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ディストピアパレード

どうも。
ケンジゾンビです。

今回、この記事を書く理由は、どうしても新しいアルバムについて思うことを言語化しておく必要があると思ったからです。

最初に言っておきます。
この記事、めちゃ長くなると思います。
あと、ツイッターで前に言ってた内容と重複する部分もあるし、そうじゃなくても同じこと何回も言う可能性があります。

シラフです。
テンションに任せて書いてるわけではないです。

冷静なテンションで、アルバムを出したときの気持ちがいつかフェードアウトしていく前に、感じたことやエピソードを書き残しておこうと思ってます。
備忘録的な側面があったり、ドキュメンタリーやったりもします。


2022年12月21日。
アルバムを出しました。
相方のボーカル、アリサゾンビの誕生日にリリース、同日レコ発もしました。
エレママこと、ELECTRIC MAMA、3年ぶりのフルアルバムです。

タイトルは「Dystopia Parade」。
読みは「ディストピアパレード」。

意味は、ディストピア=暗黒郷
パレード=大行進
みたいな感じです。
暗黒郷大行進です。


まず、このアルバムのどこがそんなに大事なのか、自分で考えてみました。
簡単でした。
2020年ぐらいから、日本に限らず世界中で、それこそ「時代の変わり目やな」って誰もが感じる世の中になってきたと思う。
何も考えずに暮らしてたとしても、幼稚園児や小学生だったとしても、疑問を感じずにはいられない世の中になったような気がする。

そんな世の中でも、ぼくらエレママは幸いにもずっと元気にライブも制作もやってきた。
ブレずに、止めることなくやってこれました。

今回のアルバムは、その「時代の変わり目」的なもんを超えてからつくった曲ばっかりです。
(9曲目の「The Wall」以外。これにはこれで意味がありますがのちほど。)

エレママは変わらず、ブレずに、むしろ仲間も増えてずっとそのままやってきたんやけど、唯一変わったことがあるとすれば、自分の曲に対する向かい方かもしれん、って思ってます。

時代の変わり目を超えて、みたいに大げさに言ってみても、別に自分を含めみんなそれぞれ生活を営みながら変わらず過ごしてるんやけど、感じた違和感や静かに迫ってくる危機感、それと対峙していく気持ち、「そんなもんぶっ倒したる」っていう気持ち、そんな世界でも「みんなで生きていこう」「それでもみんなで楽しもう」っていう気持ち、みたいなもんが湧いてきたわけです。

曲をつくるときに、そういう気持ちが無視できんくなってきたんですね。

いろいろ思ったわけです。
多分ぼくは、「泣きながら踊れるような曲」が聴きたいんかもしれん。
「わかるよ、いろいろあるよな、腹立ったり悲しいこともあるよな、でも元気だしていこや」みたいな。
「最悪な世界やとしても、それでも今ここは最高やんか、大丈夫や」みたいな。
そういうことなんやと。
そういう曲をつくろうと。


アルバムには、2020年以降に配信シングルで出した「Ley Line」「Addiction Q」「Cosmic Zero」「Planet Nine」の4曲、新曲5曲、それと2008年にリリースした「The Wall」の再録の10曲が入ってます。

ちなみに、エレママのレコーディングを解説すると、まずぼくがMacでドラムなりベースなりシンセなりを打ち込んで、土台になるトラックをつくる。
それをアリサゾンビに渡して、アリサゾンビが歌詞とメロディーをつくる。
それをぼくが調整する。
最後に、ぼくのギターを録って、ミックスとマスタリングをする。
という流れです。

エディターもエンジニアもぼくです。

ではでは、順番に書いていきます。

まず、このアルバムの中では「Ley Line」を2020年に配信リリースしました。
ぼくらなりの、祈りや願いのようなものです。
そこまで荒ぶりもせず、静かに穏やかに、いつか終わるであろう混乱を静観したような、見守るような。
今思えば、ここが始まりでした。


次に「Addiction Q」。
2021年の夏に出しました。


この曲は、昔出した「Zombie」っていうアルバムに入ってる「Addiction」のリメイク。
今の気持ちや感覚に合うように、要所要所をつくり直してます。
世の中の空気感とこの曲がリンクしたというか、なんかこの曲に呼ばれてるような気がした。
この曲は、制作に8ヵ月かかった。
びっくりですね。
ちゃんと仕上げたかったんです、気持ちがでかくて時間かかりすぎました。

