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『Gandalf2』★★★☆☆(2.9)音楽購入履歴#7

Title:Gandalf2(2007/1968〜71)
Artist:Gandalf
Day:2024/2/3
Shop:disk union shimokitazawa
Rating:★★★☆☆(2.9)

伝説的メロウサイケの後日譚

Gandalf 2

ニューヨークのサイケバンドGandalfが69年にリリースした1stアルバムはメロウサイケの秘宝として、キャピトル3大メロウサイケの一角として、サイケファンに愛される一枚として祭り上げられている(ことだろう)。
僕も数あるサイケアルバムの中でも10本の指に入るくらいには『Gandalf』が好きなわけだけれど、今回買ったのはその後日譚的アルバム。

『Gandalf』は69年リリースであるがレコーディングされたのはフラワームーブメントまっさかりの67年で、まぁレーベルのごたごたがあって69年にやっとリリースされ宣伝もされず全く売れず消えていったという。
1stのレコーディングを終え、68年にはもうバンドはほぼ解散状態にあったようで
その間際に録ったデモ音源やら、ライブ音源やら、バンドのリーダーでありギターボーカル作曲を担当したピーター・サンドの別プロジェクトの音源やらを発掘して編集盤として2007年にリリースされたのがこの『Gandalf2』。

こういう発掘コンピがオリジナルアルバムより良かったり刺激的だったりすることはまぁまず有り得ないんです。
それでもやっぱり
「たった1枚のアルバムで消えていくなんてもったいないよな/せめてもう1枚聴いてみたかった」
みたいな怨念がこういう発掘コンピもので成仏されるのは間違いなくて。

ま、それは大抵
「やっぱあの1枚で終わるべきバンドだったんだ」
っていう着地になるわけなんだけれども。


Gandalf、なんと復活してました

ガンダルフ2021年再結成アルバム

ガンダルフを好きな音楽好きサイケ好きって少ないながらも結構いると思うんだけど、2021年に復活し個人レーベルから『Tears Of Ages』ってアルバムをリリースしたことを知ってる人ってどれくらいいるんだろう。僕は昨日知ってひっくり返ったんだけど。

僕は以前「名盤を紹介しながら相関図を繋げていくブログ」を書いていて、そこでガンダルフについても触れたんです。

このブログは2020年の2月に書いてて、まぁこういうのを書くにあたって一応結構調べたりしたわけで。
その時は再結成のさの字も見当たらなかったしピーターサンドが生きてるか死んでるかもわからなかったくらいで。
いや驚いた。

聴いてみました、その再結成アルバム『Tears of Ages』、Apple Musicにあったんで。
オリジナルメンバーはピーターサンドと鍵盤のフランク・フーバッハしかいないのかな?

まぁ良くはないです笑 歌ってないと歌って下手になるんだな、ってことを思い知らされます。
それでもあの頃のメロウサイケと、老いたピーターサンドの時間の流れが合わさってこれまた奇妙で面白い曲もあったりするんです。
〝The Dolphins〟とか。ボーカルディレイとビートとか〝Golden Earring〟を甦らせようとしてそうで嬉しい。

なんか全体的にはダメなデヴィッドボウイって感じがした笑


瓶の中の稲妻

海外レビューサイトより

この2021年の『Tears Of Ages』の情報があまりにも少ない中、海外のレビューサイトを発見。たったの4人しかレビューしてないし総合点は2.7とやっぱり低いが、面白いレビューを発見した。

「当時のサイケデリックサウンドを甦らそうとしているが、あのレコードが持っていた瓶の中の稲妻を完全に取り出すことはできていない」

なんて的確で素敵な表現でしょう。
調べたら英語で「lightning in a bottle」って慣用句があるんですね。「瓶で雷を捕まえるくらい不可能なこと、あり得ないこと」みたいなニュアンスで使われるみたい。

