2020年は印刷業界×ソフトウェアファーストで印刷as a Serviceに取り組みます

性格的には僕はポジティブに見えるようですが、思考的には一番悪くなるシチュエーションを前提にネガティブに考えて、新規事業に取り組むタイプです。

大学を卒業して、広告代理店に入社して10年間は工場に発注する側にいました。その後に下請けで受注する家業の旗幕の印刷工場に転職して今年で10年です。この10年で起こったことを振り返ると、PCは会社の中で固定されているものではなく、無線LANや電源のあるカフェが増えて、ノートパソコンで仕事をする場所にこだわる必要も無くなりました。そしてスマートフォンも行き渡り、いつでもストレスなくインターネットにつながったクラウドサービスが使えます。

欲しいものもお店で買うのではなく、当たり前のようにamazonをはじめとしてECサイトで買うことが日常になりました。漏れなく印刷業界もWEB印刷通販が伸びてきて、システム投資をしていない既存印刷工場は売り上げも厳しくなってきました。

この10年を振り返って思うことをまとめながら、家業として印刷会社をやっていく立場として、2020年は家業を少し離れて1個から短納期で適正価格で全国の印刷工場に頼めるPOD(Print On Demand)サービスのPrintioを始めようと思います。

これまでの下請け受注産業は厳しいかもしれない

印刷業界は長らく、広告代理店や大手印刷会社などからの下請け受注がほとんどでした。そこに入稿をWEBに変えたインターネット通販印刷が伸びてきて、これまで印刷を頼みにくかった小ロットの市場が増えてきました。そして今では大手クライアントも印刷通販への発注に切り替える流れが出てくるのは当然の流れかもしれません。

そんなインターネットとしては当たり前の流れの中で、昔ながらの印刷会社は、これまでのお客さんとの取引を重要としてネット通販印刷に取り組まない会社が多いと思います。そしてこの数年で伸びている会社はWEB通販印刷に振り切って、しがらみを断ち切って新たに製造直販を始める所が伸びて、これまでのサプライチェーンに依存している工場は生き残れないのではないかと思っています。

業界外から破壊される前に自分たちが変わっていかないといけない

IT企業に印刷業界をディスラプト(破壊)されて壊されるならば、印刷業界自身が変わっていかないといけないと印刷業界の将来は明るくないと思います。

現にすでに印刷業界の最安値を謳い、CMをうち注文を集めている印刷業界ぶっ壊し系のWEBサービスがありますが、僕がやりたいのはプラットフォームで一人勝ちをするのではなく、いろいろな印刷工場やプリンターメーカーと組んで業界を盛り上げるサービスにしていきたいです。

なので、2020年は印刷業を離れて新規事業に本格的に取り組んでいくつもりです。

高品質信仰からの脱却と魅力品質追及へのシフト

2019年に読んだ書籍『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』(及川卓也著/日経BP刊)の中でとても共感した部分があります。

ソフトウェアファーストの中で、顧客満足させる品質の説明で狩野モデルの品質分類が紹介されていました。
当たり前品質はちゃんと普通に印刷されていない時はクレームになる品質のことで今の印刷ではほぼ充足されるはずです。一元的品質はよくなればなるほどお客様満足は高くなる品質のことで、印刷業界は現場ファーストでこの一元品質を高めることに注力をこれまでしてきていました。
印刷業界はこれまでは顧客満足を高め、注文を継続的にもらうためにということを追及していました。いわゆる「色合わせをもっと厳密に」「納期はなるべく短く」「金額をもっと安く提供する」ということです。

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印刷機の進化でこの一元的品質は一般的なほぼ多数の顧客が望む品質を超えることが容易になってきました。ですが、品質を高めればお客さんから継続的な注文がもらえるに違いないと盲目的に思う高品質信仰の元に、一部の要求の高いお客さんを対象にした異常とも言える品質の追及を続けているのが印刷会社だと思います。

インターネットが普及した2020年以降は高品質だけでなく、ソフトウェアやインターネットを基盤とした魅力品質を高めることを中心に考えないといけないなと感じています。それは「簡単に頼める事」だったり、これまでにできなかった「1個から頼める事」だったりすると信じています

印刷物を1個から簡単に全国の印刷工場に頼めるWEBサービスPrintioはじめます

3年前から取り組んでいる1個から受注生産するための仕事があります。お客さんの受注サイトと工場をつなげて1個から生産管理をWEB上でできるクラウド生産管理システムです。

今は4サイトと連携して、25アイテムを1個から即日〜5日程度で全国4つのロケーション工場で印刷をして毎日出荷しています。それをもっとアイテムを増やして製造を効率化して、1個でも大量生産と同じくらいの単価で頼めるようにする予定です。

デジタル印刷とクラウドベースの生産管理でデジタルトランスフォーメーションを実現する

この図もソフトウェアファーストに乗っていた物をベースにしていますが、今現在の受注の流れをデジタル化することは容易ではありません。

僕自身の理解としては、普通の流れでは、現在の業務をデジタル化してデジタイゼーションを実現してから業務の流れをデジタルでつなげていくデジタライゼーションを実現しないといけません。そうなると会社全員の同意形成や会社としての方向性を決めていくためかなりの時間と労力を必要として、なかなか実現するのが難しく、これまでも何度かチャレンジしようとして挫折したことがあります。

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今取り組んでいるPrintioでは同じデジタル印刷機を使うのですが、印刷工程をこれまでのライン生産方式の製造方法ではなく、小さくて素早く印刷できるマイクロファクトリーに向いているセル生産方式を採用しています。

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そしてその新規事業だけは最初から最後まで一人で効率的に製造できるようにフルデジタルで製造を実現することで、既存の印刷工場でも印刷のデジタルトランスフォーメーションを実現することが可能となります。

印刷業にソフトウェアファーストに取り組む事でいろいろな産業に印刷as a Serviceを実現します

長くなりましたが、これまで堀江織物株式会社で旗幕や布の印刷に従事して、個人向けの印刷に特化した物づくりスペースHappyPrintersを運営してきていろいろな印刷会社の仲間やプリンターメーカーさんとも繋がる事で業界の課題はわかっているので、それを少しでも解決して印刷をもっと面白くして、さまざまな商品メーカーやWEBサービスの会社の人と面白い印刷サービスを始められるような印刷のアズアサービス化を実現できるサービスを始めていきたいと思っています。

2020年もよろしくお願いします。

株式会社OpenFactory
代表取締役 堀江 賢司



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