シネマ小並館 その11:親方!空から光が! 『スカイラインー征服ー』と『ダーケストアワー 消滅』

今回は、シチュエーションがよく似た二作のレビューを書いてみる。どう似てるのかはとりあえず後で(って記事のサブタイで少しバレてるが)。

グダグダだがVFXはグー。燃えるラストがもう10分20分早ければ… 『スカイラインー征服ー』(星3)

dTVで視聴。友人の誕生日パーティのためにLAにやってきたカップルが、突如現れた地球外生物の侵略から生き延びるため居合わせた人間とともに苦闘する、という映画。侵略は都市規模、最終的には世界規模だが、舞台はほぼ友人の住む高級高層マンションに限られる。

正直、物語としてはかったるい部類に入る。最初の20分くらいは金持ちのどんちゃん騒ぎに終始するし、エイリアンによる人さらいや人間狩りが始まっても、やや緩慢というかまったりした感じで事態は進む。アクションも後半になるとそれなりに入ってくるが、基本的にそうでないシーンが後半までやや多くて、90分そこそこなのに間延びした印象がする。

前述のとおり、舞台はほぼマンション内で、外が(そして気づいたら中も)敵だらけな限定された空間からの脱出、という緊張感のありそうなシチュエーションだが、これもあまり奏功してない。主人公たちは屋上に出たり車で逃げようとする以外はマンションの部屋にこもりっきりで、同じような内容の口論を二回くらいしてる印象。そんなこんなで残り30分くらいになるまで事態はあまり動かない(何人か死ぬ以外は。しかも何人か死んだりメンバーがそのかわり入っても事態はあんま変わらない)。

そして基本的には、ラスト近くまで主人公たちはほとんどエイリアンに対抗するすべを持たない。後半でエイリアンに対して人間が反攻するシーンが出てくるものの、主人公たちではなく軍である。ラストまでで一番盛り上がるのが軍による攻撃シーン、というのがもにょってしまう(いや、シーン的には十分楽しいんだけども)。

主人公たちが無力なだけならまだいいものの、無策にすら見えてしまう。もう少し、脱出できそうな『穴』を探してそこから出ようとするものの妨害され…みたいな展開が多かったら、そして序盤のどんちゃん騒ぎが半分くらいだったら、と思う。物語的にはチマチマ感とグダグダの極み。もっとも極限状態の人間というのはこういう感じなのかもしれないけれど。

で。
それを補って余りあるのがVFXを多用したシーンである。

もともと監督が各種映画のVFXを担当したりしてたようで、VFXに関してはほとんどチープさを感じなかった。CGで描かれた敵側の飛翔体はマトリックスの『イカ』みたいでそんなにオリジナリティは感じないが、わりと生き生きと描かれている。そしてエイリアンよ兵器のなかにの巨大なバケモノみたい生体なのがいる、というのもナニゲにポイントが高い。わりときちっとしたCGでガシガシ動く巨大なバケモノ!ちゃんと人視点(というかアオリ)の映像がさまになっててグー。そしてひとつの転換点となる『軍の無人機の攻撃』シーンはラストの次に燃えるシーンである。その分主人公たちの無力さが際立つ上に、その後絶望的な展開にはなってしまうのは玉に瑕というかなんというか。

個人的にツボだったのは『すごい勢いで飛んでくるヘリのローター』と『手裏剣みたいに飛んできてデカブツをぶった切るラプター(戦闘機)』。特にラプターが飛んでくるところは『そういう兵器じゃないからこれ』感がハンパないwww
あとヘリが墜落するシーンがあるが、あんまりCGを使ってる感じがしないのもすごい。主人公たちが立てこもるマンションもあれこれダメージを受けるんだが、それら全部がCGで、低予算なのにあまりそれを感じさせないというのはなかなかすごいし面白いと思う。

なんだかんだでVFX目白押しの終盤は燃えるんだが、最後99%絶望的という状況になったと思ったら『不思議なことが起こった!』的に一番燃える展開になるというのはちょっとズルい(ややほめ言葉)。
惜しむらくは、『これ絶対続編作る気マンマンだろwww』と思わせるタイミングでなく、もう少し、10分か20分くらい早くこのシーンが来てくれたら…というところ。

ひとつ気になったところは、主人公の相方が妊娠中(しかもたぶん妊娠初期)なのに、平気でLAまで旅行に訪れた上にエイリアンから逃げる途中で車で事故ったり走ったり階段を駆け上ったりそれなりに激しく動いてるところ。これで最後母子ともに大丈夫なんだからどんだけタフなんだよwww
ちなみに彼女の妊娠を告げられた主人公が『ちっ、早ぇんだよ』ってつれないどころではないひでぇリアクションをするけど、これがラストの『なでなで』のところでキいてくる。もっともその前に彼の変化をうかがえるセリフはあるけれども。

