「 チームトータリスト」への想い

神應知道 (新町クリニック健康管理センター)

前回の初連載では『出会い+深い縁=邂逅』と述べました。そして、病気を下げて、元気を上げる医療者を「トータリスト」と名付け、私のみならず、クリニック全体がチームとなって利用者さんの病気減らしと元気増やしができるような「チームトータリスト」を目指して頑張っています!と自己紹介しました。

2017年の1月上旬の時点では、私個人は「トータリスト」として活動していましたが、「チームトータリスト」はありませんでした。

これができるきっかけは、ちょうど一年前の新年会でした。義理の父親から所長を私に譲り、自分は理事長職だけやることに決めたといわれ私の心は大きく迷っていました。そこで私はその新年会で参加した職員に二つの選択肢を提示し多数決をすることにしました。①赴任時から所長としていく、②単なる常勤医師として赴任し、いろいろと中のことを学んでから所長に就任する。結果は、参加者の9割ほどが①でした。その時の私の心境は、所長としてやれる自信に乏しかったんだと思いますが、従業員のみなさんの気持ちも合わせ、①の選択となりました。

それからの3か月間はどんなことをやろうかなとか、経営者として何ができるかなとかいろいろ考えていたと記憶しています。

その中で私がよりどころにするのは本でした。そんな中で出会った本の一冊に「相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策」という本がありました。この著者の井元社長は、自分が所属している会社のためではなく、一人の顧客の一生、その家族の一生に責任をもって対応したいと言う事で会社を作ったという想いがこの本には書かれておりました。そんな先生にお話を伺いたいなと言う事でHPからメールを送り実際にお会いしてお話を伺わせていただきました。その中でお互い相通じるところがあり今でも取引をさせていただく邂逅をいただきました。

医師という立場に経営者という立場が加わったことで前職では巡り合わない方とのご縁をいただき、ありがたく感じています。そんな新しい出会いの中で私の想いも少しずつ洗練されていき、その後4月の所長就任までの間に私のやりたい事のコンセプトが固まってきました。それが、「チームトータリスト」の構想です。

以下に私の所長就任挨拶としてクリニックのFBへ投稿した文章を引用してみます。

『私はちょうど2年前に新町クリニックに週1回勤務するようになりました。そのおかげで、私のやりたいことは病気を下げて、元気を上げるという「トータリスト」としての仕事だと言う事に気づきました。そして、1月の新年会での高木理事長の申し出と皆さんのご意見にも後押しされ所長業務を引き受けると決心したことで、私個人だけでなく、新町クリニックというチームで「トータリスト」を結成することができる幸運をいただきました。皆さん全職員がチームメンバーです。これから病気を下げ、元気を上げる「トータリスト」集団として一緒に頑張りましょう。

さて、皆さんは仕事にやりがいを持っていますか?

我が社は、健康管理センターなので健康管理を生業にしていると言う事は当たり前でしょう。高木理事長はよく、「我々は幸せを売る商売をしている」とおっしゃっています。戦争時代の日本人は、こんなに長く生きるなんて考えていなかったはずです。その当時の幸せと今の幸せ、そして未来の幸せはたぶん異なるでしょう。1993年新町クリニック健康管理センターと名がついたときの日本人の平均寿命は、男性76歳、女性82歳でしたが、今では2007年生まれの若者の半分は107歳まで生きるといわれています。昔の生きたくても生きられないという時代から今後は、死にたくても死ねない時代になるというわけです。この現実を前に健康管理センターとして何を大事にしていかなければいけないのでしょうか?65歳で退職した後に35年も余生があると考えるとうんざりする人の方が多いのではないでしょうか?少しでも充実した人生を送るために我が社ができることは大きいと考えます。

私が、今後行っていきたいことを5つ考えました。

① チーム「トータリスト」としてのサービスの拡大

② チーム「トータリスト」としての職員の意識変化

③ 新町クリニックからの情報発信を通じて、新町ブランドの確立

④ 職員の家族、地域の企業、地域の住民とのつながりを通じて後生の育成

⑤ 青梅市に住んでいると健康になれるという街づくりの実現

の5つです。

1つ目のサービスの拡大に関しては、いま健康診断で行っていることは病気探し診断になっていると感じています。病気が見つかった人はいいですが、それ以外の人は健診に大きな意味を見出すことはできないのではないでしょうか?そして先ほど話した超高齢化時代は病気が出るのは当たり前で、予防すること、病気を大きくしないこと、病気があっても健康に生きるにはといった病気以外の要素も考えないといけなくなっています。今の健康診断には、幸せに生きるために必要だと思われる、メンタルヘルス診断、結婚診断、夫婦診断、子供診断、家族診断、元気診断、生きがい診断、生き方診断、仕事診断、趣味診断、つながり診断、ターミナル診断、住まい診断、歯科診断、脱毛診断、アンチエイジング診断、どれくらい笑顔が多いか、素敵かなどみる笑顔診断、どれだけ人に感謝しているかを見る感謝診断、姿勢診断など人によって違うと思われる多種多様な健康管理に大事なものは診断しにくいのが現状です。健康は病気と元気の調和という定義をもとに健康診断で病気減らしのみならず元気アップの発信基地になるサービスを提供したいと思います。そのためには、職員一人一人が現状の仕事に満足するのではなく、さらに発展するにはどのような方法がいいかを考え、議論する場が必要だと思います。どちらかというと病気減らしは医師を中心とした管理になるでしょう。元気アップは、どの職員でも気持ちの持ち方次第でできるはずです。我々は、「健康管理」を生業にするチームです。皆さん一人一人がチームメンバーです。チームとして成長していく企業にならないとこれからの時代は生きていけないのは間違いないでしょう。そのために、changeをchanceにできる様一緒に頑張りましょう!

