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「ワーク・エンゲイジメント」を考える

「ワーク・エンゲイジメント」とは「仕事に誇りや、やりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)3つが揃った状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられている。ワーク・エンゲイジメントは、健康増進と生産性向上の両立につながるキーコンセプトとして、メンタルヘルス対策でも注目されている。健康経営において、組織と個人の両方に向けた取り組みが、ワーク・エンゲイジメントの向上に有効だ。

「ワーカホリズム」は、活動水準が高く、仕事に多くのエネルギーと時間を注いでいる点で、ワーク・エンゲイジメントと共通点があるが、ワーカホリックな人は「強制的」に働くのに対してワーク・エンゲイジメントの高い人は「充実感を覚えながら」働く。仕事に対する姿勢の面で、大きな違いがある。また、ワーク・エンゲイジメントが高いと、心身の健康が良好で睡眠の質が高い。仕事・組織に対して、職務満足感や組織への愛着が高く、離転職の意思や疾病休業の頻度が低い。パフォーマンスは、自己啓発学習への動機づけや創造性が高く、役割行動や役割以外の行動を積極的に行い、部下への適切なリーダーシップ行動が多い。ということが分かっている。

ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、「外的資源」つまり、職場内の仕事の資源を増やすことである。これに対して、従業員個人ができる工夫では一人ひとりが「内的資源」、つまり、個人の資源(心理的資源ともいう)を強化することで、ワーク・エンゲイジメントを高めることを狙いにしている。これらの共通の枠組みとして「仕事の要求度-資源モデル」が挙げられる。

「仕事の要求度-資源モデル」は、「動機づけプロセス」「健康障害プロセス」から構成される。従来のメンタルヘルスは健康障害プロセスのみ着目していたがいきいきとした職場づくりには、「仕事の要求度」の低減と「仕事の資源」の向上に注目している。仕事の資源は、ワーク・エンゲイジメントの向上だけでなく、ストレス反応(バーンアウト)の低減にもつながることから、仕事の資源と充実と強化が重要になる。

管理監督者向け社内研修では、メンタル不全に陥った部下への対処療法だけではなく、部下の活性化を通じて、メンタルヘルスの向上につながることから、それらの視点を織り込むことも重要職場環境改善にはストレスチェックの活用も有効。厚労省が、ストレスチェックを活用した職場活性化の参加型グループワークの実施マニュアルとツールを作成し、無料で公開されている。(職場環境へのポジティブアプローチ

従業員個人ができる工夫として、仕事への自信(自己効力感)を高める方法や、仕事のやりがいを高める工夫(ジョブ・クラフティング)というものがある。ジョブ・クラフティング「課題や対人関係における従業員個人の物理的ないし認知的変化」と定義される。物理的な変化とは、課題の形や範囲、仕事の数の変化をいい認知的変化とは、仕事そのものに対する見方の変化を言う対人関係の変化とは、仕事でやりとりする相手を主体的に選ぶことをいうつまり、ジョブ・クラフティングとは、従業員が自らの仕事を変化させながら、仕事の意義を高めていく主体的なプロセスである。

仕事のやりがいや意義は、ワーク・エンゲイジメントを高める需要な仕事の資源である。

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