がっかり通信vol.16

本日は曇天で不安定な天候なため私が昼休憩に入る前までは閑古鳥状態でした。
ですので数少ないお越しいただいたお客さまに声かけするチャンスはいくらでもありました。ただ、それっぽいきっかけのあるお客さまも少なかったです。

14時半ころ私が休憩から上がってくるとお客さまが数名お待ちになっております。外国人とそのお連れの日本の方1組と数名が受付で並んで待っています。
彼女は今日はお休み。
さぁ、誰が来るかな、誰が来るかなと聞き覚えのあるメロディを描きながらお声がけしたところ別の彼女から「こちらの方が先にお待ちです。」と黒船確定。

隣の彼はというと親子3件の更新契約手続中でさすがにバトンタッチできそうもありません。
別の彼女が時間稼ぎを兼ねて更新契約のお客さまに他の商品のお話しをしてくれています。
以前、彼の「自分でやります」宣言がありましたので、提案書だけ出してもいいというところまでこぎつけたようです。
別の彼女のナイスフォローですが、以前の件が頭をよぎります。また3分なのかと。
しかし私も目の前の黒船に対峙しており何もできません。フローを見ながら書類の確認に専念します。
ただ、私は黒船のお相手があまりなく書類確認に悪戦苦闘してしまいました。彼はその間に更新契約手続きを終了し別の提案書も作成完了。
受付から待合室へ出て他の契約の説明にはいります。前回の件がデジャブとなり蘇りますが3分の我慢で逆に黒船のお相手をバトンタッチできそうです。
しかし、10分経っても戻ってくることはありませんでした。私がPC操作を始めると戻ってきました。あたかもPCに手を付けた瞬間を狙っていたかのように。

もはや、ここでバトンタッチしても仕方ありません。
プリンタは「契約書作ってるぞ、ゴルァ。」とでも言わんばかりに自慢げに複雑なテンポを奏でます。
作成後、彼に検査を任せました。私が数十分も時間をかけて作成した契約書はものの3分で大丈夫ですと戻ってきました。
カラ検査でしょうかそれとも担当リーダーとしての誇りでしょうか。不安です。

時間を見ると15:50です。長くお待たせしてしまった黒船からは砲撃もなく無事お帰り頂きました。
彼は既にほかのお客さまの手続きを行っています。手続時間が長くならない手続きです。
私はラストスパートをかけ、お待たせしましたと声高にあいさつしてやります。受付に現れたのは赤ちゃんの契約手続きでした。
書類はすでにそろっています。書類の確認中に彼は他のお客さまの手続きを終え待ち人数0です。
時は受付終了。普通ならまさに両腕を上げ大あくびでもしたい解放感。今度こそバトンタッチだ。こいこい、早くやりますよと言ってくれと胸に十字を切ります。

自分の契約書類を締め始めました。

そうか、そういうことか。
子供のように目に入ったものをすぐに信じてしまう純粋な私には分かりませんでした。
彼は仕事を選ぶ「DODA」な人間だったと。「DODA」と書いて「デューダ」とは読めず「ど~だ」と呼んでしまう私。
転職して「ど~だ、このヤロウ」と意味不明な解釈をしていました。もしくは宇宙人女性が口をチュムチュムして「カッコヨ」と言ってる画像が頭をよぎります。
彼は仕事を選ぶどころか客を選ぶのです。

彼の行動がまた一つ解明しました。
こう考えればじっちゃんの名に懸けて謎が全て解けるのです。彼はセールスしないのではありません。セールスはできるのですが面倒なのです。もちろん心の奥底には「陰キャ」「コミュ障」が根底にあるので「やりたくない」「できない」が先行して、そこだけがクローズアップしてしまいセールスしない奴と思われがちですが、行動を指示する脳からのシグナルがそれ以前に面倒クセェと命令するのです。今までを振り返ると全て合致します。
かっかり通信では載せていませんが、受付に宅配便が来て俵のようなお米を数俵持ってきた配達員を見て、彼は目の前の老婆に突然新商品を勧めていました。年齢もご高齢のかたでした。もう新商品はやらなくていいと担当責任者も私も言ってるのに。別の彼女が私を呼んで私が俵を事務所内に運ぶと新商品の説明をしていたお客さまに「ありがとうございました」と言っている声が聞こえたこと。
またある時は契約書ケースを持ったお客さまがご来店された時に彼が簡単なで手続きしていた若い男性のお客さまに普段はしたことのない年齢層(もっともどんな年齢層でもしませんが)にもかかわらず、新契約の営業をし始め、私が最初の難しい手続きをしたこと。その時はやる気でたのか?と思っていましたがそうじゃなかったんです。
いや、全部がそうじゃないとしてもそういった時もあって面倒くささを秤にかけていたんだと思います。
ひょっとして電話が鳴ったときのロケットスタート後の急停止もやる気を見せつつ面倒くせーと思っていたのかも。
そうじゃないとしてもそう思うことで気持ちが楽になる私がいます。
「営業しない社員はどうしたらいいでしょう」ではなく「手続きを選ぶ社員はどうしたらいいでしょう」なんです。
彼がお客さまを選んでるんです。ほんとがっかりです。

本心はどうか分かりません。
我々は通常お客さまを選べませんが、彼はできる限りの工夫で選んでるんだと思うことにします。
私はなんて心の狭い人間なのだとつくづく思います。でもその先にはすっきりと眠れそうな私がいるのも事実です。

外国人手続きをした後に赤ちゃんの契約。もう変な達成感で充実していた私に彼は一言。
「力不足ですみません。」
新商品の声かけしたけど成約できなかった「力不足」なのか、外国人と赤ちゃんの契約書を私に作ってもらって「力不足」なのか、正直何の力不足なのか分かりません。普通なら「お手伝いしないですみません」とか「お手伝いできずにすみません」だと思うのです。
隣で上司が難しい手続きをしていることを知っていたが、僕は手続きが分からなくて「力不足ですみません」だとしたら
と考えると幕末に活躍した坂本龍馬のように黒船来航で私が英雄になれる日は近いかもしれません。

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