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「健康経営EXアドバイザー」による実践支援

健康経営EXアドバイザーは、「健康経営診断」により、現況の確認と課題の把握、課題の解決策を検討する。「健康経営ヒアリングシート」を活用してヒアリングを行い、「健康経営診断報告書」等を用いて現状と課題、解決策を提示しよう!!

健康経営を実践するにあたっての5つのステップ「①健康宣言 ②組織体制の整備 ③健康課題等の把握 ④計画策定・健康づくりの推進 ⑤健康づくりの効果検証・改善」の各ステージに応じて支援することになる。

具体的には、ヒアリング→フィードバック→実施フォローの順で、健康経営に取り組む企業の「PDCA」を様々な施策と専門家への橋渡しでサポートする。

単に知識を教えるティーチングではなく、答えを引き出し、行動を変容させるコーチングのスキルが求められる。相手の本心を開くために、ミラーリング、ペーシング、バックトラッキング(オウム返し)を駆使してヒアリングを実施する。また、承認、傾聴、質問(気づきを促す質問力)を意識しながら、経営者の考え方、問題意識を聞き取ると、今の経営者の「経営に対する考え方」にも通じ、従業員の健康への考え方にもつながるヒントが隠されているだろう。

ヒアリングシート

ヒアリングシートは、全体が大きく3つのパートに分かれている1つ目は「貴社の概要」「経営指標」「貴社の従業員構成、男女、年齢」「経営者の想い・要望・悩み」といった、その企業の課題やその原因を探るための背景情報となる。

2つ目のパートは、「経営者が考える健康課題」だ。ここで、経営者もしくは担当者が考える健康課題と健康経営に取り組む理由(想い)を確認する。

3つ目は「健康経営チェックリスト」である。健康経営チェックリストは、健康経営優良法人認定(中小規模法人部門)の審査項目に準拠している。一般的な健康課題を抽出するとともに、健康経営優良法人の認定をめざす企業は認定に向けた課題を確認することができる。

チェックリスト

チェックリストで、経営者や担当者ができていると思っていても、実際にはできていないこともある。その場合、面談時での指摘をできるだけ控え、健康経営診断報告書のヒアリング結果を通してフィードバックしよう。経営理念として、健康宣言事業に参加していること。組織体制、法令順守等を確認していく。健康診断の実施及び受診勧奨の状況、がん検診等の任意健診の受診を促す取り組みまたは制度があるかも確認する。健診後のフォロー体制として、有所見のある従業員に対しても再検査や精密検査の受診を促す取り組みまたは制度があるかも把握する必要がある。さらに、ストレスチェックの実施の有無についても把握しておこう。特に、労働者50人以上の事業場がある場合は、実施義務があるので確りと確認しておく必要がある。

計画については、具体的な数値目標を設定しているか確認する。特に、①自社の従業員の健康課題を把握している、②その課題に対して具体的な計画や数値目標を設定している、③計画を実行するに当たり実施主体・責任担当者を定めている、④目標の期限や達成スケジュールを定めている、ことを明確にする必要がある。よくチェックしよう。

実行状況や評価改善、法令順守を確認する。

診断報告書作成のポイント

診断報告書作成の留意点は以下の通り。

① 企業に自社の健康課題に関する気づきを与えること

② 一般論でなく企業の実態に即した経営課題が示されていること

③ まずは実践を後押しする内容であること

④ 改善提案の内容が具体的で、かつ取り組みやすいこと

⑤ 公的施策の活用等、企業に負担の少ない取り組み策が提示されている事

⑥ 健康経営を継続的に推進していく仕組みになっていること

継続支援

継続支援は課題解決に適した専門家が担当する。健康経営の成功のカギはスモールチェンジの成果を早めに勝ち取ること。年間を通した「健康経営年間スケジュール」を策定し、取り組むことが重要。

