シネマ小並館 その2 :異国情緒映画 『キックボクサー』(星3)

ジャン=クロード・ヴァン・ダムというとどうしても『ユニバーサル・ソルジャー』(とか、スーパーヴァンダミングアクション!とかジャンジャンジャジャン…ジャンクロード!とか?)しか思い出せないけど、彼の出世作はこの『キックボクサー』という映画らしい(1989年公開)。はじめて知った。

ざっくりしたあらすじは、狂犬の如きムエタイ選手に兄を下半身不随になるまで痛めつけられた弟が、彼へリベンジすべく現地のムエタイの師匠に弟子入りして…という話

映画の舞台はほぼタイ。オープニングで兄弟がタイの川を船に乗って流してくところが雰囲気的に好き。なんというか、異国情緒にあふれてて、ちょっと懐かしい。
タイの街並みが懐かしいんじゃなく、こういう『映画の中の異国情緒』が懐かしいんだろう。たぶんアメリカ人にとって、当時のタイは『よくわからない異国』だったんじゃないかな、とか思う。まあ、同じアジアの日本に住む自分にとっても、タイとかベトナムあたりになると異国感は強いからかな、とも思ったり思わなかったり。

最近の映画にはたぶんこういう『異国情緒』要素ってあんまないんじゃないかな。
外国が異国、という時代でもないだろうし、『異国情緒』という感覚自体、西洋中心みたいな考え方がベースで、かつ現地のおもむきや風習をあんまり理解してないながらもありがたがるみたいなところがあるから、そういうのは『意識的もしくは無意識的に差別的な視点を含むもの』として、欧米のいまの文化の中では排除されてそう(←あくまで個人の感想です)。

主人公がムエタイの達人らしき人に弟子入りするあたりで、なぜか『エキゾチカ』というジャンルの音楽が思い出された。べつにこの映画にエキゾチカが使われてるわけではないんだが、エキゾチカがあくまで欧米が夢想する南国を西洋の音楽(ジャズとかイージーリスニング)をベースに落とし込んだもので、南国でできた音楽ではない…みたいな構図を、弟子入りとか修行のところで思い出した、という感じ。
というか、これって実際のムエタイの修行とはズレてたりして?と思っただけでもあるんだけども。なんかムエタイというよりは気功じゃね、みたいな動きがあったりするし。

で、個人的に好きなシーンは、主人公が遺跡で修行してるシーン。夕焼けを背にして型の練習をするとこもいいし、夕闇の中、師匠が振り回す熱した鉄の棒をよけ続けるとこはかなりツボ。あと遺跡で修行してるうちに古の戦士と自分が重なってくるという演出もなかなか。
あと、酒場でノリノリで踊りながらならず者をやっつけるとこもいいwww

最後に兄を痛めつけたにっくき相手とも戦うことになるんだが、その復讐戦がフツーのムエタイの試合とかでなく、ならず者が集まる闇闘技場みたいなところで、かすると痛いガラスの破片つき縄グローブを装備の上で戦う、というもの(映画的にはこれが古式ゆかしいタイの決闘とか。ホントかどうかはわからん)。
相手はそこまでリングで狂犬のような戦いぶりを見せていたが、最終戦では相手のスタイルが妙に落ち着いたものになる。個人的にはそこが気になるところ。なんだかんだ言って盛り上がりはするし、実は公式?のリングでないのも演出上の必然性もあったりするし、暖色の照明にヴァン・ダムの肉体が映えるのもいいんだが、最終的になんでもあり(相手がガラス縄グローブ以外の武器を使ったりする)になっちゃうし、事前に主催者が主人公にプロレスでいう『ブック』を仕込もうとして、主人公にその意図があったかどうかはわからんがだいたいブック通りになる?ので微妙にノれない感じがする。
個人的には、短いシーンだが主人公のムエタイデビュー戦のほうが好きかも。張り手合戦ならぬキック合戦状態になるとことか特に。最終戦もリングで、しかも最初から全力で互いをバシバシ蹴りまくり膝蹴り入れまくり肘鉄打ち放題みたいなほうがよかったかなー、と思う。

星としては5つ中3、てとこかな。そこそこ楽しめた感じ。

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