「適切な働き方」の実現(実践③)
ワーク・ライフ・バランスは男女労働者の多様な働き方の問題として重視されている。制度導入の際は、法令順守は当然のこと、労働者が利用しやすく、企業運営上も活用しやすいものがいいかと思う。
とにかく日本人はよく働く。厚労省「令和二年過労死等防止対策白書」によると、1993年には年間1,920時間あった総労働時間は、2019年には1,669時間まで減少している。しかし、減少の原因は、労働時間の短いパートタイム労働者の割合が上昇していることが背景にあるため、一般労働者だけを見てみると、2019年は1,978時間と、1993年比より若干は減少しているものの、おおむね2,000時間前後で高止まりしている状況だ。業種別では、「建設業」が2,018時間で最も長く、次いで「運輸業、郵便業」が2,000時間、「製造業」が1,916時間、「情報通信業」が1,850時間となっており、全産業1,669時間を大きく上回っている。
年次有給休暇の取得状況を見てみよう
働き方改革により、2019年4月以降、年休10日以上付与される労働者に対して、使用者は年5日以上時季を指定して付与することが義務付けられている。厚労省「就労条件総合調査(令和2年)」によると、2019年は労働者1人平均18日付与、取得日数は10.1日、取得率56.3%であり、過去最多となっている様子。
但し、取得率に着目すると、1,000人以上の企業は63.1%に対して、30人~99人では51.1%となっているように、中小規模事業場になるにつれて取得率が低い状況である。
産業別には、「宿泊、飲食サービス業」が41.2%、「卸売り、小売り」44.7%、「建設業」44.9%と平均を大きく割っている。
年次有給休暇は、労使協定を締結すれば、年5日を限度に、時間単位で取得することが可能だ。労働者本人が日単位で請求してきたものを、時間給で取得するように強制はできない。利用目的も自由なので、目的によって取得を認めないということもできない。前年度から繰り越し分があっても、年間5日を限度と定めている。1日の所定労働時間が7時間30分といった、1時間に満たない端数がある場合は、1日を8時間に繰り上げて計算する。
高齢労働者が増加している
総務省「2020年労働力調査」によると、2020年における年間平均就業者数は6,676万人で、内15歳~64歳の就業者数は5,771万人と前年比61万人減少している。それに対し、65歳以上の就業者数は906万人と、前年比14万人増加だ。約14%を占めているという状況。内、男性は538万人、女性は367万人だ。
高年齢者等の雇用の安定に関する法律(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から、企業は70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務とされている。
ワーク・ライフ・バランスの必要性について
少子高齢化や人口構成の変化や現象が進む中、これまでとは違った、働き方を推進して、増加する65歳以上の就業者層や、これまで育児等で仕事を辞めざるを得なかった女性層などが活躍できる社会を作り出していくことが求められる。
2007年12月に「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定された。同憲章では、「国民一人一人がやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方を選択・実現できる社会」としたうえで、具体的には
①就労による経済的自立が可能な社会
②健康で豊かな生活のための期間が確保できる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会
と定義している。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度は、就業規則で始業と終業の時刻を労働者の決定にゆだねることを規定し、労使協定により、次の項目を定めることが必要。
①対象労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間
④1日の労働時間
⑤労働者が労働しなければならない時間帯(コアタイム)を定める場合には、その時間帯の開始と終了の時刻
⑥労働者がその選択により労働することができる時間帯(フレキシブルタイム)に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻
直近では改正があり、清算期間が1か月から3か月に延長された(選択可能)。
その他、短時間正社員制度やテレワークなども柔軟な働き方を後押しする制度として有効であると考えられる。