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経済学で学んだ投資をする上で大切にしたい2つの掟

 初めまして。私は現在ある大学の経済学部に所属していて、来年から金融機関の一員として働く大学生です。
 私は高校生までに経済のニュースを見ても何を言っているのかさっぱりわからないことに危機感を覚え、経済学部に進学しました。そして、大学で4年間過ごすとともに、社会の投資への関心が急速に高まっていると感じています。 

 また、私の周りの経済について詳しくない友人でも「積立NISA」や「資産運用」「FX」と言った言葉を耳にし、相談される機会も増えました。
 一方、自分の身丈に合わない投資に手を出してしまったり、ネットや友人の意見を鵜呑みにしてしまい、大き損失を被ってしまうケースも見受けられます。

 そこで、今回この記事では私が相談された際に友人に伝えている「私が大切にしている投資の世界の2つの掟」について皆さんにもお伝えしたいと思います。この掟は投資への関心が高まった今、「本当に自分の身丈にあった投資なのか」と問いかける力を身につけてくれるはずです。ぜひ頭の隅に置いておいていただけると幸いです。

投資の世界にタダ飯は食えない。

 1つ目の掟は、「タダ飯は食えない」です。洒落たフレーズに思うかもしれませんが、経済の世界では頻繁に聞く言葉で、経済学者のミルトン・フリードマンが「There's No Such Thing as a Free Lunch」と題した書籍を出しています。要は、「おいしいだけの話はない。」ということです。

 例えば、東京ではお米1キロ100円で、大阪では1キロ200円だったとしましょう。輸送費がないケースを考えると、東京でお米を1キロあたり100円で買って、大阪に運んで売れば1キロあたり100円の利益が出ます。(このような取引を裁定取引と言います。)

裁定取引(筆者作成)

 しかし、そんなおいしい話は長くは続きません。一度東京のお米は安く買えて、大阪のお米は高く売れると聞きつけた人々は、みんな東京でお米を仕入れて大阪で売り始めます。すると、「神の見えざる手」によって大阪のお米は供給が増えすぎて高い値段で売れなくなり価格は下落し、東京のお米は逆に減りすぎて需要の方が大きくなり、高い値段でも欲しいという人が出始めて価格は上がります。

裁定取引2(筆者作成)

 このように、一見誰でも簡単に設けられそうな投資話が仮にあったとしてもお米の例と同じような取引が一瞬で行われ、私たち素人が情報を手に入れた頃には、すでに利益の出ない均衡点に到達しているのです。

 以上が1つ目の「タダ飯は存在しない」でした。皆さんも「誰でも」や「簡単に」と言った甘い文言のついた投資話が来た際にはぜひこの掟を思い出して、「こんなタダ飯は本当に存在するのか?」と問いかけてみてください。

ハイリスク・ハイリターンの法則

 二つ目は、「ハイリスク・ハイリターン」の法則です。この言葉は日常生活でもよく聞く言葉かもしれません。この言葉も経済の世界ではよく用いられる話で、リターンが高いということはリスクも大きい、反対にリターンが低いということはリスクも小さいということです。

 この法則は、銀行預金と株式を思い浮かべると理解しやすいかと思います。まずはリターンについて考えてみましょう。最近定期預金の利息が上がりましたが、長らく日本の銀行預金は金利がほとんど0%でした。一方、株式で「高配当株」と呼ばれるものは3%の配当金がもらえたりします。つまり、銀行は比較的リターンが低く、株式はリターンが高い資産であると言えます。

 次にリスクについて見てみましょう。銀行預金におけるリスクとは、銀行が破綻し預金が保障されないことであると言えます。日本では一つの口座につき2,000万円までの保証がされる上に、お金を預けるだけでお金が取られることはないので極めてリスクの低い資産であると言えます。一方、株式は株式市場が開かれている間絶え間なく株価が動くだけでなく、その会社が倒産した場合には株式が無価値になる可能性すらあります。
 以上のことを整理すると、銀行預金はローリスク・ローリターン、株式はハイリスク・ハイリターンであることがわかります。

(筆者作成)

 なぜ、この法則が成り立つのでしょうか。実はその答えは一つ目の掟と密接に関連しています。仮に銀行預金に10%の利息がつくようになると、リスクは低いのにリターンは高くなります。すると、ハイリスク・ハイリターンで株式を持つ意味がなくなってしまうため、みんなが一斉に株式を売り銀行預金にお金を移動させます。
 すると銀行はそんなに大量のお金を預けられても貸出する先がなくて利息が払えないので徐々に利息を下げます。一方株式は大量に売られて価格が下がっているので、今度は株式の方が魅力的になり株式へとお金が移動していきます。

 このように、二つの掟は密接に関係しています。一見単純で当たり前のような法則に見えるかもしれませんが、この二つの掟は投資の世界でかなり刺さる法則になっています。
 おそらく皆さんが一度は聞いたことがあるであろう「ビットコインは儲かる」というビットコインを例に実際の値動きを見てみましょう。

日本国債10年物とビットコインの1年間の価格の動き(12/15時点)
出典:TradingView,https://jp.tradingview.com/chart/JMKe3gRL/?symbol=TVC%3AJP10Y

  上のグラフは直近1年間の日本国債10年物(グラフ緑色)とビットコイン(グラフオレンジ色)の価格変動を表したものになります。国債は経済の世界では「リスクフリー」とされる資産で、暗号資産であるビットコインはリスクの高い商品として知られています。視覚的にわかるように、国債は安定して水平の形を取っているのに対し、ビットコインは大きな乱高下を繰り返して右肩上がりに上がっています。

 これらの図からも明らかなように、「ビットコインは儲かる」という話には「ハイリスク・ハイリターン」の「ハイリターン」の部分しか見れていないというわけです。ビットコインは「ハイリターン」の代わりに値動きが激しいのです。他にもビットコイン自体の信頼性や実用性などさまざまなリスクが潜んでいるということを「ハイリスク・ハイリターン」の法則から考えていく必要があります。

2つの掟から自分の身丈にあった投資を心がける

 この二つの掟を心に留めたら、あとはこの掟をもとに自分自身の身丈と相談することです。自分には積極的にリスクをとって資産を増やす「ハイリスク・ハイリターン」の商品が合っているのか。また、着実にしっかりと資産を守りながら運用する「ローリスク・ローリターン」の商品がいいのかしっかりと検討することが重要です。

 そして天使の囁きで悪魔のようにやってくる「ローリスク・ハイリターン」な商品に対して勇気を持って断ることです。もし判断に迷った場合には周囲に相談するか、専門の方に相談しましょう。

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