9月5日と9月6日と9月7日のこと~その3 体の飢えより娯楽への飢えが早かった話~

9時6日。地震発生から数時間。

朝も明けきったが、仕事もないし電気もこないのでやることもなく、ただただradikoでラジオを流して、今の時点では集めてもどうしようもない情報を集めるだけ集めてぼんやりしていた。

さっきは当日の仕事があるのかないのかで不安になってたが、よくよく考えると自分の炊事は完全に電気に頼ってたのだった。

そう。
って何がそうなのかわからんけど、自分の調理器具はガスではなくIHクッキングヒータ、電気がなければ使えないのだ。

(なおオール電化ではない。なのになぜガスでなく電気に頼ってるのかについては伏せる)

自室内に火を通さず食えるモノはほとんどなかった。あるのはいつも散歩のときに食べる飴ちゃんくらい。いつもなら酒のつまみに買ったスナック菓子がすこしくらい余ってたりするのに、そういうときに限って、ない。

しかもこの前会社の備蓄品(災害時用に非常食や飲料水を備蓄してくれてるのだ)の放出品で乾パンをいくつかもらったのに、数日前に食い尽くしてしまった。

間が悪いにも程がある。

まあ、幸いそれほど腹は減ってなかった。飯のことはまたあとで考えようと思った。

(そして、水のことはすっかり忘れてたという)

次に心配なのがスマホだったものの、幸いうちにはなぜか使い古しのスマホがいくつかある。今使ってるAQUOS Rに、一年前までつかってたV20 Pro、その前に使ってたXperia Z5、そしてそのさらに前に使ってたZenFone 2 Laser。しかもいずれも電池の残量は十分ある。
(さらに言うとiPhone 5sもiPad mini3もあるが、充電してないから使えないしLightningケーブルもない)
さらに10000mAhクラスのモバイルバッテリ(兼LED懐中電灯)もある。無駄遣いしなければなんとかなる、と見込んだ。

ツイッターでは、非常時のスマホのバッテリ対策についてのニュースも流れてきた。

「とりあえず明るさは最小に、バッテリ消費を抑えるモードがあるなら切り替えるべし。圏外になったら潔く機内モードにすべし」

うむ。やっておこう。

「通信時のバッテリ消費を抑えるには、公衆無線LANをうまく使うべし」

そ、それは公衆無線LANを使う以前に無線LANを飛ばすための電気がきてないから…

と、なんやかやしてるときに、経産相が会見で、数時間程度での停電復旧を目指すと話したというニュースが流れてきた。あくまでうまくいけばの話だろ、とは思いつつ、希望は持てた…が、そのことがすこし気の緩みを呼んでしまった気もする(経産相のせいにするつもりはない。自分はなんかこういうとき楽観視しすぎてしまうらしい)。

昼に近づくにつれ、地震や停電、断水の状況だけでなく、避難所や給水所の開設状況、開いてるガソリンスタンド、使えるATM、携帯の充電できるところ…などなどのライフライン情報も揃ってきた。

と、ここで(やっと)思い出したのが水のことである。

液状化現象により水道管が破損し断水が一部地区で発生してると聞いてたのに、なぜか水については頓着してなかった。

水が止まってることに気づいたのは、小便をして流す段だった。水は流れた。しかし貯めてある分が流れただけで、タンクへの水の供給はガッツリ止まっていた。

これも幸いにして、前日散歩する前にペットボトルに汲んでおいた水が1リットルくらいは残っていた。が、飲用ならそれで足りるもののそれ以外の用途に使える汲みおきの水なんてなかった。入浴はほぼシャワーなので、湯船にはつねにお湯がない。

結局、以降の排泄物は、水が復旧するまで流せないままだった。
意外に精神的にキタのがこれだったりする。ぐぬぬ。

でだ。

やることがない。

ひとまず、スマホでやる娯楽はバッテリの損失になってしまうので、数日前になんとなく買ったレンタル落ちの漫画を読んでいた。

まあ、ただ心は落ち着きませんよね。
だって、たまに体に感じる程度の余震くるもんね。

幸い札幌あたりではヤバいと感じるほどの余震は来なかったものの、でも本震であれだけの揺れを体感してしまっては、「ヴヴヴ…」と地面が軽く振動してるなぁくらいの余震でも「ヤバい…」と心が戦慄してしまった。

そして悪いことに、radikoの音声が途切れはじめた。

すこし再生してはバッファリングし、またすこし再生してはバッファリング…を繰り返しはじめた。

今まで安泰だった携帯の電波もヤバいことになってきていたのだ。アンテナ表示が少し弱くなってるだけでなく、いかにも通信に支障がある風の小さなばってんまで表示されはじめていた。

そういえば携帯関係のライターさんもツイートしてた。携帯の基地局にはバッテリが内蔵されてるから、通信経路が問題なければしばらくは使えるが、停電が長引けばバッテリが切れてしまい、通信に支障が出かねない、と。

そうなると、radikoを使うのは心許ない、というかたぶんあと数時間程度で通信自体ができなくなるかもしれない。

ああ、そういやスマホにもFMラジオがついたたのがあったな、と思い出して、前出の四つのスマホからFMラジオがあるやつを探してみた。

自分が使ってたスマホに搭載された機能をろくすっぽ把握してないなんて、と情けなく思いつつ、Xperia Z5とZenFone 2 LaserがFMラジオつきであることを確認。以降はZenFone 2 LaserのFMラジオで情報収集にあたることに。

そして恥ずかしながら、このときまで「ワイドFM」のことを知らなかった。
AMラジオ局で、一部の局や一部の地域でFMの周波数を使って同じ内容を放送するやつである。

FMラジオで局をサーチしてSTVラジオやHBCラジオの音声が聞こえてきたときは何かと思った。

今回の停電期間では、FM専業局(って言っていいのかな?)よりもAM局のほうが、こういうときの情報収集には役に立ちそうだからって、気晴らしに音楽が聴きたいときやワイドFM非対応のラジオを使ったとき以外は、ずっとAM局(特に昔よく聴いてたSTVラジオ)を聴いてた気がする。

そのうち、漫画も全部読んでしまい(全三巻だけど、不安のおかげでろくに頭に入らなかったけど)、猛烈に腹が減った…ということはなく、むしろ娯楽に飢えてきてしまった。

いつもの休みなら、動画配信でバラエティ的なものやアニメやらを観て過ごしたり、酒を飲んだりするのだが、ネット環境もない。酒もない。

娯楽が!娯楽が欲しい!特に動画が観たい!何か動画を!
しかし携帯の電波はおぼつかなくなるばかり。

そういえば、過去にスマホにDLした映画とかなかったか?と思って Google PlayアプリでDL済みの動画を探してみたところ…

ありましたよ。HiGH&LOW THE RED RAINが。

しかしスマホの電池は確実に食うだろうな…だけど電波もろくに入らないから機内モードにして明るさ調整してバッテリセーバー入れたらどうだろう…まあ、早ければ数時間程度で復旧させたいとか大臣さんも言ってたし…

で、結局、電気も電波も期待できない状況下でHiGH&LOW THE RED RAINをほぼ全編観てしまいましたよ。電池? それなりに減りましたけどね、切れなかったし…まあモバイルバッテリもあるし…

そんな経験をしたことで、「災害のときにも、いや災害時だからこそ、娯楽は必要」ってことがホントに身にしみてわかりました。

まあ、ここでむちゃして動画を観たのが後から「きいてくる」んですけどね…

(その4へ続く)

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