会社でのメンタル対策

神應知道 (新町クリニック健康管理センター)

みなさん、こんにちは。「医療界を変える男 神應」です。いつもこの原稿をお読みいただき本当にありがとうございます。

『出会い+深い縁=邂逅』、病気を減らし、元気を増やす医療者を「トータリスト」と定義し、私のみならず、クリニック全体がチームとなってお客さんの病気減らしと元気増やしができるようなチーム「トータリスト」を目指し、

① チーム「トータリスト」としてのサービスの拡大

② チーム「トータリスト」としての職員の意識変化

③ 新町クリニックからの情報発信を通じて、新町ブランドの確立

④ 職員の家族、地域の企業、地域の住民とのつながりを通じて後生の育成

⑤ 青梅市に住んでいると健康になれるという街づくりの実現

の5つをやっている日々の活動から読者の皆様に何か得てもらえたらという想いで掲載していただいています。

今回は、2018年の5月に行った産業衛生学会での邂逅について共有したいと思います。

この方は、某企業の人事部長兼健康保険組合(以下健保)の理事長です。もともとは、健保の理事長の役職のみで、健保のデーターから職員のメンタル疾患率が高そうだということがわかっていたようです。その後人事部長の役職が回ってきて、健保の情報と人事の情報をつなげることができる立場に自然になったということでした。

そこからこの部長さんの快進撃が加速します。

この企業は、「一人一人の心身の健康」を大事に考えており、企業と健保のコラボを健康投資、健全経営として掲げてきたようです。その中で産業保健を強化することを理念に入れ、医療費が抑制できているという結果が出れば健康な職員が多いということだろうし、健康で働けるということは生産性の確保につながるだろうし、低公害の製品を作れば、人々の健康に貢献できる、一人一人の健康に興味を持てば、企業が発展し、それこそが健全な経営にあたると考えたということでした。

さらに、「中小企業の利点は一人一人の顔と名前が一致して、対話ができることだ」といっておられ、「その事が最大の武器だと捉えている」と。つまり、「顔と名前が一致すれば、個人の性格を考慮しながら、一人一人へ言い方や伝え方が変わってくる。きめ細やかな対話やアドバイスもできる。安全衛生委員会でも工場内を巡視しながら、心の中で顔と名前を確認していった」「こうした中小企業の利点を最大限に活用し、そのうえで健保と連携をしていった」ということでした。

そして、「この健保では人間ドック事業、脳ドック事業を40歳以上の社員と被扶養配偶者に行い、給与引きの仕組みを導入することで対象者の80%以上の参加率を誇っている」「こ

の事業で毎年3~5人の早期がんを発見でき、長期休業のリスクを防ぐことにつながっている」ということでした。

加えて、「インフルエンザ予防事業を行い、従業員・その家族に予防接種を受けてもらうことで集団感染の予防、生産性確保につなげている」ということでした。

ここで皆さんには、こんなに保健事業に取り組んだ結果、本当に医療費が削減できたのかという疑問がわくでしょう。さらに、社員の医療費がわかったところで誰がどう対応できるのという風にも思うのだと思います。

では、その時に伺った話を順番に共有していきたいと思います。

この企業では「10年間で医療費を6000万円削減できたという実績になった」ということでした。「もっと言うと2000万円の投資で医療費が6000万円削減できた」ということです。

6000万円ですよ、6000万円!

この削減の大きな要因は、「がんの早期発見」ということでした。

「このためにしっかり健診を受けてもらうということが大事だ」と、部長はおっしゃっています。「そして、一般定期健診時は健診業者に全てお任せしますではなく、現場に足を運び、健診状況を立会する。その際、問診表を見て、顔と名前を確認し、さらに言葉をかけることでこちら側の顔と名前も覚えていただく。そうした地道な活動が、相談、問い合わせの増加、話しやすい環境、相談しやすい関係の構築へとつながっていった」ということでした。