で、話は変わります。
「Addiction Q」はリメイク曲ですが、そもそも昔の「Addiction」自体がリメイクなんですね。
20年前にやってた、結成から解散まで8ヵ月で終わった前身バンドの、最後につくった曲。
当時の曲名は「車輪」、よくもまあここまで転がってきたな車輪。
名前は変わったけど。
ヒリヒリする感じ、好きな曲です。


その年の年末、「Addiction Q」のキツさも冷めやらぬうちに制作し始め、2021年12月21日・アリサゾンビの誕生日に配信リリース(レコ発も最高でした)したのが「Cosmic Zero」。


なんというか、疑問や怒りや衝動やその先にある希望みたいなのが塊になって「ドーン」ってなった。
「行くとこまで行け」って感じの気持ちです。
薄暗い世界を突っ走っていくしかないし、突っ走るためのエネルギーになればいいなと。
この曲が好きって人が多くて嬉しい。
なんか、ありますよね、エネルギーが。
とてつもない感じが。
この曲も、相当時間かかりました。
「Addiction Q」リリース後、すぐに取りかかったんですが。
業者への音源の入稿があと30分遅れてたら、リリース間に合わないところでした。
もう、確実に言えるのは、この年から制作に対する時間と予算とエネルギーの感覚がバグってきてます。
それでも、みんなが喜んでくれたらがんばれるんですけどね。
ギリギリ産み出してます。


その半年後、2022年6月20日、ぼくの誕生日にリリースとレコ発したのが「Planet Nine」。


絶望と希望って、表裏一体なんです。
ほんのちょっとでも光が見えてたら、意外となんとかなったりもする。
小さくても光があるっていうことがいちばん大事。
あんまりいろいろ語りすぎたら曲解説みたいになるからこのへんで。
いままでいろいろ言ってきた曲も、いろんな角度からいろんなメッセージを込めて、できるだけ具体的な表現をせずに聴き手に解釈を任せられるようにつくってます。
聴いた人の心の中で完成すれば嬉しいなと思ってるから、どんな解釈でもいいんです。
ぼくらの何かが引っかかれば。
あと、レコ発、良い日でした。
自分の誕生日にライブするのははじめてでした。
とても良い日でしたね。
酔い潰れました。
そして、説明するまでもなく、このリリースも超ギリギリでした。


そしてそして、この年の年末。
またちょうど半年後、再びアリサゾンビの誕生日。
2022年12月21日。
アルバム「Dystopia Parade」リリース、同日に 北堀江 club vijon でレコ発。
満員御礼でした。
ほんまにありがとうございます。
ほんまに良い夜やったし、これを更新することがひとまず目の前の目標です。


ほんで、このアルバムについて話すということは、ここからが本題。
もう、ほんまにいろいろありました。
バンド史上いちばんキツい時期やった。


2020年以降、ありがたいことに、ぼくらのライブの本数は、多分2倍〜2.5倍ぐらいになった。
今まで一緒にやったことのない対バンも増えたし、いろんなライブハウスに声かけてもらったり、ぼくらのことを知ってもらう機会が増えてほんまにありがたい。

ライブは活動の中心やから、そこは緩めずに、並行して制作も進めた。
が、しかし、しかしですね。
さっきから書いてるように、全曲めちゃ時間かかってる。
今までのアルバムも時間かかってるけど、それでも1枚のアルバムを半年ちょっとで完成させてた。
今回、1曲に半年とか8ヵ月とかかかってるやつがあるんですね。
冷静に計算したら、普通に無理なやつです。

それでもやりたかった。
ちゃんとフルアルバムを完成させて、流通させて、レコ発もしたかった。
今まで配信リリースした曲と新曲を合わせて、フィジカルでリリースしたかった。
やっぱり、ライブハウスに来てくれる人って、音源はCDでほしいもんです。
ほんで、せっかくつくるなら、曲は多いほうが良い。
アリサゾンビに「曲数減らしてミニアルバムかEPでもええで」って言われてたけど、心の中では「なめてもらっては困るな〜」などと思ってました。
いやいや、ぼくのほうこそ、なめてましたね。
ここから先に待ってる厳しさに、ほんまに気づいてなかったんやなと。
やる気と衝動だけで乗り切るには、あまりにもハードルが高かったです。


