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A Song for xx

浜崎あゆみの1st Albumタイトルでもあり、プロローグを除くとまさに1曲目でもあるこの曲を、初めて聴いたのは1999年1月の発売から数ヶ月経った頃。同アルバムのすぐ後にリリースされたシングル『WHATEVER』で浜崎あゆみと「出逢った」私は、まだ彼女の歌をラブソングの一種としか捉えられていなかったから、この曲を聴いたときに当惑を覚えた。ここで歌われていたのは、誰かへの愛でもなければ自分への愛でもなく、成長する自己を受け止められない苦悩であったからだ。これを歌にする人がいて、しかもそれが流行りの歌としてAvexという、当時J-POPのメインストリームになろうとしていたレーベルから出ていることも不思議だったし、「カリスマ」なんて言葉でファッションのアイコンにもなっていった頃だったから、自分の中でだけ聴いていたのだけれど、この出逢いがなければ今の自分にはなっていないと言い切れるほど、10代の私は彼女の歌とその裏にある精神性に支えられて育ったと言える。

昨夕、同曲のライブだけを15テイク並べた映像が公開された。20年来聴いてきた人間が受けた感覚を、半分は自分の内省のために、そしてあと半分はタイトルの通りどこかの誰か「xx」に届くように、聴きながら走らせたメモを清書しておきたい。(タイトル前のタイムカウントもYoutube記載の通りに残しておくから、気になったテイクだけでも聴いてもらえたら有り難い)。

『「A Song for ××」COMPLETE 2000-2018』
1.00:00:00 ayumi hamasaki concert tour A 第2幕:苦悩と不安。エンディングの太陽フレアが印象的。


2.00:05:11 ayumi hamasaki countdown live 2000-2001 A:革命の狼煙。


3.00:10:18 ayumi hamasaki DOME TOUR 2001 A:静けさから見え隠れする強さ。翌年のシングル『Free & Easy』に通じる旗のモチーフ。


4.00:16:52 ayumi hamasaki ARENA TOUR 2001 A:優しさ。戦士が闘っているのは自分自身の心と過去。心技体そして東西の融合。


5.00:25:33 ayumi hamasaki LIMITED TA LIVE TOUR:バラードベスト『A BALLADS』versionの新境地。SimpleなRockによる芯の強さ。


6.00:30:58 A museum ~30th single collection live~:無伴奏での歌い出し。自分の内なる声を冷静に聴ける高い視座。


7.00:36:16 a-nation '06:上手さや綺麗さ、つまりは無難さとは真逆のテイクを、敢えて自分のファン以外がいるイベントの場で選んだことで、「浜崎あゆみここにあり」と表明している。それはAudienceへの挑戦でもあり、一人一人を奮い立たせる意図もあったのではないか。


8.00:41:23 ayumi hamasaki BEST of COUNTDOWN LIVE 2006-2007 A:4.のリバイバルversionは語りかけるような声で歌うメロが印象的。2001年は手枷を思わせた手首の布は黒から白になり、天へ繋がるモチーフにも見える。


9.00:48:05 ayumi hamasaki ASIA TOUR 2008 ~10th Anniversary~:凱歌のような歌い出し。風に向かって立つ獅子。一人で生きていくことさえ誇りに思う強さ。幕が下りる前に引き、舞台から消えても伝えられる在り方。


10.00:55:12 a-nation '08:天の恵みを全身全霊で受け止める。本人が最も印象に残っているテイク。


11.01:00:19 a-nation '09:サポートメンバーによる歌い出し。静と動のコントラスト。バンドメンバーとの近い距離感。Audienceを見渡せる姿勢。


12.01:05:59 ayumi hamasaki 15th Anniversary TOUR ~A BEST LIVE~:アレンジを含め大幅に改変され、群を抜いて格好良い。十字架から降り、ペルソナの数々を脱ぐ覚悟。15周年だからこそ出来る表現と説得力。物語の中に生きるのではない、というYuval Noah Harari『21Lessons』第20節を想起。歌い終わりまで舞台に残り続けることにも決意を感じる。


13.01:11:30 ayumi hamasaki ARENA TOUR 2015 A Cirque de Minuit ~真夜中のサーカス~:混声コーラスの採用とバンドメンバーも変化も受容。白い布と風、そして裸足に地に足をつけ、横たわる姿勢は、ここへ至るまで10年来の高みから再来した存在として意味を持つ。


14.01:17:27 ayumi hamasaki Just the beginning -20- TOUR 2017:手を差し伸べる歌にまで昇華した。そこにいたAudienceさえ自分の20年に重ね合わせられたのではないか。長年、跪いて歌ってきたラストのパートで、立ち上がり高らかに歌い上げる姿。


15.01:23:36 ayumi hamasaki ARENA TOUR 2018 ~POWER of MUSIC 20th Anniversary~:ストリングスと炎の中、声を集める仕草。自他を超越し、多元的に行き来している世界観。これまでスパイラル状の階段を上ってきた末の原点回帰したアレンジは、懐古趣味ではなく、次なる展開を予感させる。

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