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"トップが語るべき言葉"について考える

 テクノロジーの進化やグローバル化の進展は、日本企業に大きな機会と脅威をもたらします。
 各国間の貿易交渉など国際情勢の変化によって我が国が受ける影響は以前より格段に大きくなっているように感じます。
 「中国がくしゃみをすれば・・・」と言われて久しいですが、もはや中国が風邪をひくと、日本の方が高い熱を出すのではないでしょうか。

 そんな先行きの見通しがきかない中でも、経営トップは進むべき道を示し、その行動と「コトバ」で以て多くの社員を導かなければなりません。
 経営トップに限らず、組織のリーダーには時に組織メンバーを時に叱咤しながらも勇気付け、未来に希望を持たせるような想いやコトバを持たなければなりません。

 自動車製造業からモビリティカンパニーへと、数十年に一度の大変革に臨むTOYOTA。
 既に様々な場面で引用されている豊田章男社長のスピーチを、私も気に入って何度も視聴しました。

特に印象に残ったくだりを以下に再現してみます。

(前略)
私はトヨタという会社に感謝しています。
創業者の豊田喜一郎が自動車へのモデルチェンジに挑戦していなければ、我々は今、どうなっていたでしょうか。

創業のメンバーの方々は、何もいいところを見ていません。私も含む皆さんは継承者。
継承者の一人として、報われなかった先輩たちに何とか報いたい。
彼らの無念を晴らしたいとは思いませんか。
少なくとも私は、その無念さを晴らしてあげたい。
それが私自身の原動力です。

良いところを見させてもらった私たちが、自動車からモビリティ・カンパニーへのモデルチェンジに挑戦することこそが先人の無念を晴らすことになると思っています。

未来の世代から「あの時のおかげで今がある」。
そう言われることを自分たちのロマンにしませんか。

(中略)

誰にも未来は見えないし、わかりません。
でも、たどり着きたい未来があり、見えない未来への道を必死で模索し続けている人にはわかるもの、感じ取れるものがあるのではないでしょうか。

(中略)

モビリティ・カンパニー・トヨタ。

私にもたどり着きたい未来があります。
ビャルケさんはそれを感じ取ってくれたんだと思います。

「令和」という新しい時代を迎え、「Woven City」が
スタートする。こんなチャンスは滅多にないと思います。

「Woven Cityなんて私には関係ない」。
そう思う人をゼロにはできません。
しかし、そういう人がマジョリティになったとしたら、
トヨタは世の中の人から必要とされない会社になってしまいます。

 *   *   *   *   *   *   *

 豊田章雄社長が従業員に求めたものは、自身が見つめるまだ見ぬ未来とともに”TOYOTAらしさ”に思いを馳せることでした。

 そしてこのスピーチで豊田社長は、「変われ」という強烈なメッセージとともに、“変わらないこと・変えてはならないこと”は何かを問うています。

 組織の変革を行なう上で最も重要なことは何かがよく解るプレゼンテーションであり、下記のように簡略化してみると、物語のひとつの”型”として成立していることが分かります。

  ▼自分の信じる未来(Big Picture)
  ▼戦略の必然性(過去・歴史があって今と未来がある)
  ▼意味(何故やるのか=WHY)

 これらを一連のストーリー(物語)として語る豊田社長の語り口は実に心地よく引き込まれてしまいます。


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