2つ目の職員の意識改革についてです。隣同士に並ぶラーメン屋で値段も立地もほぼ同じなのに、一方は、行列が絶えない、一方で、その隣のお店は客足が悪いというときにラーメンの味が5倍も違うことはまず少ないと思います。では、その行列はなぜできるのでしょうか?答えは職員の意識にあると言う事のようです。職員の意識を20倍くらい高め、来てくださったお客さんに気持ちよく過ごしてもらいたいと何気ない会話をふったり、常連の好みを覚えていたり、様々な気配りが客足をよぶということになるようです。このことは、まさしく元気を増やすことにつながるのだと考えます。お客さんと直接接しなくても、直接接する職員が気持ちよく仕事をできるサポートを行う事で間接的に顧客の元気アップにつながるはずです。まさしく「チームトータリスト」として何がチームに役立つかと言う事を考えて行動する風土がさらに増えることを期待しています!

3つ目の新町クリニックからの情報発信、新町ブランドの確立に関しては、私は、2年間の週一回の勤務で今の新町クリニックに足らないものの一つとして日々の仕事に精一杯で発表する、論文にするという文化が少ないと言う事を感じました。ということで、新町クリニックで行っていること、データ集積したものを発表する文化を作りたいと考えています。私は医師の立場として考えますが、各部署から総合健診医学会、人間ドック学会など主たる学会で毎年各部署から一つ演題を出すということを目標に問題意識をもって日々の業務を行っていく風土を作りたいと思います。健診を商売だけでなく学問、教育というものにしっかり落とし込むにはどうしたらいいのかと言う事を追及する組織にしたいと考えています。そのためには、発表しっぱなしではなくしっかりと論文化するという姿勢を続け、新町クリニックはそこら辺にある健診施設とは異なるという施設にしていきたいと思っています。これらの活動には相当な覚悟、想いだけでなく出費がつきものです。ただこれは経費という意味合いではなく未来への投資という意味合いにして、学会の参加費、宿泊費などに関してはクリニックから補助が出る仕組みを作りたいと思います。そして、年ごとなどに優秀部署などを表彰する仕組みを作り、サービスが素晴らしいレストランでの食事、ホテルへの宿泊、海外などのリゾート地に研修旅行という形で勉強してもらいに行く機会を作りたいと思っています。

4つ目の従業員の家族、地域の企業、地域の住民のつながりを通じて後生の育成を行うと言う事に関しては、職員、その家族同士、地域の企業、地域の住民の交流を通じて、新町クリニックで働くことは楽しいんだと家族内、地域内でも感じてもらい、子供たち同士の交流も活発に行っていただき横のつながりができる仕掛けをしていきたいと思います。このあとただ継続するのではなく、より発展させた形で後世にバトンタッチしていきたいと思っております。そのためには医師のみしっかりしていても意味がありません。たとえば、3月などの健診患者の少なめの午後などに春休みの職員の子供や、地域の子供たちを数名集め仕事体験をしてもらったりして仕事の魅力を感じてもらったり、チャリティーウォーキング、夏休みのキャンプにいったり、スキー旅行などを企画し職員、その家族のつながりを作る機会を提供したいと思っています。そしてその子供たちが就職するときには絶対新町クリニックで働きたいと思ってもらえるような職場にしたいと思っています。そして今働いている我々は、子供たち次の世代の職員に新町クリニックイズムという偉大なギフトを伝え引き継ぐ義務があるのだと思っています。 

ここで出た、「つながり」は超高齢化社会のキーワードの一つです。健康寿命が高いグループは低いグループに比べ「つながり」が多いという研究結果も出ています。ボランティア活動などを通じて社会に貢献し、たくさんの価値観に触れ、家族とのつながりに加え、地域、社会、企業、できれば被災地とのつながりを広げていきたいと考えています。 

5つ目の住んでいるだけで健康になれる街とはどんな街でしょうか?これからしっかり調べないといけませんが、そんな街聞いたことがないですよね?まずは、健康寿命が高い場所を調べて、特徴を見出し、それを青梅市の中でどのように応用できるか、新町クリニックがどんなお手伝いができるかを考えながら新クリニックを立てるときに応用できるようにしたいと考えています。

以上5つが所長就任時の想いです。いやすごいなという人もいれば、ちょっと肩に力が入りすぎているんじゃないのという人もいることは重々承知しておりますが、私は諦めが悪い人間なのでいつまでも想いを持ち続け絶対に達成できると信じています。ただ、一人では無理と言う事は理解しております。まずは、私から、そしてこの想いに同意してくださる職員の皆さんと一緒に歩きはじめ、クリニックのお客様、企業様、その家族に伝染するような形にしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。』

いやー改めて読んでみると恥ずかしいですね(笑)。今月は既に文字数がオーバーしているので、次回は、この想いを踏まえどんな活動をしているか日々の邂逅をご紹介したいと思います。


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