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不動産デューディリジェンスにおける2021年民法改正の留意点(共有・所有者不明土地問題等)

我が国では、登記簿などの情報を参照しても所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」「所有者所在不明土地」や、適正な利用・管理がなされないことで草木の繁茂や害虫の発生など周辺に悪影響を与える管理不全の土地が全国的に増加している(所有者不明土地の割合は、平成29年国土交通省の調査によると22%)。

これらの土地については、再開発その他の民間取引において、土地の利活用を阻害するだけでなく、管理不全化した土地が隣接する土地への悪影響を生じさせるなど、インフラ整備、防災上の重大な支障を生じさせ、生活環境の悪化の原因となる。高齢化の進展や死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあり、所有者不明土地問題の解決は、喫緊の課題であった。

そこで、今回、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に法改正が行われることとなった。かかる改正法の施行は令和5年(2023年)4月1日となることが公表されている(2021年12月14日)。

法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント」24頁(PDFご参照) 《https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf》

今回改正された民法の物権編は、財産法秩序の基礎をなすものであり、民法が制定されてからこれまでに担保物権に関する規律を除き大きな改正はなかったところである。そのため、今回の法改正は、2020年4月施行の債権法改正に並ぶ重要な改正であり、実務的に対応が必要となる。

不動産を取得するにあたり行うデューディリジェンスにおいては、取得不動産における使用制限・権利制限(共有不動産における権利制限を含む)・隣地との権利関係・使用制限等により、今後どのような紛争が起こりうるのか、不動産価値にどのような影響を与えるのかを適切に把握することが必要不可欠である。

不動産デューディリジェンスにおける2021年民法改正の留意点(共有・所有者不明土地問題等)(前編)

第1 はじめに(所有者不明土地問題に係る法改正)

第2 物権関係(共有関係)(2023年4月1日施行)

 1. 見直しの契機としての所有者不明土地問題

 2. 共有物の使用関係

 3. 共有物の変更

 4. 共有物の管理

 5. 裁判による共有物分割

 6. 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡

 

不動産デューディリジェンスにおける2021年民法改正の留意点(共有・所有者不明土地問題等)(後編)


第2 物権関係(相隣関係)(2023年4月1日施行)

 1.隣地使用権の見直し

 2.ライフライン設置権の創設(改正後民法213条の2、213条の3)

 3.越境枝の切除権の見直し(改正後民法233条)

第3 物権関係(その他)(2023年4月1日施行)

 1.財産管理制度(改正後民法264条の2~8、264条の9~14)

第4 相続関係

 1.遺産分割(2023年4月1日施行)

 2. 遺留分減殺請求の改正(2019年7月施行)

 

牛島総合法律事務所パートナー弁護士 猿倉健司


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