「高齢従業員特有の健康問題」(実践⑭)
「フレイル」とは、加齢とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態のことを指す。「フレイル」の構成要素には、「身体的フレイル」「精神・心理的フレイル」「社会的フレイル」が挙げられる。メタボ対策からフレイル対策への切り替え時期は、年齢だけでなく、健康状態を考慮した個別対応が必要である。
日本はすでに「超高齢化社会」であり、総人口に占める65歳以上の人口割合である高齢化率は2019年で28.4%、2065年には40%近くなることが推計されている。総務省「労働力調査」によると、60~64歳の層で男性82%、女性59%と、60歳を過ぎても働き続けるのが当たり前の時代になっているといえる。
繰り返すが「フレイル」とは、加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態といえる。
また、「ロコモーティブシンドローム」とは、年齢と共に、骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」「歩く」といった「移動機能」が低下している状態のことをいう。
健康課題の内、労働災害の多さも挙げられる。休業4日以上の死傷者数の内、60歳以上の従業員の占める割合は増加しており、平成30年時点で26%であった。発生率が最小となる30歳前後と比べると、70歳前後になると男性で2倍、女性で5倍にもある。
厚労省から「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジングフレンドリーガイドライン)」が2020年3月に公表された。また、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト」(エイジアクション100)も公表されており、有効だ。ハード面、ソフト面をバランスよく整備することが有効である。これらの設備費用の補助として、エイジフレンドリー補助金制度がある。
中小企業向けには、専門的な支援を必要とする場合、労働災害防止団体(中央労働災害防止協会等)が中小企業に対して、専門職員を派遣して高齢従業員対策を含めた安全衛生活動支援(現場確認、ヒアリング、アドバイス)を行う「中小規模事業場安全衛生サポート事業 個別支援」を活用することも可能である。