さらに、「健保の保健事業の効果は、医療費の削減にとどまらない」ということでした。

それは「一般定期健診の有所見率に対する効果です。その当時、全国平均の健診の有所見率が53.6%であるのに対し、この企業の有所見率は39.9%と極めて低い値になっていました。その有所見者全員に対し書面での受診干渉を実施し、未受診理由の追跡調査も行っている」ということでした。

部長はこう続けます。

「がんの重症化予防やメンタル疾患予防は早期発見が第一です。中小企業における健康管理は「人も少ない」「忙しい」と思ってしまいます。そうしたことを理由に、産業医や保健師へ健康管理を任せっ放しにすることもあるのではないでしょうか?産業医、保健師の報告書をただファイルリングしていることで健康管理していると錯覚に陥っているのではないでしょうか?」「実はここからが人事部や健康保険組合が力を発揮することである。社員が上司や人事部に話しにくい時、相談機関として健保組合が機能します。たとえば産業医からメンタル疾患者の面談報告を受けたとします。このまま「産業医に任せているから」という理由で、私たちが何もしなくても本当に大丈夫なのでしょうか? 次の面談日まで、一か月の時間を要します。この間に企業の職員としてできることがある」というのがこの部長のスタンスでした。具体的には、「許可があれば、メンタル疾患者と一緒に、産業医の話に耳を傾け、次にメンタル疾患者の所属長とも対話を重ね、更にお互いが納得できるまで、職場環境や業務内容等の協議を重ね、復職支援のプログラムを作成する」ということでした。そして、「ここでも常日頃のコミュニケーション力が生きてきます」と。「例えば、産業医の意見書を所属長へ見せるだけなら、誰にでもできます。それこそ電子メールだけで指示ができます。しかし一番大切なことは、自らが一緒になって考え、行動し、関係者と対話・意識改革・行動変容へと結びつけていくこと。だからこそ、関係者と膝を突き合わせて対話することを心がけている」ということでした。「その為には、どうしても面談形式を必要とし、それは中小企業だからこそできる事だ」ということでした。そして、「協議を繰り返し、よりよい職場環境改善を目指して、労災防止に努めている」と。

部長は繰り返します。

「本人・産業医・健保(人事部・安全衛生兼任)・所属が一体となって取り組みます。これを何度も何度も繰り返していきます」と。「企業では、社員一人が休職すると生産に大きく響きます。家族の心労も大きい」と。「当然、休職者の仕事は同僚がカバーします。すると、残業の増加、休日出勤の増加、賃金の増加、身体負担の増加に直結します。」

この企業では、「10年前には、休職者が10人いてトータル40か月の休職月があったのに対し、今では2人でトータル2か月の休職期間で済んでいる。これも数千万円の生産減を食い止めていることになった」と。

「本人・産業医・健保(人事部・安全衛生兼任)・所属が一体となって取り組むと、早期に予防ができます。少なくとも数千万単位の生産減を食い止める事ができる」と。「メンタル疾患者は絶対に放置せず、周囲がサポートできるように対話を重ねて協力を得ることが大事と思いますし、その役割を率先して果たさなければならないことだと感じていますので、人と人のかかわりが大事と思います。」

すごいです。この部長は「社内で発生したメンタル疾患職員をすべて自分の部署に集め、毎日家族のようにサポートして、つらい時を一緒に乗り越えて復活させていく。その復活した職員は、他の部署で働くときに自分がされたような対応を病んでいる職員に対して介入できる職員になっているはずだ。私たちは、人の人生を軽く考えすぎている。せっかく縁があって一緒の時代に一緒の職場で出会った仲間なんだから自分ができる最大限のことをやっていきたいという想いでここまでのことを続けている」ということでした。

この発表を学会で号泣しながら拝聴した私は、セッション終了後、挨拶をしに行ってメールで連絡を取り合う仲になります。

そして、今私はこの原稿をその部長の企業への見学ツアーの飛行機の中で書いています。

人生の必然を興味深く感じながらこのエピソードで、私は日常どう生きるかという「想い」、「マインド」が改めて大事だということを学びました。

このお話の続きは、またそのうち~。

では、みなさん、ごきげんよう!

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