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地球

[加古里子 ぶん/え  福音館書店]

てんぐちゃんの作者であるかこさとしの科学絵本を読んでいると、手塚治虫の顔を思い浮かべてしまいます。日本には天才がいます。子どもにも読めておとなの鑑賞にも耐える、どころか、おとなになっても何度も読み返し、そのつど理解を深めていく作品を描く人たち。マンガを、絵本を、どれだけ勉強探求して描いていたのでしょう。

それにしてもこの『地球』ですが、私は聞きたい。いったい何歳の子どもを対象に描いたのですか?と。本文はひらがなとカタカナだけです。でも、汚水浄化槽、都市ガス主管、通信中継機、ピア基礎、沖積層、逆断層、貫入岩体、斜坑、餅盤、モホロビチッチ不連続面、マントル対流、内核、太陽系、彗星、公転周期、などという言葉が絵の解説として書かれている絵本て、いったい。

春の野原のページではふきのとうの根の長さ太さ、かんとうたんぽぽの根の長さが描かれています。もんきちょうの大きさまでも。春の野原に生えている植物や地中の虫や飛ぶ鳥、すべてに名前と大きさが書きこまれています。

そこからどうやって、マントルの話まで続いていくのか。子どものころ読んだ方に教えてもらいたい。飽きずに読めた?面白かった?

おとなの私は1ページごと、ゆっくりと絵と言葉を追いました。でも、ああもし子どもの頃一緒に読んでくれる大人がいたら、どんなに面白かったでしょう。もしかしたら、理科が好きになっていたかもしれません。それとも、こんな本つまんないや、と思ったかもしれませんが。でも私は春の訪れをオオイヌノフグリの水色の花の色で気づいた昭和の子どもです。ページを追い続けて、途中から飛ばし読みしたかもしれませんが、この絵本のことは、この絵本に描かれていることはきっと一生忘れないで、脳のどこかに埋めておいたのではないかと信じたい。

そうか。だからこの絵本は未来の子どもたちに手渡さなくては。いや、もっとのんびり、一緒に眺めているだけでいいのかな。だって絵を見ているだけでも十分なんですから。   これは絵本なんですから。

そしてここは知りたい、と思ったときはそこに小さく書きこまれたモノの名前を読むことができるのです。巻末には解説とさくいんがついています。  絵本なんですが。 (み)                          

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