シネマ小並館 その14:秩序の果て、力の向こう 『マッドマックス』(星3.3)

つい最近、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が各配信サイトで配信開始された。公開当時から『ヤバい』と評判だったので気になりまくってたことからすぐさま配信版を購入して観てみたが、本当にヤバかった…

ということで『怒りのデス・ロード』をレビューしたいと思ってるんだが、その前にマッドマックスシリーズを第一作から観返してレビューしていきたいと思う。

まずは第一作の『マッドマックス』。
エネルギー危機などから秩序が崩壊しつつある、薄汚れた近未来のお話。ならず者たちを取り締まる警察組織『MFP』に所属する腕利きのドライバー・マックスは、その活動の中でならず者組織から報復の対象にされてしまう。そのうち仲間を失い、自信もスピードに取り付かれ狂気を帯びつつあった彼は、上司の提案により家族と自動車旅行に出かけるが…

個人的には、マッドマックスシリーズにハマったのが2からで、1は初見のときあまりピンとこなかったし、途中であんまり集中して観てなくて、終盤の展開をあまり覚えてなかった。
で、このレビューを書くのに久々に1を観てみたんだが…なんか2やサンダードームと比べるといろいろと情け容赦ない感じ。

まず、マックスやグースなどの一部のキャラ以外はだいたい頭がすごく悪く見えてしまう。特にトゥーカッター一味の部下がそうなんだが(まだ2のヒューマンガス様の配下のほうが頭良さそうに見えるくらい)、MFPの隊員も半分くらい頭悪そうだし、一般市民も『外装がファイアパターン、内装が総フェイクファー仕上げ』というおそろしく頭の悪そうな車に乗ってたりする。

中でも、トゥーカッター一味の連中が浜辺でマネキンをちちくるところが超絶頭悪そう。しかもそのうちボスのトゥーカッターがそのマネキンを見て『そいつはポリが送り込んできたってよッ!』とか言い出す始末。

2あたりだと完全に文明が崩壊しているくらいなので、多少無軌道でもそれほどおかしく感じないのだが、1の時点では危機が迫りつつも、テレビも無線も存在する程度に文明が崩壊してないので、無軌道さ加減がものすごく強調される感じがする。というか、秩序の崩壊をまじまじと感じてしまう。

そんな秩序が崩壊しつつある中でも、マックスの一家などのように、慎ましやかで小さな幸せを尊重する者もいるが、力、もしくはその象徴としてのスピードを持つ者は、狂気に取り込まれてしまうようだ。冒頭のナイトライダーの暴走も、たぶんその象徴だろう。もともとトゥーカッター一味の人間で、秩序に属さない人間ではあるが、『燃料噴射装置付きの自殺マシーン』ことV8搭載の黒いインターセプタを奪い猛スピードで逃走する彼は、冷静さのかけらもなく、まさに狂っているようにしか見えない。
(そんな彼も、マックスの駆るインターセプタに追いつかれると、『ダメだぁー…』と半ベをかいてしまうわけだが)

マックスも終盤、あるきっかけから、(奇しくもナイトライダーと同じ)V8搭載の黒いインターセプタを持ち出し荒野を駆けずり回ることになる。それもまさしく狂気のひとつであった。
その前に、マックスが『走ることが楽しく感じられてしまう。警官のバッヂを外せば暴走族の奴らと同じだ』と自らに恐怖し、MFPを辞めようとするシーンがある。だが最終的に、彼は『奴ら』と同じ力、すなわちスピードを手にし、自ら狂気の中へ身を投じる。
汗を浮かべながら疾走するマックスには、ナイトライダーのような、あからさまな狂気は感じられない。だが、黙々と目的を果たし、それが終わった後も、果てなき路の向こうへ茫然と走り去る彼は、すでに正気を失っているようにすら見える。

端的に言うと、秩序を維持するための力を持たされつつ、持った力で秩序から外れ、その果てに行ってしまったマックスは、『ミイラになったミイラ取り』なのかもしれない。
実際『2』でも、マックスが言った『これでは奴らと同じだ』に似たようなセリフを別の人物から言われてもいて、マックスがならず者と同列の扱いになっている。
そんな彼が、2で人間同士の信頼に触れて、再び人のためにその力を行使することになったのは、やはりかつての小さな幸せの記憶が、彼を狂気からとりとめてつなぎ止めたからなのかもしれない。

さて、アクション映画としてのマッドマックスは(それを語らずにどうするんだおれは)、個人的には『頭の悪い連中が無秩序に暴力を振るう』感がシリーズで一番強いように感じて多少ヒいてしまうところがある。特にナイトライダーの棺桶を引き取りにきたときの狼藉、中でもファイアパターンで内装フェイクファーの車をボコボコにするとことかが。
とはいえ、最初のナイトライダー戦はナイトライダー様()が半ベになるとこ含めて好き。

(どうでもいいけど、ナイトライダー戦でナイトライダー様()がマックスのインターセプタに追いつかれて半ベソさになるとこと、タラちゃんの『デス・プルーフ』の後半でスタントマン・マイクがゾーイ一行から一発食らわされたあとで鳴きながら傷の手当てするとこがちょっと似てる気がする。虚勢をはってた男が情けないところをさらすってあたりが似てるのかも)

カーアクションとしてはやっぱり『2』がすごいんだけど、なんか一部のシーンの美しさとかが『2』の美学すら感じられるカーアクションにつながってるなぁ、という気がする。

星はちょっと控えめだけど3.3くらい。
ちなみにトゥーカッター役の人が『デス・ロード』のイモータン・ジョーの人だと知ってびっくりしたり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?