iPS由来血小板の論文

iPS由来の血小板を聞いたとき、抗HLA/HPA抗体が陽性かつ血小板輸血不応になり、どうしようもなくなってしまった人に対して使っていくのだろうなと考えていましたが、赤十字に頼めばわりと探してくれますし、最悪抗体の特異性さえわかれば的なところもあるし、無いなら無いでええやろ、と思っていたところはあります。

が、論文(この間のblood)をちゃんと読むと、それは違うことがわかります。再生不良性貧血に対して血小板輸血をしたら、HPA-1aに対するHPA抗体を作ってしまい、血小板輸血不応になったという日本での症例。

日本では、こんなことあるんや・・・というレベルの超絶珍しい症例です。こんな症例出されたらiPS由来血小板に対して反論する術はありません。

HPAというのは血小板固有の血液型で、HPA-1の中には1aと1bがあり、日本人で1bのホモ(1a/1a、1a/1b、1b/1bがあり、1b/1bのこと)は0.002%未満とのこと。1a/1aが99.9%と教わっていたのですが、さらに低いですね。

海外ではそれなりの割合で1b/1bがいて、そのため本邦ではほとんどみることのない、HPA-1a抗体による重篤な新生児血小板減少(NAIT)を起こすことがたまにあります。母体が1b/1bで胎児が1aの場合、母体が1aに対する抗体を作ってしまうというわけです。

で、本患者さんはたまたま、本当にたまたま1b/1bで、1a抗体を作ってしまった。こうなると日本で適合する血小板を手に入れることは困難です。血小板は赤血球と違って凍結保存ができないので、実質的にiPS由来で作るしか道はありません。

iPS由来の血小板を作り、最大で5単位相当を輸血して血小板の上昇はみられなかったが、末梢血に中にそれらしいものは検出はされたという結果で、まだまだ課題はありそうですが、素晴らしい研究成果であることにはかわりありません。感じ的にはこの患者さんが現れて、技術的にすでにiPSを巨核球に分化させることはできていたので、iPS由来の血小板を作り、実際に投与までいった、という感じな気がしていて、patient-derivedな感じがすごく良いと思います。

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