見出し画像

オープンバッジの可能性を考えてみた

 先週8月8日(木)、一般財団法人オープンバッジ・ネットワーク(※)主催のセミナー、「大学におけるオープンバッジ活用セミナー 〜成城大学〜」を聴講しました。
https://www.openbadge.or.jp/index.html

 セミナー冒頭で、オープンバッジ・ネットワークの現在の会員数の紹介がありました。学校が116、企業が107でその他もあわせて300超になっているそうです。また、 財団はISO27001、27017の認証を取得済でOpen Badges v2.0でサービスを提供しているとのことです。

 さて、今回こちらのセミナーに参加した動機は大学がどのようにオープンバッジを活用しているのかを聴ける貴重な機会になるなと思ったところからでした。 紹介された成城大学の活用事例について少し紹介します。

 成城大学は2021年秋から発行開始しており、その導入・運用方針は以下の通り。私のメモなので、詳しくはこちら↓の記事をご参照下さい。

https://www.openbadge.or.jp/case/case_detail/case_seijo.html

・広い意味での学びの記録(デジタル証明)として位置付ける。
・多種多様な学び、および学内での活動を対象として発行する。たとえば、授業修了の証明として以外にはTeaching Assistant、学部生や院生が講演会へ登壇して講演することなどに対しても交付の対象にしている。
・学内できめ細かく発行基準やレベル合わせをするよりも、学生がどのような学習、学内での活動をしてきたかを証明する(改ざんできない)と位置づけし、発行は各学部、各センターがそれぞれ自律的に発行している。
・学部内、センター内という各組織内での自己完結での運用とし、大学共通の発行基準を設けたり、発行にあたっての選定管理はしていない。強いて言えば、学長室が学校全体で何が発行されているのか把握しているくらいの緩い管理運用に徹している。
・課題としては、まだ学生の就活においてオープンバッジが十分に活用されていない点。ここは企業側との認識が揃う時期を待つしかないと認識している。
・また、ウォレットを作るのが面倒である感じる学生も一定はいるようで、オープンバッジの発行を受け取らない学生もいる。
・オープンバッジの社会的な普及、特に採用活動、就活の中での活用が普及するよう、学校教育機関としては大きな期待を持っている。

 企業も人材育成においても様々な研修プログラムを実施しています。成城大学の事例から学びたいと思った点は、
・オープンバッジはまだ普及期前であり、まずは使ってみることを重視する
・各学部や各センターの自律的な運営に任せている
 という点です。

 企業の中で始めようとすると、
① 何をオープンバッジ発行対象とするか、その選定基準作り
② 発行するオープンバッジのレベル合わせ(ランクを設ける場合)
というあたりで色々な議論が錯綜し、なかなかスタート出来ないという状況に陥りそうです。
 後々のことを考えて発行基準や発行するオープンバッジのレベルについての議論が必要であるとは思う一方、オープンバッジ(デジタルバッジ)はいまはまだ普及期前であることを考えると、
1.まずは発行してみる。
2.発行したデジタルバッジがどのように活用されていくのかを検証する。
ことが大切かなと考えます。
  発行するバッジのレベル合わせという議論については、成城大学は「いまはそこにこだわるよりも、オープンバッジを使って自分の学習履歴をデジタル化して、ポータブルにするメリットを訴求し、学生への発行を行っている。敢えて言えば、発行年度の数字はバッジに記載していて、いつ、何を、の程度はバッジで分かるようにしている。現状、その講座やテスト修了のレベル感は揃っているかと言われるとそうではないことは承知の上で、それでもNFTを利用したオープンバッジを得て自身の学習活動を表現する、履歴をポータブルにできるデジタルのメリットを追求している、と説明されていました。

 学習や活動の記録を学校が厳密に管理するという視点よりも、NFTで発行されるオープンバッジは改ざんできない記録として、かつ、ポータブルに利用できることから、本人は自身の学習や活動の履歴の確かなエビデンスとしてレジュメやプロフィールに記載することができるようになります。成城大学はその優先順位を高くしているように思いました。
 実際、就活のレジュメにオープンバッジを貼り付けたことで、採用面接で「このバッジのプログラムはどのような内容なんですか」という質問が得られて、長々と文字で表現するよりもアイコニックで良いというフィードバックもあったようです。

 こうした事例を通じて思うことは、これまでの学習記録・活動記録は企業の中で閉じて管理されており、本人が社会で活用しようとしたときに何ら証明してくれるものがなかった(もちろん本人は履歴書やプロフィールに記載することはできます)ところが、今後はこのようなデジタルバッジを使えば、発行母体による確かな、改ざんできない証明を本人が利用できるようになる。
 
 こうしたデジタルバッジ(NFT)が普及し始めると、スキルの可視化さえも大きく変わる可能性があるかもしれません。
 人的資本経営の中でもスキルの可視化とスキル・ドリブンの人材マネジメントは大きな課題として認識されているところですが、可視化するためのスキル・カタログの作成に手間取ってしまう現状もあります。
 こうした課題や悩みに対する一つのアプローチとして、改ざんできないデジタルバッジ(NFT)で証明される学習履歴や活動履歴があれば、その証明されたプログラムの具体的な内容を参照して、LLMがその人の現時点の学習済・習得済スキルを表現し、記述してくれることは可能だろうと考えます。さらにはデジタルバッジと職務内容を突き合わせ、ジョブやタスクとのマッチングについてもLLMが助言可能になると思えます。

 デジタルバッジは単に修了書として機能するだけでなく、それ以上にスキルを活かして働く機会を見い出すためのこれからのソリューションに欠かせないものになるような気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?