「Planet Nine」をリリースしたすぐ後、新曲を5曲録ることが決まってた。
その時点で決まったというより、もっと前からフルアルバムをつくることは決まってた。
が、その時点で新曲は1曲もない。
8小節ぐらいの断片的な音ネタみたいなのがあるくらい。
「どうするねん」って感じですね。
やるしかないんです。


ライブ、制作、ライブ、ライブ、制作、みたいな感じで、どんどん時間が過ぎていく。
もちろん、ライブは一本一本しっかり演るし、制作も丁寧にやる。
土台や骨組みらしきものはできても、曲としては何も完成せんまま、残酷に時間が過ぎた。

話は変わるけど、この2〜3年急接近というか、今までより距離が近くなって仲良くなったバンドがいくつかいます。
そのひとつがハイファイコーヒーズなんやけど、お互いの企画も出たり、一緒に遠征したり、リリースのタイミングも近かったりで、なんかシンパシーを感じてる。

対バンしたらいろいろ話すし、ぼくらの近況も知ってる。
結構前から新曲の進捗がやばいやばいってぼくが言ってて、そのあと8月中旬ぐらいにエレママが堺 ファンダンゴに出たとき、ハイファイのボーカル・マリちゃんが観に来てくれた。

「今何曲できた?」
マリちゃんに聞かれた。
「まだゼロ曲」
って答えた。

ハイファイはぼくらより1ヶ月早くアルバムをリリースすることになってる。
全曲録れて、あとはミックスすれば完成らしい。

ぼくらは、10曲中4曲しかできてない。
配信ですでにリリースした曲のみ。
新曲はゼロ曲。
ちょっと泣きたくなったけど、泣いてもどうにもならん。
やらねば。
ファンダンゴのバーカンで売ってたキャベツ太郎をマリちゃんにあげた。
その日はひさびさのファンダンゴやったし、ビールを飲んでほどほどに酔って帰った。


さてさて、エレママは(というかバンドは)ライブハウスのブッキングでもオファーを受けるし、バンド主催の企画でもオファーされる。
どっちも大事やけど、ぼくらも企画をしてるから、バンドが企画をしようっていう気持ちやモチベーションがもちろんわかる。
誘われたからには、出演が決まったからには、ちゃんと応えたい。
ブッキングも企画も。
2022年下半期、出演したライブはいつも通りにどれもしっかりと演った。
制作のほうは、全然終わりが見えんかった。
ライブの本数も特に減らしてないし、いよいよ絶望的になってくる。


10月末、北堀江 club vijon ギターバトルに出た。
というか、毎回出てます、ここ5回は連続で。
年に2回開催のギターバトル、この日は決勝戦。
ありがたいことに優勝しました。
嬉しかった、ほんま嬉しかった。
ギターバトル前は特に、ギターを練習する時間が増える。
練習したからといって優勝できるもんではないけど、練習時間はやっぱり自然に増える。
そう、1曲もできてないのに。

いや、正確には1曲はできてたか。
でも、ギターを録り終わってなかったから、まだできてないか。
さすがに参った。
未完成のトラックのみなら、全曲分ある。
この時点で曲としてほぼ完成してたのは、アルバムのタイトル曲でもある「Dystopia Parade」だけでした。
この曲だけでも完成させる必要がある。
なぜなら、MVを制作していただくからだ。
音がないと、イメージは伝わらない。
MVについてはあとで触れるけど、いつも音が仕上がるのが遅いのに、かっこいい映像ありがとうございます。

残りの曲は、途中までできてるトラックと、それをアリサゾンビに聴かせて考えた歌、あとはまだ録ってないけど脳内で鳴ってるギター。
これを形にする。


11月。
本格的なピンチが到来する。
他人から見てもピンチ、具体的なやばさを把握してるぼくから見れば、余命1ヶ月みたいな感じ。

話がワープします。
ぼくは、高校3年の頃、留年しかけた。
補習をフル出席して、おそらくお情けで卒業できた。
どう考えても、普通なら留年のところを。
ピンチの体験として、記憶に刻み込まれてるんですね、このエピソードが。
制作の納期がやばい、ってなると、留年する夢を見ます。
実際には卒業したのに、夢では留年。
何回もこの夢を見ました。