星は5つ中3つ。VFXは星4つくらい物語的には星2つで足して二で割って、みたいな。もしくはグダグダではあるけど見所はあるのでフツーに面白いレベルかなー的な。

別の映画なのにまた空から光が!そして死に方がエグい。『ダーケストアワー 消滅』(星3.2)

この『ダーケストアワー』だが、特にあんまり内容に頓着せず『ロード・オブ・ドッグタウンにジェイ役で出てたエミール・ハーシュが出てるしレンタル200円だから』ということでなにげなくGoogle Playでレンタルしてみたら、これが『スカイライン』にえらく似てたという。

ビジネスのためにモスクワにやってきた男二人が、突如現れた地球外生物の侵略から生き延びるため居合わせた人間とともに苦闘する、という映画。侵略は都市規模、最終的には世界規模で、舞台はモスクワ市街。

こういうふうに書いても話の骨子が似てるところは…
・邦題(原題+漢字二文字)
・飛行機機外から機内へのカット
・親方!空から光が!→実は地球外生物の侵略
・市内の各所から上がる光の柱と吸い込まれるなにか
・閉鎖空間での時間の経過を表す表現がほんのり似ている
・詳しく描写されないが、侵略が実は世界規模
…というところだろうか。少なくとも『空から光が降ってきて、それらが地球侵略の尖兵だ』という端緒のビジュアルは光の色と数が違うくらいでかなり似ている。

じゃあ何から何まで似てるのか、というとそうでもない。主要なアイデアは似ているものの、料理の仕方や雰囲気はそれなりに違ったものになっている。『パトレイバーWXIII』と『グエムル』くらいの違いと言えようか。

スカイラインでは高級マンションという限定された空間を舞台にしていたが、ダーケストアワーではもっと広い『モスクワ中心部』を舞台にしている。広い中心街を移動し、時に身を潜めながら、また遭遇した人々の力を借りつつ、目的である『包囲・侵攻状況からの脱出』をわりとポジティブに果たそうとする。

物語的には、ダーケストアワーのほうがまとまっていて、ちゃんとメリハリがあってグダグダはあまりしない。ただしまとまりすぎているきらいがあるし、終盤に近づくにつれて若干トーンダウンしてしまい、盛り上がりに欠けてしまう。もしかすると終盤の盛り上がりではスカイラインに軍配があがるかもしれない。
その『後半の盛り下がり』については後で書く。

スカイラインでは光る物体が人を吸い寄せて取り込んでしまっていたが、ダーケストアワーの光る物体(実はそれ自体がエイリアン)は大半の時間透明化しており、あまつさえ触ると人が塵になってしまう。その塵になりっぷりがえらいエグい。触ったところからホント一瞬でバランバランに分解されてしまい、塵になったそばから風に吹かれて文字通り『消滅』してしまう。人間の尊厳とかありゃしねえって具合のひどい消えっぷり。しかもその分解っぷりが異様なほどダイナミックなところにどこか底意地の悪さを感じてしまう(誰の底意地なのかはわからんが)。
一応ときどき光を発したり『電磁波を発しているため、近づくと電源の消えた照明や電気/電子機器が反応する』という特徴があるため察知は可能なものの、光の触手を伸ばしてきたり、ミサイルかというくらいの勢いで突進したりもするので、丸腰で遭遇したらまずヤバい。人間のふつうの武器も(初めは)あまり効かないという描写もある。スカイラインのそれと比べると、より不気味で絶望的な相手に見える。
ただし、前半だけは。

主人公たちが立てこもっていたクラブの調理室から出たとき、街にだれ一人としておらず、街中に灰色の塵が舞っている、というのが最高に心地悪い。人がいないというシチュエーションだけならまだいいが、舞っている塵がどう考えても『かつて人間であったモノ』というのがマジでひどいし軽く絶望感がある。

そんなモスクワの街中を主人公一堂は助けを求めて歩くことになるんだが、(ロシアをあまりよく知らない人間からすると)モスクワの街並みはいかにも『異国』という感じがする。見知らぬ、言葉もよくわからない街で逃げ惑うという不安感。しかもだいたいの建物が無駄に立派で大きいというか大仰で、かつほぼ人がいないのも不安感を増大させまくる。なんでモスクワなのかはわからないが、こういう『異国情緒』や『がらんどうになったときの空気感』があるからなのかもしれない。
そういや『キックボクサー』のレビューのとき『映画における異国情緒』はもうなくなりそうなんじゃないか的なことを書いたが、意外とまだまだ『異国情緒要素のある映画』って作れるのかもなぁ、なんて思ったり思わなかったり。

