に重要です。急性冠症候群は、早期に治療しないと、心筋梗塞や心臓の損傷を引き起こす可能性があるためです。」

まあACSを念頭に書いているのであれですが、さすがchatGPTですね。

最後は少し難しい問題。脚色してますがたまにこういう子いますよねって感じのやつです。

「17歳男性、やせ型。吹奏楽部に所属しており、背は高い。練習中から胸に痛みが出現し、次第に増悪する。押しても痛くはない。痛みは強く、学校を休んでいる。昨日近医を受診しレントゲンを撮影したが気胸は認めず鎮痛薬のみで経過観察となった。改善ないため本日当院を受診した。最も考えられる疾患と、それを診断するための検査を挙げ、かつ除外すべき疾患を複数上げ、それを除外するための検査について述べよ。」

「この患者さんは、胸部痛があり、気胸が除外されたため、最も考えられる疾患は胸膜炎です。胸膜炎は、胸膜という肺を覆っている膜の炎症で、胸部の痛み、咳、発熱などの症状があります。また、吹奏楽部に所属しているため、肺の炎症が起こっている可能性があります。

胸膜炎を診断するための検査には、胸部X線検査、胸部CT検査、胸膜液吸引検査などがあります。胸部X線検査は、肺や胸膜の異常を検出するのに役立ちます。胸部CT検査は、より詳細な画像を提供し、炎症の原因を見つけるのに役立ちます。胸膜液吸引検査は、胸膜炎の原因を特定するために胸膜液を採取して検査する方法です。

胸膜炎以外に、心臓疾患、肋骨の骨折、肺塞栓症なども胸部痛を引き起こすことがあります。これらの疾患を除外するためには、心電図(ECG)、胸部X線検査、肺血栓塞栓症の場合はCT検査、肋骨骨折の場合は骨密度検査などの検査が必要になります。」

というわけで縦隔気腫を挙げられなかった時点でchatGPTの負けです。ECG、採血(Dダイマー)でACSとPEを否定しつつ、胸部CTで診断に行くのがベストですね。









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