さっき、余命1ヶ月って言ったけど、実際11月末に音源やジャケット、諸々完成してないとリリースが間に合わない。
締め切り日、11/30。

CDプレス業者さん、流通業者さん、双方に何度も連絡して、流通に間に合う日程を逆算したらこの日やった。

エレママは、制作も流通も宣伝も、全部自分たちのレーベルでやってます。
スケジュールも、連絡も、全部自分たち。
もちろん予算も。
この時点で、実はレーベルは自滅寸前です。

やばさがピークにきた。
アリサゾンビにもいろいろ相談した。
何も文句を言わんかった。
それどころか、この期に及んでまだ「10曲入りのフルアルバムでリリースする」ってアホみたいに言ってたぼくに賛成してくれた。
すごい人や、ほんまに。

締め切りまで1ヶ月を切った。
ほんまの意味で、狂った毎日が始まった。
予算も使いすぎてるし、残された時間も笑えんレベル。
お金も時間もない。
そういった理由で、菓子パンばっかり食べるようになった。
安いし、カロリーが高いし、早く食べれる。
20代前半のフリーターみたいな考えやけど、食べる時間も寝る時間も、何より使いすぎた予算が惜しかった。

つくりかけのトラックを、ひとまず全曲仕上げた。
ギターはまだ録ってない。
もちろん歌もまだ。
ここから残り4曲録る。
脳内で鳴ってる4曲を録れば完成。
めちゃくちゃ急いでる。
でも、丁寧に、絶対妥協せずに仕上げる。
今までそうやってきたし、これからもずっとそうしていく。
どんな状況でも、音源は最高じゃないとあかん。

狂ってる。
ほんまに狂ってる。
でも、リリース日もレコ発も決まってるし、リリースを前提に話を進めてる。
流通業者の方には「あれだったら、リリース日を延期しますか?」と提案された。
そう思うのが普通だろう。
残念ながらぼくは、普通じゃない。
そういう曲、あったな。


こんな状態でツアーもした。
もう、金銭的には、菓子パンを食べる余裕もなかった。
6枚切り100円の食パンばっかり食べるようになった。
カロリーを補うために、マヨネーズをかけて食べた。
そればっかり食べてツアーした。

「アホやな〜」ってさすがに思う。
もう、ネタとして話してます、ほんま。
でも、真剣にこれやってたんです。
食パン、しばらく食べたくないです。
それしか食べれんようになったらまた食べるかも。
そうならんようにします。
11月後半、なんとか食パン生活は脱出した。

そうこうしながら、歌はアリサゾンビの気合いで全曲録った。
ミックス、マスタリングも並行して進めた。
ギター録りはぼくの作業になるから、最後に回した。

最後のギター録り。
遠征のライブ後、どうしてもそのまま寝ずにギターを4曲分録る必要があった。
そのタイミングで録れてなかったら、絶対にリリースが間に合わん。
徹夜して、次の日の夕方まで録った。
結果、あと一歩のところで、ギター録りは終わらんかった。

「何言ってん、アホちゃうん」
って思いますよね。
もちろん、ぼくも思います。
でも、ちゃんと双方の業者さんと合間に連絡を取ってました。
1日だけなら締め切りを延ばせるそうです。
運が良いな、エレママ。
しぶといな、エレママ。
寝てなくて思考回路が限界やったけど、ちゃんと電話できてよかった。
大阪への帰りの車で爆睡しました。

11/29、帰宅。
残りのギターを全部録った。
ミックスとマスタリングも終わった。
ここに至るまでに、合間にちまちまやってたジャケットや歌詞カード、盤面等のデザイン物。
こういうのも、全部ぼくがやってる。
曲同様、装丁も丁寧に仕上げる。
デザイン物の総仕上げにかかる。

11/30。
本来の締め切り日。
1日締め切りを延ばしていただいたから、翌日の12/1が締め切りだ。
あとはマスター音源をCDに焼いて、それをプレス業者さんに送る。
翌日のお昼の時点でプレス業者さんに届いてないといけない。
普通に送ると、100%間に合わない。