その不可能に近い奇跡が鳴っていたのが『Gandalf』で、それはもう2度と起こらないことなんだろうな。それくらいやっぱりフラワームーブメントってのは異常だったんだろう、世界各地の瓶に雷が吸い込まれたんだもん。

アルバム概要

Gandalf2 裏ジャケ

2021年って時代だからその稲妻を取り出せなかったわけでもなくて、それは68年〜71年の録音である『Gandalf2』でもそうなんです。
まぁ69年のサイケブームの終焉、というのも大きいんだけどそれは。

『Gandalf』は主にティム・ハーディン楽曲やボナー&ゴードン(〝Happy Together〟を筆頭にタートルズ楽曲等で知られる作曲コンビ)の楽曲で占められていて、ピーターサンドによるオリジナルは2曲のみ。
その点『Gandalf 2』ではピーターサンドのオリジナルが多く聴けることが1つ大きな喜びではあります。

あとガンダルフ解散後もボナー&ゴードンとピーターサンドのコラボレーションは続いており、68,69年にThe Barracuda(バラクーダ)名義でシングルを2枚リリースしてて、そのバラクーダの音源も『Gandalf 2』に収録されてる。

あとはライブ音源が2曲。そのうちの1曲が〝Tears of Ages〟で、これのスタジオ版が時を超えて2021年にようやくレコーディングされたというわけだ。

まずレコーディングが68〜71年ということだけど、どの曲がどの時期のものかは明確にクレジットされていない。
ただピーターサンドのボーカルエフェクトが大きなヒントになっていて、
『Gandalf』最大の特徴でもあるボーカルへの深いリバーブとディレイが残っているのがおそらく68年ガンダルフ解散間際に録られたもので、ボナー&ゴードンとのバラクーダ曲も68,69年リリースなのでどちらかといえばそっちより。
ボーカルエフェクトがないのが多分70,71年のもので、これはガンダルフ名義ではあるがピーターサンドのソロプロジェクトと考えてよさそう。

そんなことで冒頭1.Bird in The Hand なんかは明らかにザ・バンド登場以降の70'sなロックサウンドで、『Gandalf』を知る人からするとおもいっきり面食らう。

CD間違って入ってんじゃないのか、と確認しちゃうくらい。

続く2.Days Are Only Here And Gone が僕の知るガンダルフサウンドなので、
あ、やっぱり合ってたんか
となる。

そんな感じで音楽性ばらばらで曲が進んでいくのでついていけない感は否めない。

ボナー&ゴードンとのバラクーダだが、これもなんかパッとしない曲たち。
特にタートルズでの彼らの楽曲は本当に素晴らしいのでちょっと残念。『Gandalf』での〝Tiffany Rings〟とか美しすぎて昇天するのに。
9.Julie(The Song I Sing Is You)はさすがボナー&ゴードンって感じのポップソングだけど、ガンダルフらしくはないんだよなやっぱ。


あと明らかにアコースティックギター曲が増えてるんよな。やっぱサイケ終焉からの70'sウエストコーストSSW時代突入の流れはニューヨークのピーターサンドにも伝わっていて、そういう変化が見てとれる。
それを踏まえた7.I Won't Cry No Moreなんかは70'sSSW系として聴けば普通に良い曲だったり。


アルバムラストに2曲収録されてるライブ音源はクレジットを見る限りオリジナルメンバーであるので68年のライブだろう。
チャックベリーの〝Downbound Train〟のカバーがなかなかにイカれたサイケアレンジで面白い。


そんな感じですね。
もちろんガンダルフというバンドの後日譚としてめちゃくちゃ貴重な音源たち!
ただやっぱり★★★☆☆(2.9)くらいです。
やっぱり『Gandalf』って奇跡のアルバムだったんですよ。

でももちろん買ってよかった!これを機に再結成してた事実も知れたし、なにより

lightning in a bottle

っていう素敵な慣用句を知れた。

また瓶の中の稲妻を求めてレコード屋に足を運ぶとします。

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