計画策定・健康づくりの実践において、「まずはDo(実行)」だからといって、健康経営優良法人の認定を受けることが目的となってしまっているケースが多々あり、あまり取り組みの本質を理解していなくても短期的には成功に見えたりすることがある。しかし、本来の健康とは、職場の取り組みだけで解決することはそうそうない。各々の従業員が自己保険義務を遵守し、プライベートにおける生活習慣についても、実践を行う行動をして初めて健康をつかむことができる。だからこそ、トップダウンで発信した健康宣言に共感し、自身の健康が企業の収益向上と健全な発展につながることを真剣に考えられるロールモデルとなる従業員を増やしていき、すべての従業員を巻き込むボトムアップも必要だ。

企業は「小さなことからコツコツと」実践すること、そしてあきらめない仕組みづくりや楽しく健康経営を実践する職場環境の整備が重要といえる。

50人以上の事業場は衛生管理者、50人未満、10人以上の事業場は衛生推進者が実践の一翼を担い、10人未満の事業場は選任義務はないが、衛生担当者と健康経営の担当者をかねて設置したほうが取り組みが進む。

座りっぱなしの問題

日本人の平均座位時間は、世界最長の7時間という結果がシドニー大学などの研究機関の調査で分かっている。座位時間が1日11時間以上の成人は、4時間未満の人と比べ、死亡リスクが約40%高まると言われている。WHOは2011年に「世界で年間200万人の死亡原因になり得る」と発表しており、喫煙が世界500万人以上、飲酒が世界300万人以上の死亡原因になると推計しているので、座りっぱなしも、同様の健康リスクと認識すべきである。姿勢が悪くなり、猫背になることで内臓が圧迫される。その結果、インスリンなどの過剰分泌につながり、ガンや糖尿病の発症リスクを高めるとも言われている。使わない筋肉は、どんどんそぎ落とされ、これを「廃用性萎縮」という。移動が難しくなり、QOLの低下につながる。足の衰えは必ずしも加齢に伴う高齢者固有の問題ではない。とにかく、「座りっぱなし」はよくないのだ!

サーカディアンリズム

とは、約25時間周期でめぐる生理現象を指す。概日リズムと日本語で言い、シンプルに「体内時計」といったほうが分かりやすいかもしれない。

この体内時計を人間は日々リセットしており、その要素を「同調因子」という。最も重要な同調因子は光である。また、メラトニンとセロトニンというホルモンが大きく関わっており、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンは、夜間に分泌される。セロトニンは昼間に多く分泌され、精神バランスを取る働きがあり、不足すると、気持ちが滅入る、感情の起伏をコントロールしにくくなる、場合によってはうつ状態の原因にもなる。サーカディアンリズムが崩れると、ホルモン分泌のみならず、体温調節や内臓の働きなどにも影響が及ぶことに注意が必要だ。

但し、時間管理が監督・監視の強化につながらないよう注意しよう。育児や介護の事情で、時間に囚われない柔軟な働き方を望む従業員もいるからだ。自社にあったスタイルが重要。

孤独の問題

2018年イギリスでは、世界初「孤独問題担当大臣」が任命された。孤独に起因する医療費の増大や、職場における欠勤や生産性低下に伴う損失、すなわちアブセンティーイズム・プレゼンティーイズムに伴う経済的コストの推計値が明らかになったからだ。

「社会的関係の質・量において、現状と願望が一致しない時に感じる」状態としての孤独。「ソーシャルキャピタル」という概念は、社会関係資本は地域や社会における人的つながりのことをいう。ソーシャルキャピタルが蓄積されると、相互の信頼や協調行動が構築され、治安・経済・健康・幸福感などに好影響があり、社会の効率性が高まるとされている。その逆が起きると当然孤独を感じる。テレワークも「そこに上司や同僚が居ない」ことで、孤独に連なるネガティブな影響を免れない。

ソーシャルキャピタルは、職場や社会への帰属だけで蓄積されるものではない。また、孤独の感じ方も人それぞれ、強弱がある。いずれにしても、孤独は個人に内在する単なる心情的なものではなく、社会として包括的に解決に取り組むべき課題であるといえる。


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