ここで登場するのが、ヤマト運輸さんのタイムサービス。
料金は結構高いけど、翌朝届けてくれるすごいサービス。
実際、知る限り最速。

でも、ここまでくると、慎重になりまくって、最悪のケースも想定する。
「もし間に合わんかったら?」
ぼくは、一応最寄りのヤマト運輸さんの営業所に電話した。


びっくりした。
ブラックフライデーの影響で物量が増えてて、翌朝間に合わん可能性があるらしい。
電話してよかった。
ほんまによかった。
ほんで、ヤマト運輸さん、おつかれさまです。

ぼくは決めた。
夜行バスで直接、東京のプレス業者さんまで持っていくことにした。


11/30 夜。
マスター音源と着替えだけ入ったカバンを持って、夜行バスに乗った。
もう何日も布団で寝てないから、寝過ごさんように、終点が東京駅のバスを選んだ。
そういえば、バンド結成1年目のツアー、夜行バスで行ったな、狭くて安いやつで行ったな、とか思い出した。
気づけば、東京駅までずっと寝てた。


12/1。
東京、朝6時半。
天気は曇り、めちゃくちゃ寒い。
これからぼくは、五反野というところまで向かう。
東京はいつも車で行くから、電車がよくわからん。
業者さんには昼頃までに渡せばいいし、ビルの集合ポストに投函してくださいって言われてる。
時間はたっぷりある。
乗り換え案内をアプリで調べて、五反野に向かった。

電車を降りる。
とにかく寒い。
グーグルマップを見る前に、暖をとりたくなった。
改札を出るとすぐに、立ち食いそば屋があった。
安いし、あったかい。
吸い込まれるように店に入って、そばを注文した。
こんな寒い朝に食べる、熱々のそば。
染み渡る。
めちゃうまでした。

さて、グーグルマップを見る。
何かがおかしい。
目的地が表示されない。
もしや。
ああ、もしや。
ぼくは気づいた。
ここは、「五反野」ではなかった。
「五反田」やった。

いや、めちゃくちゃ紛らわしいし、ほっとして立ち食いそばまで食べたし、ほんで方向も全然ちがうし、うむ。
全部自分が悪い。
朝早くにそば食べただけやった。
そば、おいしかったな。
安いし。
大阪と東京は出汁が全然ちがうけど、東京の濃い出汁はそばに合うな。
そんなこんなで、五反野に向かう。


五反田から五反野までは、一時間くらいかかった。
駅から歩いて近くはないけど、かと言って遠くもないところ、静かなところにプレス業者さんのビルはあった。
まだ朝も早い。
ビル1階のポストに、命の次に大事なマスター音源を投函して、五反野をあとにした。
東京に来たけど、静かにゆっくり、意外なほど穏やかに、締め切りをクリアした。


昼バスの予約が埋まってたから、また夜行バスで大阪に帰ることになった。
時間があるから、ぶらぶら歩いた。
東京駅は、大阪駅の何倍か迷路みたいやった。
夜は、サイゼリヤで時間をつぶした。
ハンバーグとラージライスとドリンクバーで800円。
安い。
サイゼリヤ、ありがとう。
ハンバーグひさびさに食べた。


12/2 帰宅。
乗り切った。
やり切った。
ポスターや缶バッジ、ロンTのデザインを業者に入稿した。

いよいよか。
間に合って嬉しい。
でも、プロモーションもあるし、新曲の練習もある。
それに、せっかく流通するからには、店舗やネットでも売れてほしい。
自分たちで全部やるのは、一切妥協をせずに純度の高いものを出せる代わりに、時間や労力や予算、それも自分でなんとかせなあかん。
でも、楽しいです。

こんなに自滅寸前になっても楽しいのは、なんとか乗り切ったからかもしれんけど、多分これを読んでくれてる人は気づいたと思う。

奇跡が起きた。
ほんまに奇跡が起きた。
もちろん、相当がんばった。
がんばったけど、それだけでは上手くいかんかったはず。
奇跡的に間に合ったし、プロモーションなんてほぼできてないのに、いくつかのメディアが取り上げてくれた。
CDショップにも並んだし、試聴機にも入った。
まだちょっと先やけど、テレビとラジオも決まった。
ほんまありがたいです。