スカイラインでは主人公側はほとんどなにもできなかったが、ダーケストアワーの場合は主人公たちが少しずつエイリアンの習性などを把握し、仲間たちと力を合わせてなんとか対処しながら進む描写が多い。話としてはそのほうがより面白い方向にいくはずだし、実際前述のとおりうまくまとまってて面白いとは思うんだが、実はそれが原因で後半の緊張感が殺がれている気がするのだ。
スカイラインの場合は、はっきりと敵の正体や習性、目的がわからず(映像的には推測するに十分な情報が含まれていたが)、しかも最終的にはよくわからない理由で感動的な展開になった。
ダーケストアワーはどうかというと、光を放つか透明化して襲う敵のにも攻略法らしきものあることがわかり、その方法でダメージを与えると実体化してしまうことが露呈する。またわりと早い段階で意外なものが身を隠すのに有効ということもわかってしまう。侵略の目的も、一応推測ではあろうが主人公が説明してしまう。そして終盤でえらく屈強な方々が心強い仲間になる(それでも人は死んでしまうけども)。
よくもわるくも、というかやや悪い意味で最初の『見えない上に触ると人を粉砕してしまう奴らから身を隠し逃げ延びる』という緊張感は薄れてしまう。実体化したエイリアンの造形もよくわからないフォルム(例えれば妖怪の『輪入道』みたい)だし、スカイラインのエイリアンと比べるとややチープにも見えてしまう。
とはいえ、VFX全般がチープなのかというとそうでもなく、主人公たちの目の前でビルが突然倒壊して川に落ちるシーンは秀逸と思う。もちろん人が塵に粉砕されるVFXも。

あと、90分そこそこの映画ではあるのだが、もうちょっと登場人物を絞るか、出るタイミングを変えてもいいと思った。終盤で出てくる人たちたちはもっと遅くても、もしくは出なくても問題なかったんじゃないか。途中で出てきた『武器』を作ったおっさんを早い段階で退場させず、クライマックスあたりまで出して、クライマックスで窮地に陥ったときに彼らが出てくる(もしくは彼らを出さず、中盤くらいからのメンバーで辛くもなおかつ機転を利かせて危機を脱する)くらいがいいと個人的には思う。

クライマックスも正直押しが弱くて、ちょっとあっさり危機を回避しすぎなのでは、と思ってしまった。もうちょっとピンチになってもよかった(鬼かおれは)。
そしてラストはそれなりに希望を持たせるものではあるが、できれば『反撃の余地がある』ことはもっと遅い段階でわかるほうがよかったかもしれない。もっとエイリアンの『わけのわからないやつら』度が高いままだったら、もっと最後まで面白かったんじゃないか。

スカイラインのグダグダ展開よりはいいと思うが、あまりにもまとまりすぎて、というかきれいにことが運びすぎて緊張感が薄まるというのもちょっと考え物かもしれない。
でも『死に方のエグさ』や『巨大な空間でどこから敵がくるかわからない怖さ』『無人の異国の街』という要素は悪くないと思う。

ちなみに脚本の人はリドリー・スコット監督の『プロメテウス』の脚本も書いているらしい。プロメテウスがあんなにガチャガチャしたよくわからない話になってたのに、こっちはわりとまとまっている展開で、なんだかなぁ…と思ったら、第二稿以降で予算に合わせるべく別の脚本家とともに煮詰めた結果ああなったという噂が。煮詰めてアレか!

で、一応エミール・ハーシュ目的で観たんだけど、ロード・オブ・ドッグタウンやか5~6年たっていい感じにとっちゃん坊やになってますな(?!)。そしてよりレオナルド・ディカプリオに似てきてる感。ただ個人的には目当てだったエミール・ハーシュよりもスカイラー役のヨエル・キナマンのイケメンっぷりが気になってしまったwww 序盤でズルさを見せつけたもののエイリアンの襲撃時にビビりまくって人を見殺しにしてしまい、以降もテキメンにビビり具合を見せつけ、ようやくいいところを見せたと思ったら輪をかけてエグい死に方をする(まず下半身だけ塵にされ、時間差で別のやつに上半身も消される)というヒドい役回りではあるが…

星は3.2。後半の盛り下がりを若干くさしちゃったけど、話の流れとしては無難でそれほど悪くはなくて、面白さにムラのあったスカイラインと比べる全般的に、平均的に面白い感じ、かな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?