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雨うけ祭り

奇祭まみれ8
「雨うけ祭り」

「しとしと ぴっちゃん しとぴっちゃん」
『子連れ狼』の冒頭の歌詞として有名なこの一節は、縁側の軒から垂れる雫の音であることはご存じだろうか。

静岡県浜松市では、春先の湿り気が増える時期に合わせて「雨うけ祭り」という行事が行われている。「遠州のからっかぜ」が吹きすさぶ冬の厳しい季節を超えて、温暖な気候とともに湿り気を帯びた春の空気が浜名湖に届く時期には、家屋にこもる湿気が人々の悩みの種であった。

ぽたりぽたりととめどなく落ちる雨雫を、地域の子どもが嬉しそうに口を開けて受け止めている姿があったという。水でお腹をぱんぱんにして嬉しそうに走り回る子供たちのから「しとしとぴっちゃん」という音色が心地よく響いたそうだ。

鎮守の森のご神木から落ちる雫を子供が口で受け止める「雨うけ祭り」は、恵みとともにもたらされる水害を鎮める祈りが込められた祭事である。この祭事に参加する子供たちを、総じて「しとぴっちゃん」と呼ぶそうである。

地域に響きわたる「しとぴっちゃん」の音色を聞いて育った浜松っ子たちは、自然と音感が良くなるという。今では楽器の街として知られる浜松の原点が「雨うけ祭り」なのである。

#奇祭まみれ #うそばなし

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