俺の中では あの日死んだ
今から四年前の今日
俺は1週間意識不明の中から 奇跡的に生き返った
数日前から体調が悪くおかしいなとは感じていた
顔も手足もパンパンになりいよいよ不安を感じた俺は普段はプライベートでは絶対呼ばない様にしている若者に連絡し病院へ乗せて行ってくれるよう頼んだ
若者が到着したその瞬間
俺はゴボゴボと口から大量の血を吐いた
オヤジ大丈夫ですか!
大丈夫だ。とにかく病院へ運んでくれ
病院へ到着してからの記憶は飛んだ
俺は特別救命センターへ移送され
その後1週間意識不明に陥った
原因不明で腎臓が止まりそうになり、腎臓が機能しないと肺に水が溜まり肺から水を抜く作業はとても難しいらしく医師からもう助からないと思うので家族を呼んでと言われたと後から聞いた
俺には家族なんていなかったので
若者や友人らが何度か来てくれていたらしい
結果的に肺に溜まった4Lもの水を奇跡的に抜くことが出来た様で一命を取り留めた
意識不明中に何人かの仲間が俺の手を握ったが
意識は回復しなかった
意識を無くして1週間後
誰かが俺の手をギュッと握りしめた
三途の川が見えていた訳では無いが
その瞬間俺は シュッ と
この世に引き戻された感覚が起きて目を開けた
目の前には刎頚の友と呼べる俺の親友と
その娘ちゃんがいた
娘ちゃんは俺の変わり果てた姿に驚いたのか
泣きながら走って部屋から出ていってしまった
ぼやけた視界の中で親友は笑顔で手を振っていた
なぜか俺の頬を一筋の涙が伝った
あれは何の涙だったのだろうか 今でも分からない
これは俺にしか分からない体験
言葉では表現出来ない出来事だが
間違いなく俺はこの親友に この世に引き戻された
誰が手を握っても目覚めなかったのに
親友の握る手で意識を回復するとは
神秘的なものを感じた
そして奇しくもこの日は
破綻した女房との結婚記念日でもあった
俺の中ではここで死んだと思っている
親友に引き戻されたのだと今でも真剣にそう思っている
どうせ1度は死んだ身
今生きている日々は人生のおまけだと
たまにTwitterでも呟くが
そう言っているのはこの事があったからだ
その後一般病棟へ移ってから人工透析を繰り返した
週3回 1回に5時間も6時間も透析する日々が続き
毎日が憂鬱だった
その後医師から言われたのは腎臓が回復しないので腕にパイブを埋め込み透析センターへ通ってもらうと言われた
俺は最初何を言われているのか理解出来なかった
「先生、俺は一生透析するんですか?」
「そうだよ。透析センターは全国にあるから心配いらない。週3回透析だね」
俺は現実を知らされ 終わったと感じた
しかし退院間近になって腎臓の数値が正常に戻りつつあり医師が「あれ?透析しなくても大丈夫かも知れない。退院して少し様子を見ましょう」と言った
結果的に俺は透析する日々から逃れられた
病院のベットの上で全く動けない日々を過ごすと
好きな時に空気を思い切り吸い込んだり
好きな街を散歩したり
思いっきり笑ってみたり
そんな当たり前の日常がどんなに尊いかを痛感する
今生きていられる事だけで幸せと言えるのかも知れない
俺の中では どうせあの日死んでいたはずの命
今は人生のおまけを生きてる
俺はガキの頃はホームレスだったし
元々何もなかったんだ
ならばたとえ小さな事でも誰かの役に立って死のう
そんな想いを抱えながら今を過ごしている
自分が悪さしてきた償いでもあるのかもな
それが自己満足と言われようが誰かの為になるなら
それで構わない
今はまた別の大腸の難病が再発中で動きが取れないが
回復したら誰かの役に立てる生き方をしよう
おまけの人生よ ありがとう
どうせなかった命なら 怖いものなんて何もないさ
今日も生きていられる事に感謝