奇跡っていう言葉だけで片付けるのもナンセンスな気がするから、思うことを言います。
まず、諦めんかった。
絶対に諦めんかった。
アホみたいに、少年マンガみたいに、とにかく諦めんかった。
あと、これがいちばん大きいです。
みんなの応援です。
いつも、ほんまにありがとう。
レコ発、満員で嬉しかった。

エレママは諦めへん。
応援してくれるみんながおる。
生きてるかぎり、エレママを精一杯やる。
そやから、エレママの曲を聴いてほしいし、ライブを観てほしい。


新曲「Dystopia Parade」。
これは、悶々と、もやもやと、ずっと思ってたことに対する答え。
どんな世界でも生き抜くんや、楽しむんや。
自分次第やし、誰かがちゃんと見てくれてる。
どっかに仲間がおるし、大事なのはお金とかじゃない。
お金がなかったら食パン食べなあかんけど、そのときはそのとき。

「Virtual Reality」
「Gravity」
「Air Alert」
「Finalize」

この4曲も新曲。
ギリギリやけど、丁寧につくりました。
いろんな解釈がある曲ばっかりやと思う。
あえて何も言いません。
でも、しっかりメッセージを込めた。
いろんな角度から、いろんな意味の。
音もしっかり仕上げた。
イマジネーションで楽しんでもらえたら嬉しいです。


そして、「The Wall」。
エレママのターニングポイント。
この曲からいろいろ始まった。
恐れ多くも布袋寅泰さんプロデュースで2008年にリリースした曲。

今でもこの曲が好きって言ってくれる人が多いから、今現在のバージョンで録り直すことにした。

新バージョン、録ってよかった。
めちゃくちゃ良い。
この曲は、めっちゃパワーを持ってる。
ストレートで、前のめりなパワー。
ロックンロールやな。

自分の曲に元気をもらうことがある。
「The Wall」新バージョン、聴いたとき正直泣いた。
音源としても良いんやけど、それとは別に「バンドやっててよかったな」って本気で思った。
いろいろしんどいこともあったけど、あの頃つくった曲は今も元気なんやな、って感じた。

めっちゃ悪戦苦闘しながら完成したアルバム「Dystopia Parade」。
マスター音源を持って東京に行ったとき、できたばっかりのアルバム全曲を、携帯の電池がなくなるまでイヤホンで聴いた。
寒さも眠さもお金のなさも、どうでもよかった。
良いアルバムが完成した。


こんなにギリギリにもかかわらず、MVまでつくっていただいた。
監督は、ぼくらのMVを観てくれてる人にはおなじみ、メトさん。
「Addiction Q」「Cosmic Zero」「Planet Nine」に引き続き、「Dystopia Parade」で4作連続です。

ほんまね、頭が上がりません。
いつも音源がギリギリやから、演奏シーンをスタジオで撮影とか、したことないんですよ。
ライブ映像をいろいろ撮り貯めてくれてて、曲に合わせて細かく編集してくれてはる。
もう、ぼくの音源ができるの遅いのを、あるあるとして受け止めてくれる懐の深さ。
がんばります。

ほんでまた、映像がかっこいいんですよ。
アルバムが完成したのは奇跡や、ってさっき言ったけど、メトさんはいつも音と映像の奇跡のシンクロを起こす。
ぼくらが曲の中で言いたいことを、映像で言ってくれてるんです。
すごいな、いつもありがとうございます。


そんなこんなで、アルバムは無事リリースしたけど、ここからがスタート。
大阪・千葉のレコ発、ほんま良い日やった。
この記事を書いてる今、東京のレコ発直前です。

1/17 渋谷 La.mama

もっともっとたくさんの人にアルバムを聴いてもらいたいし、ライブに来てほしい。

ELECTRIC MAMA は、今年で19周年。
20周年に向けて、まだまだおもしろいこと考えてます。

最高な曲いっぱいつくるし、みんなと最高な時間を過ごしたい。

生きてるかぎり、エレママやります。

これからも、ずっとずっとよろしくです。

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