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「蛇口かくし」

奇祭づくし5
「蛇口かくし」

「蛇口を見つけりゃ 獣がいるぞ 蛇口をかくせば 鬼逃げる」
「蛇口かくし」という遊びで、子供たちが歌う一節である。
鹿児島県志布志市に伝わるこの遊びは、鬼となる子供が目隠しをしている間に、「守り子」という役の子どもが、鬼に見つからないように水たまりをたくさん作るという一風変わった遊びである。最後まで水たまりを見つけられないと鬼の負けとなり、鬼役の子どもが負けると、水がなくて苦しむ鬼を演なければならない。叫び声をあげる、苦しむなど一般的なものから、北斗の拳が流行った当時では、ケンシロウよろしく「み、みず・・・」とつぶやいてから倒れるという負け方が大いに流行ったそうだ。

夏に水不足が深刻となるこの地域において、水の確保は何より重要であった。水の大切さを早くから伝えるために、この「蛇口かくし」の遊びが生まれたそうである。

毎年8月に行われる「蛇口祭り」において、この「蛇口かくし」が町を挙げて行われる。「守り子」がうまい子供は「水守」という名誉となり、鹿児島名物の白クマやさつま揚げなどを腹いっぱい食べさせてもらえるという。鬼役のゲストとして、ケンシロウの声優「神谷明」氏が呼ばれた際には、当時の子どもも大はしゃぎ。生の「み、みず・・・」を聞こうと、100人以上の子どもがこぞって「守り子」となり、参加した神谷氏は炎天下での大規模な「蛇口かくし」に、演技でなくリアルに「み、みず・・・」と言葉が漏れたそうである。


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