「少なくとも必ず迎える明日の為に」

旅芝居にエンディングはあっても
旅芝居の巡業に結末は来ない
この恋の話にも
最後なんか作りたくなくて
僕は真夜中のパーキングに構えられた
赤いベンチに
ふてぶてしい位に股を拡げて
腰を掛け
持参したペットボトルに
手を伸ばした
あと二週間足らずで
抱きしめたくても
抱きしめたくても
抱きしめられない
八重歯で
下唇を噛みながら
超新星爆発に匹敵する威力で
駆け引きばかりの世の中が
悲しいと
ジュースを一度に飲み干した
君が与えてきた絶望と
僕の帝王学の
せめぎ合い
神はまだ
「生きろ」と
指令を下した
新たに
気付かせてもらったことを
何度も反復して
頭の中のスケッチブックに
色をつけようとしてるのに
なかなか上手く行かなくて
変更された
君のラインのアイコンを眺めながら
去年の自分を
逆恨みしている
確かに僕が愛した君は
綿菓子の様に消えてしまったけれど
君の物真似が上手な
君に似た娘が
眼の前にいて
君がいなくなったなんて言われても
しばらくは
ただただ
胸が締め付けられるばかり
せめて
太陽が
東から
顔を出すまでは
せめて
この頬を
伝った涙の跡が
乾き切るまでは
あの頃の君と
僕でいさせて
それが
幻でも
いいから
僕が君の前で
表情を変えることがなかったのは
泣くか笑うかしか出来ないからだよ
泣いたら君が釣られて
泣いてしまうのが分かっているから
体と心に
少し傷を負ってしまったけれど
短い期間の中で
沢山教えてもらって
沢山考えさせてもらって
沢山の想い出と
愛を分けてもらった
君の顔が見られる
あと僅かな時間
どうせなら
筆舌に尽くしがたい
最悪の被害妄想に
呑み込まれて行きたい
蝕まれることが
わかっているなら
傷ついた心すら
僕は血肉に変えて行くから
そう考えたら
いっそのこと
目一杯君を笑わせて
釣られて笑う君の横顔がみたいって
考えてる
嬉々とした自分に出会えたよ
だから
僕は
もう一度泣いたら
二度と
涙は流さないよ
男に生まれたからには
泣くのは風呂場と
一人で掛布団を頭から被っている時だけだって
言い聞かせて
ずっと泣いてもいいからねって
誰にも分からない様に
自分を甘やかした
あと何度か
夜が明けたら
就職する君へ
スーツを着こなし始めた頃
ランチでも食べながら
僕のこと思い出してね
アフターのコーヒーでも飲みながら
僕のことを
惜しんでね
どこかで見かけたら声をかけてねと
負け惜しみを書いた
メッセージを削除して
「元気でねっ(^_-)-☆」
って
書き直した
メッセージを
グループラインに
絵文字を添えて
送った

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